先日行われたイタリア・ムジェロサーキットでのMotoGP。
ホンダから岡田選手がWild Cardでスポット参戦した。
開幕前からテストをしながら、なかなか実践投入できなかったニューマチックシステムをもつエンジンを搭載したマシンでの参戦だ。
目的は二つ。
ひとつは実戦でのデータを取ること。
もう一つはそこで結果を残すことでダニやニッキーにあわよくば使わせるように仕向けたい。
こんなところだろう。
MotoGPの公式HPからリザルトを出してじっくり眺めてみた。
http://resources.motogp.com/files/results/xx/2008/MotoGP/ITA/RAC/analysis+by+lap.pdf
http://resources.motogp.com/files/results/xx/2008/MotoGP/ITA/RAC/analysis.pdf
ホンダのニューマチックタイプのエンジンは高回転まで回る反面、中低速(果たして2万回点近く回るエンジンではどのあたりを中低速って言うんだろうか?)がやや痩せていて、いわゆる「線の細い」タイプになっているらしい。
しかし、実際に同じ土俵で走った場合の優劣はどうなのか?
上のラップバイラップ・データを見た限りでは、良くわからないと言うのが正直な感想だ。
レース中のLap Timeやトップスピードを比較する限りは、ロッシ(ヤマハ)もケーシー(ドカティ)もダニ(ホンダ)も大して変わらない。
これらに比較してニューマチックの岡田。
残念ながらタイムが違いすぎて比較にならない。(苦笑)
レース中のラップライムはトップ3人に大して常に2秒半から3秒落ち。
コーナーが遅い分トップスピードが遅くても当然・・・という事になる。
国内では今でも8耐などにスポットで出ている岡田とは言え、やはり最高峰クラスに突然復帰してトップにからめというのが無理というものだろう。
そうした意味では完走したライダーの中ではブービーではあるが、立派と言っても良いと思う。
しかし、岡田のライディングに対する評価とマシンの評価は別問題だ。
現時点のダニの最大の関心事項はタイヤのようだ。
ムジェロのレース直後のコメントにあるように、明らかにブリジストンにアドバンテージがあるようだ。
ブリジストンはV・ロッシというライダーを得て一段と開発が進んでいるらしい。
何でも上海GPからは、ロッシが開発したタイヤが実践投入されるようになったそうだ。BSのスタッフもロッシの開発能力について手放しで賞賛しているという話も聞く。
しかし、ただのゴムの固まりのくせに何がそんなに違うのかね~。
不思議だ・・・・
このサイトによるとすでに今週末のカタルニアにはダニもニッキーもコンベタイプを使うようだ。
カタルニアのレース後の居残りテストではダニがニューマチックをテストするらしいのでそこでどんなコメントがでるのやら・・・?
もっともタイヤテストを優先して乗らない気もするけどね・・・・(爆)
ちなみにニッキーはカタルニアレースに対しても、まだ決めていない風なコメントを出していたのだが・・・・・。
http://www.motogp.com/ja/news/2008/Hayden+also+due+for+late+engine+decision
しかし、話は横にそれるが、MotoGP公式サイトの怪しげな日本語訳にはいつも笑わされる。
頻繁に出てくるフレーズが
スペクタクロなレース展開が・・・・
スペクタクロって何だよ・・(笑)
スペクタクルの間違いじゃないのか?(爆)
上のニューマチックのニュース記事では、
「ニューマチックバブルエンジンは興味深い」と、投入に関心を示した。
だってさ。
確かにいまだに実戦投入できず、他社の後塵を拝しているのは事実だろうが、
バブルは無いだろう、バブルは・・・・
ホンダのエンジニアが見たら情けなくて泣いちゃうぞぉ~(爆)
ちなみに一部のネットや雑誌などで、ニューマチックのことを「エアバルブ」と呼んでいるようだが、これは大きな間違い。誤解を生む表現だからあらためて欲しいものだ。
あくまでも
ニューマチック=pneumatic
空気の、気体の、空気力学の、空気で動く、・・・・と言った意味の言葉だ。
要するにポペット弁(キノコ型のバルブの事ね。普通のバルブの形と思ってもらえればいい)を閉じるのに普通は金属スプリングを使用する。
超低速のディーゼル機関などでは今でも松葉バネの採用例もあるようだが、車やバイク用のエンジンではコイルスプリングが一般的だ。
このコイルスプリングの代わりに空気を使って居るシステムのことを「ニューマチックシステム」というのだ。
ひと昔前から4輪のF1では既に採用されてきたシステムだ。
昨日今日はじまったものではない。
バルブが空気な訳ではない。したがって「エア・バルブ」という呼び名は明らかに間違いである。
たばこの煙を空気の流れを使って遮断する「エア・カーテン」とは明らかに用法が異なる。
メカおたくとしては、あまり変な造語を一般化して欲しくないものだ。
さて、では何故、4輪のF1やMotoGPでニューマチックがもてはやされているのか?
ひと言で言うならば、高回転まで回すためだ。
一回ごとの爆発力が同じとすれば、より高い回転数で回している方が、エンジンはより大きな仕事をしていることになる。
すなわち、パワーが出ていることになる。
では、高回転化のために何故、ニューマチックが有効なのか?
バルブをカムシャフトが押し開け、スプリングの力で閉じる。
これを超高速で繰り返す。
たとえば、4サイクルエンジンの吸気バルブはクランクシャフト2回転につき一回、開閉する。
つまり、2万回転で回るエンジンでは1分間に1万回開閉することになる。
1万回/分=167回/秒
1秒間に167回も開いたり閉じたりするのだ。
これだけ速くものを動かすには少しでも可動部を軽くした方が良いのは懸命な読者なら既に気づいていることと思う。(おいおい・・・)
バルブ本体も極限まで細く、薄く作る。
バルブスプリングリテーナーなどは、鉄からアルミあるいはチタン合金にする。
では、バルブスプリングは?というと・・・・
密閉室を作りその中を高圧の空気を満たすことで「空気バネ」として利用するのだ。
ちなみにバルブ本体ほど激しくは動かないがバルブスプリングも可動部として激しく上下動するのだ。だからスプリングの固有振動数と上下運動の速度(=エンジン回転数)が近づくと、スプリングが共振をお越し、正常なバルブの開閉運動が妨げられる。
これを一般的には「サージング」と呼び、性能が出ないだけでなく、バルブやスプリングの破損につながる。
・・・・だから、可動部分を軽くしたいのだ。スプリングに至っては代わりに空気を用いることで可動部重量の軽減と同時に破損する可能性のある部品そのものを無くしてしまうのだ。
まあ、言うほど簡単なことではないし、エンジン全体としてみると、重く、複雑になったりする点が問題ではある。
エアを送り出すポンプやそれをためるタンク、そしてバルブ周りのエアのシール構造などなど課題は多い。
4輪のF1では当たり前に使われていても、MotoGPに採用され始めたのがごく最近になってからというのは、まさに上記のような理由からである。
逆に言うと、MotoGPクラスが4サイクルカテゴリになり、少しでもライバルに勝つためのパワーを得るためにはより高回転を目指し・・・・・という結果、行き着いたのが、ニューマチックなのだ。
ちなみに発想は違うが、動弁系の機能、強度の信頼性を高めるにために生み出されたという意味では、ドカティの伝統的な技術、デスモドロミックも目指すところは同じだ。
これについてはいつかまた語ってみたいと思う。
では、今日の講義はこれまでっ!!
起立っ!! 礼っ!!
皆さん、さよーなら。(さよーなら)
今日は久しぶりに長文を書いたなぁ~。
(´ー`)┌フッ~