書店に行くと珍しいテーマの本に出会うことがある。





今回取り上げる本もかなり珍しい。





「夜更かしの社会史」なんて生きていて見たことも聞いたこともないからなあ。





読んで思ったのは、社会と睡眠は深ーくつながっている。





ちょうど今、受験シーズンで試験会場で問題と格闘する受験生たちがいる。





昔の受験生にとって夢のようなものと言えば、睡眠学習器だった。





「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこは、「もものかんづめ」の中にある「明け方のつぶやき」というエッセイを書いている。





そこには通信販売で睡眠学習器を買った話が載っていると著者は紹介している。





「眠りながら単語の暗記ができる」なんて書いてあれば、楽して覚えたい受験生には、夢のような話でどうしても欲しくなるのだろう。




当時、高校生だったさくらには、定価38000円は高い買い物だが、10回ローンで申し込んだ。




何が届いたのかというと、「ダイヤルが2個ついた、硬い枕」だった。




覚えたい単語を100回ずつ紙に書いて練習した後、その単語を自宅のテープレコーダーを使って吹き込むと書いてあったそうだ。





さくらは買わなきゃよかったと後悔した。






世の中、楽して覚えられる、簡単に稼げるなんて魔法なんてあるわけがない。






それでも一定の層には響くので、売れるということか。





さくらももこが中学・高校時代を過ごした1980年前後は、「中一時代」(旺文社)、「中学一年コース」(学習研究社)のような学年別学習雑誌の全盛期だった。






睡眠学習器の通販広告が掲載されていて、「中学3年コース」(1980年10月号)には、「ねている間に差をつけろ!」という見出しの広告が載っている。





「体験レポートは無料で急送!」とあおっている。





睡眠学習器を買った人で実際に効果を発揮した人はどの程度いたのか気になる。






夜更かしが社会で幅広く行われるのは、19世紀以降の照明技術の発達、消費文化の広がりなどの要素が重なり合った結果。






ドリンク剤といえば「24時間戦えますか。ビジネスマン、ビジネスマン、ジャパニーズビジネスマン」というCMで有名だった「リゲイン」が浮かんでくる。






ドリンク剤と睡眠も深く関わっていた。





今では信じられないが戦時中と戦後のある時代までは「ヒロポン」という覚醒剤を服用している人が多かった。





戦時中は、軍需工場従業員を対象とした「疲労回復」を目的にして全国に配給された。






戦後になると、享楽的な使用者も増えていったそうだ。






コーヒーは、1960年代のはじめに輸入自由化と、インスタントコーヒーの国産化で、消費量が一気に伸びていった。






「コーヒーには、極端にいえば、ヒロポンみたいな作用がある」と、生理学者の杉靖三郎がビジネスマン向けの本(1963年)で説いたとある。






コーヒーに対してそんな認識があったとは、目が点になった。






この他に様々な視点から夜更かしを論じている。