南蛇井
を出発すると、列車は真っ直ぐ進み、車窓は民家、田園、空き地を交互に映し出す。
少し左にカーブしたかと思うと、進行方向左側に小さなホームが見えてきた。
「千平(せんだいら)駅」
単式ホーム1面1線、そして小さな待合室と簡易トイレのみを有する駅。
無人駅で駅舎は無い。
駅の周りには民家が点在しているが、人の気配はほとんど感じられない。
駅は少し小高い丘の上に設けられており、ホームへは小さい階段を使って移動する。
その階段の脇には、手作りの「千平駅」の標識が掲げられている。
しかしこの駅、入り口が非常に分かりにくい。
この駅を利用するのは、駅周辺の住民しかいないのではないだろうか?
駅に接する道路も細く、通行人も車もほとんど見かけない。
駅のそばには、鏑川の支流となる小川が流れており、ホームからはそのせせらぎを感じ取ることができる。
それにしても、ここは自然に囲まれた良い場所である。
駅周辺を歩いていると、鳥のさえずる声もよく聞こえてくる。
木造駅舎を有する駅が多い上信線の中で、ひときわ異彩を放つ駅である。
だがこの駅はこの駅で、他のどんな駅にも持っていない魅力を持っている。
ここはまさに、「上信線の秘境駅」である。
次の電車が来るまで時間があった。
天候も小春日和、駅に誰もいない事をいい事に、私は待合室のベンチで昼寝させて頂いた。
マイナスイオンを十分に浴びて、下り列車に乗り込む。
この駅で下車した人間は私一人だけであったが、
この駅から乗車する人間も、私一人だけであった。
さて、いよいよ残す駅もあと一つ。
長かった一日も、終焉を迎えようとしている。
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