先日の訪問リハビリの時のことです。
長い産休をあけたN先生が、一年ぶりに一人でリノをみてくれました。


リノがリハビリ中には、ばあばとじいじは隣の部屋でムッタの子守りをしています。
ところが、お母さんのネムルーが、満面の笑顔で向こうから走ってきました。

「ばあば! ちょっと来て見て! リノが一人で遊べてる!」

?? 遊べてるって、まさか?!


リノは自分で手足を動かせません。
いったいどういうことなんでしょう?


ばあばがリノの部屋へ行ってみると、なんと、リノは一人で扇風機を回していました!!



リノは筋緊張で時折、手を微かに握り込むんですが、その小さな力がスイッチを作動させて、ハンディ扇風機が回っているのです。

扇風機はこの大きさ


スイッチは、100均の印鑑ケースの中を、こんな風に改造してあります。


これにはたまげました。

リノが、本当に自分だけの力で遊んでいるんです。

まるで、夢を見ているようでした。


【手をギュッと握ると、顔に風が吹いてくる】

その事にリノが気づいて、意識的にスイッチを作動できるようになると、完全に「一人で」遊べているといえます。

今回は「なんか不思議。どこから風が吹いてくるの?」という感じの顔をしていました。
けれど、この経験を積み重ねていくと、自分が握り込むスイッチと風との関連性に気づけるようになるかもしれません。
なんせリノは、オシッコが出ると声をあげて知らせてくれるんです。
経験を覚えられる脳の一部は、ある程度は機能していますからね。

 

「二歳から三歳の間は、自分の動作が他へどういう影響を与えるかということを学ぶ時期になります」

リハビリの先生のこの言葉に、お母さんとばあばは、改めて目から鱗をポロポロ落としたのでした。


なるほどぉ~


教育というのは、やり方次第なんですねぇ。
リノにはできることがものすごく少ないんです。でも、その僅かな機能を捉えて、こうやってアプローチしてくださる。

N先生の変わらぬその姿勢に、ばあばは頭を深く下げて感謝したのでした。


N先生が一年の産休が終わって帰って来てくれた前回のリハビリの日、リノは覚醒しました。

ここのところ、リノは毎回ネムネムのデロデロ状態でリハビリをしていました。
前回は今まで持ち回りで来てくださっていた先生と一緒に、久しぶりに仕事に復帰したN先生が引継ぎできてくれていました。
けれどその日のリハビリで、リノはうつぶせにした時に、いつもよりしっかりと顔を上げたそうです。
そして立つ練習の時も、いつもよりしっかりとした足で立てたのだとか。

最近見てくれていた先生は「リノちゃん、いつもと全然違うじゃない!」と苦笑交じりに大笑いをしたそうですが、ネムルーとばあばはこっそり顔を見合わせました。

リノはわかっているんですよ。

最初に担当していてくれていたN先生の事が、リノは大好きなんです。




その事を話すと、じいじはびっくりしていました。

「ホンマにわかっとんか?」


誰でもそう言うと思います。

でもお母さんやばあばも、N先生と話をするたびにハッとさせられるんです。

N先生には「できないから、諦める」という発想がありません。

リノも、先生のその静かな強い信念を、身体中で感じているのではないでしょうか。


親や家族でさえ、心のどこかで諦めてしまっているリノの可能性。

【なにも諦めることはないんですよ】

N先生が作って持って来てくださった小さなスイッチが、そのことをもう一度家族に教えてくれたのでした。


じいじですか?
もちろん、前回自分が作ったスイッチを、慌てて改造し始めましたよ。(笑)