その女性の肩は異常なまでに凝っていた。
胃は時々締め付けられるように痛くなるときがあるという。
手当てをさせてもらってもカチカチに固まった肩はなかなかほぐれなかった。
胃のあたりに手を当てさせてもらうと強烈な刺激が手のひらに返ってきた。

ただ単に手当てをしているだけでは難しいと思い、
少しずつ原因探しの会話を進めて行った。
その結果、極端に自分を責めておられることがわかってきた。

家計を助けるために仕事についているものの、
人間関係に悩み、その悩みの原因は全て自分にあると感じていると言う。
その結果、だんだんと欝の症状が表われはじめ、
やがて育児すら出来ないくらいになってしまい、
さらに自分を責めるようになっていったという。

この話を聞いて私は、心の勉強をさせていただいた佐田弘幸先生の
佐田瞑想教室の授業を思い出した。
『自分褒め』というワークだ。
日常の何気ない行動や思考を思い出しながら、或いはリアルタイムに、
いかにドラッスチックなまでに自分を褒めることができるかというワークだ。

例えば、心も体もとても重くて、子供の食事も作ることが出来ない場合でも、
『こんな精神状態でも子供の食事を作らねばと思った私は偉い!!』
と、褒めてみるのだ。

出来ないことにイライラを募らせ、さらに自分を責めることで、
さらに出来ない精神状態を生み出し、またさらにできない現実が現れ、
そのことにまたまたイライラをさらに募らせ・・・。
こんな悪循環に落ち込んでいく人がとても多い気がする。

思ったことが全て出来たら誰も苦労しないし、
この世から『悩み』という言葉さえ消えてしまう。
何も考えず、何もしない地点を0地点とすると、
何かをしようと考えた、思いついただけで、
プラス方向に一歩踏み出したことになる。

そしてその思いに基づいて、行動を始めたとき、
0地点よりもかなりプラス方向に進んでいることになる。
結果的に目的を完全に果たせなくても、
プラス地点に立っていることだけは間違いない。

子供の食事を作らねばと思ったとき、既にそこはプラス地点になっている。
たとえ行動に移すことが出来なくても、プラス地点はプラス地点なのだ。
そのプラス地点に進めたことを素直に自分で自分を褒めてみる。

自分を褒めるなんて、最初はとても抵抗があるかもしれない。
でも、そんなことは褒めるに値しないなどと否定せずに、
遊びのつもりで、ゲーム感覚でかまわないので、
こんなことで自分を褒めることができないと思える言動から、
無理やりでもいいから自分を褒めてみるのだ。

冒頭に記した女性に手当てをしながら、その『自分褒め』をしていただいた。
最初の数分は全く変化が感じられなかったが、
しばらくすると劇的に肩のコリがほぐれていくのがわかった。
胃から感じられていた刺激も少なくなっていた。

自分を責めて苦しんでいる人は、本当に真面目な人が多い。
自分に厳しすぎるがゆえに、自分を簡単に責めてしまう。
でも、自分を責め過ぎている人に笑顔はあまり見られない。
笑顔の少ない人に他人は近寄っては来ない。

騙されたと思って、『自分褒め』を1週間だけやってみて欲しい。
きっと1週間後にはあなたの笑顔の時間が増えているから。