第19旅第3章:峠駅と「峠の力餅」 | もこ太郎の平成阿房列車

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私が行った鉄道の旅をレポートさせて頂いています!
私のブログをお読み頂いて、鉄道の旅に興味を持って頂けたら幸いです!

※今回の記事の画像は、かなり画質が悪いことを事前にお詫びしておきます。
 そのことを踏まえて、記事をお読み頂ければ幸いです。


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命からがら、赤岩駅 を抜け出した。
今まで降りた秘境駅の殆どは、駅との別れが名残惜しく、また来てみたいという感想を持つことができたものだが、この赤岩駅は例外だ。
おそらく、よっぽど気が向かないと、また来たいとは思わないだろう…
今までとは別の意味で、一生忘れられない駅になりそうだ。
スイッチバック跡も旧ホームもろくに見れなかったが、無事に駅を抜け出せたことで、そんな憤りなどどうでもよくなる。

いかん、
旅の目的はスイッチバックの遺構を訪れること。
最初の駅で目的を見失ってるようでは話にならない。

下り列車は幾重のトンネルを抜け、板谷駅に到着。
この駅は後程訪れる予定である。

板谷駅を発車した列車は、長いトンネルに入る。
峠を越えるトンネルということで、どうしても上越線の清水トンネル とリンクし、自ずとテンションが上がってくる。

そして列車はスピードダウンし、社内放送にて次の駅停車のアナウンスが流れる。


トンネルを抜けた筈なのに、薄暗い中に列車は停止した。
私は下車した。



峠(とうげ)駅



下車してまず目に入るのは、駅のシンボルにもなっている、ホーム一面を多い尽くす巨大なスノーシェード。



これは圧巻である。
何でもこのスノーシェードは、スイッチバックのポイントが、積雪や凍結で誤動作しない為の工夫であったらしい。
今でもホームを豪雪から守るために役立っているだろう。
そして一面二線島式ホームの上にある、「峠」一文字の、シンプルだが印象深い駅名標。

それから、ホームに響く「ちか~ら~~」の掛け声。
今では非常に珍しい駅売りの姿が、ここ峠駅では百年以上も前からずっと見られるのである。



列車は駅売りの品を購入する乗客の為に、少し長めの停車時間をとる。
粋な計らいである。

列車が出発した後、私は売り子から品物を購入した。一つ千円。
その品物とは…


峠の力餅




購入直後、私は待合室のベンチに腰掛け、箱を開けてみる。
箱の中には、一口サイズの大福が10個入っている。



おもむろに餅を一つつまみ上げ、口にほうばる。
柔らかい餅にこし餡が詰め込まれており、素朴で淡い甘さが口の中に漂っていく。




私は、この一口の為にここまで来た
また一つ、小さな夢を叶えることができた




美味しさと、夢が叶ったことで、涙が出そうになった。
こんなことでそんなに感動するなんて頭がどうかしてるのではないか?と思われるかもしれない。
しかし、そんな些細な夢でもこうして叶えることができた。頭がどうかしてしまった男に少々お付き合い頂きたい。

赤岩で命がけの探索を行ったせいもあって、小腹が空いた状態の胃袋に力餅はどんどん流しこまれて行く。
10個すべて平らげることができそうな勢いだったが、それだと少し勿体無いような気がしてきた。
5個目を食べたところで、力餅の箱をリュックにしまい、駅周辺を探索することにした。

ホームからの階段を降り、駅の出口に向かう道は100メートルほど先までスノーシェードに覆われている。



2、30メートルほど出口方面に進むと、残された廃線のレールが見えてくる。



スノーシェードに覆われた箇所は、昔は引き込み線であったことが容易に理解できる。

スノーシェードから抜け出すと、そこには非常にのどかな光景が広がる。



周りに私を覆い囲う、目立って高くそびえる山は無い。
つまり私は、今まさしく峠にいるのだ。




赤岩では虫の声しか聞こえなかったが、ここ峠では小鳥のさえずる声があちこちから聞こえてくる。


良い雰囲気だ。


さて、旧ホームはどこか?
スノーシェードから程なく真っ直ぐ歩いたところ、すぐ旧ホームを見つけることができたが、ここも草木に覆われてしまっており、満足に旧ホームを見ることができなかった。



しかしそのさらに奥に線路跡が続いており、跡を追いかけてみると、朽ち果ててはいるが、まだまだ力強くそびえ立つスノーシェードが姿を表す。



ホームはよく見れなくとも、このスノーシェードが見れればそれなりの満足感は得られた。

このスノーシェードの中に入ることができたが、あまり奥に進むと気味が悪くなりそうだったので、適当なところで引き返した。




次は駅に隣接する「峠の茶屋」に立ち寄ってみる。



峠の茶屋の名にふさわしい、味わい深いたたずまいである。



ここは力餅の販売元であると同時に、食事も取れる。
夕方に近い時刻ではあるが、まだまだ暑さはおさまらない。
そんな中、私は茶屋の名物だという「山菜入り雑煮餅」を注文する。

客は私一人。
出された雑煮を食してみる。

美味い。
まったく素朴な味わいで、懐かしさを感じずにはいられなくなる。
心が落ち着く。

暑い中、熱い雑煮を汁ごとたいらげてしまった。
私は店員に礼を言い、店を出た。



駅の周りは静かで、民家も峠の茶屋を含めて数件。
しかし民家に住む人たちは家事に追われた様子を見せ、赤岩と違いここには生活が存在する。


のどかで良いところだ。
いつまでもここに居たくなる。

しかし残念だがそうも言っていられない。

1時間半ほど峠駅に滞在後、福島行き上り列車に乗り込む。



峠駅との別れを惜しみながら…









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