第19旅第2章:赤岩駅 | もこ太郎の平成阿房列車

もこ太郎の平成阿房列車

No Train,No Life!
生粋の「乗り鉄」がブログを書くとこうなる!!
私が行った鉄道の旅をレポートさせて頂いています!
私のブログをお読み頂いて、鉄道の旅に興味を持って頂けたら幸いです!

この旅の物語を最初からお読み頂ける場合は、こちらをクリック

庭坂駅を出ると、車窓はそれまでの住宅が建ち並ぶ風景から、みるみる草木が生い茂った風景へと変貌していく。
その変貌ぶりは、ある種の恐怖すら感じさせられる程である。

列車は大きなS字カーブを抜け、幾つものトンネルを抜け、鉄橋を渡るという過酷な道のりを乗り越え、ようやく次の駅に到着。
私はまず、その駅にて下車した。


赤岩(あかいわ)駅



予備知識は持っていた。
この駅は、秘境駅ランキングでかなり上位にランクしている駅。

ホームに降りた瞬間、異様な雰囲気が漂ってくる駅である。

駅の周りに民家があることなどは、最初からあてにしていなかったがしかし、
一面ニ線の島式ホームは狭く、駅名標と小さな上屋がある他は何もない。
ベンチすらないのである。

そしてホームの周りを見渡せば、生い茂る木々以外何もない。
特にホームから福島方面を向き、さらに向かって左側を見ると、今にも襲ってきそうな高い山がそびえ立つ。



米沢方面を見ると、ホームのすぐそばにトンネルが迫っている。



ホームから福島方面に歩いていくと線路を渡る小さな踏切があり、踏切を渡ったところに小さな待合室と、トイレがある。
しかしトイレは閉鎖されている。



そして…

次の列車に乗るには、上りであろうが下りであろうが、3時間は待たなければならない…



この駅に初めて降りた瞬間、誰もが
「とんでもないところに来てしまった」
と思うに違いない。

いくつかの秘境駅に降りている私でさえ、この駅には唖然とさせられた。

一大ターミナルの福島駅からわずか3駅隣に、このような駅があるとは誰が想像できようか?
こんな雰囲気では、間違っても「のどか」なんて言葉は口に出来ない。


この駅に降りたのは私と、保線員二名、あとはピンクのズボンという独特な、というよりも奇抜ないでたちの中年男性…
この中年男性にはあまり関わらないようにして、私は目的の一つであるスイッチバック跡を巡ることにした。

踏切を渡って、小さな待合室を横目に進んでいくと、砂利道が真っ直ぐのびている。
おそらくこの道は、スイッチバックの引き込み線の跡だと思われる。



砂利道を歩み進んでいくと、左側に草木に完全に覆われた小さな建物が、道より一段高くなっている場所に建っていた。



これこそ、赤岩駅の旧ホームであろう。
よく見ると、完全に赤錆びた、過去の駅名標と思われる立看板のようなものが、小さな建物の左手前にあった。



旧ホームをよく見たかったが、草木に邪魔されて、思ったように見れなかった。

さらに砂利道を進むと左側に変電所らしき建物がある。
このポイントだけは、かなり人工的な姿を醸し出している。
変電所ということは、JRの作業員が、結構な頻度でここを訪れたりしているのだろうか?



さらに砂利道を進むと、トンネルの跡が見えた。
引き込み線の延長にあったトンネルに違いない。



そのトンネルに近づいてみようと思ったが、ここでも生い茂った草木が私の行く手を阻む。
この草木の多さは並大抵ではない。
まさにジャングルだ。
先日の四国の旅では、坪尻で野生の猪を見ている。
草影から急に熊や蛇が飛び出してきても、何らおかしくないであろう。
この草を掻き分けて進むには、自衛隊程の訓練を受けた者でないと、命の保証はないのでは?とまで考えてしまう。
大袈裟のように聞こえるだろうが、この場に居合わせたら決して大袈裟ではなくなる。
トンネルに近づくのを早々に諦めたのは言うまでもない…

真夏の季節は、これだけ草木が生えて当たり前なのかもしれない。
では冬にこの場を訪れると草木に邪魔されないか?
確かにそうかもしれないが、この辺りは豪雪地帯。
冬は冬で大雪に邪魔されるのであろう。
この駅を散策するには、雪が溶けた春か、草木が枯れはじめる秋がよいのか?

トンネルの脇に、出口に繋がると思われる上り坂の林道がある。
次の列車まで相当時間があるので、坂を登ってみようと思う。



少し坂を上がったところから、先程のトンネルを内部まで見ることができる。
線路がまだ残ったままになっているが、トンネルの前にはフェンスが張られていてトンネルの中には入れないようだ。
今となって、胸を撫で下ろした。
トンネルにたどり着こうとあれだけ苦労して草むらの中をわけいって、トンネルにたどり着いたところで実は中に入れないと分かると、目もあてられなかっただろう。


さらに林道を上ってみる。
そのうち集落にでもたどり着くだろう。



しかしいくら林道を上っても上っても、一向に草木のトンネルから脱け出せない。
真夏の陽射しを木々がさえぎってくれるのは有り難いが、それだけでは汗と疲労を抑えることは出来ない。



道の途中で巨大なキノコを発見した。
誰かがキノコを引き抜いて、そのまま放り投げたとしか思えないような横たわりかたである。
キノコを放り投げたのは人間か?それとも他の生物か…?



20分程歩いてきただろうか?
ようやく視界が開けてきた。



目の前には、広い原っぱと、真っ直ぐ延びるアスファルトの道がある。
やっと林道をぬけたのだ。



民家が点在しているようだが、近づいてみるとどの家も生活感が無く、空き家になっているらしい。
異様な寂しさ、虚しさが漂ってくる。






この辺りは、とことん「のどか」という言葉に縁がないらしい。


ゴーストタウンと化したと思われる集落を歩いていると、時々車が通過する。
一体どこから来た車なのだろう。
そしてその車の中には、JRの文字が書かれた四駆の車両が、どうやら駅に向かって走っていった。
変電所の作業員か、または先程の保線員の出迎え用の車が?

JRの車を追いかけるが如く、私は今来た道を引き返す。
普通なら駅まであと何メートルといった類いの案内標が道の脇に立っているものだが、そんなものは一切見かけなかった。

とことん忘れられた駅、という印象を受けた。

帰りは下り坂をひたすら降りるだけなので、若干楽ではあった。
さっきは上り坂を上るのに必死で気づかなかったが、時折列車が通過する音が聞こえてくる。
おそらく「つばさ」が猛スピードで駆け抜けていっているのであろう。

駅まで戻ってくると、やはり先程のJRの車が停車していた。
しかしあの悪路を車で通るのは、かなりのテクニックが必要なのではないか?

鉄ヲタになる前は無類のドライブ好きだった私である。
しかしこんな道はたとえ仕事であっても車では通りたくない、運転手は大したものだと感嘆した。
車はしばらくして、保線員を拾って去っていった。

中年の男性は…
あれ以降見ていないが…





何もする事が無いので、ホームにあがって「つばさ」の通過を見てみようと思う。

私は猛スピードで通過する姿を想像して身構えていたが、実際に「つばさ」が通過する時は想像に反してかなりスピードを殺して、通過していった。



この辺りは勾配もかなりあるし、トンネル、カーブ、鉄橋など過酷な環境にあるので、新幹線と言えどもスピードは出せないのであろう。



とは言っても、トンネルから大蛇のように伸びてくる車体が、目の前を通過していく姿は、さすがに迫力がある。

さらにしばらく待っていると、ちょうど上りと下りの「つばさ」が赤岩駅ですれ違う姿を見れた。
これは幸運だった。



待合室とホームをいったり来たりして1時間以上待ったであろうか…

ようやく在来線の米沢行き下り719系が定刻通りやってきて、私は胸を撫で下ろした。



列車に乗り込み、次の目的地に向かう。







この旅の物語の続きは、こちらをクリック


鉄道コム

にほんブログ村 鉄道ブログへ