新しいアルバムが出ると、
雑誌の取材とかテレビ・ラジオ出演とか、プロモーションが多くなって忙しくなる。
そしてアルバムツアーも始まって、マサムネさんが家に帰ってくることも少なくなる。
新しいアルバムもツアーも嬉しいけれど、あまり会えなくなるのは寂しい。
ひとりじゃご飯作る気も起こらない。
今日も仕事を終えて、一人ぼっちの家に帰る。
鍵を開けると、明かりが点いていて奥に人の気配がする。
「おかえり。疲れたでしょ。ご飯できてるよ。」
と、エプロン姿のマサムネさんが出迎えてくれた。
「マサムネさん!なんで?」
「次のライヴまで、ちょっと日が空いたから帰ってきた。」
キッチンに行くと食事が用意されていた。
「ツアー中は料理したらだめだよ。包丁で指切ったら大変。」と私が言うと、
「大丈夫、包丁使ってないから。サラダのレタスだって手でちぎったし、お肉だってばら肉だし。」
久しぶりに食べるマサムネさんの手料理。
「やっぱりおいしい。」
「俺のいない間、ちゃんと食べてなかったんじゃないの?」
「ばれた?」
「寂しかった?」って言われて
「うん」って答えたら
「寂しかったのは俺の方かも・・・会いたかった、ずっと。」って後ろから抱きしめられて、
「ライヴの最中もお客さんの席に、探しちゃうんだよな・・・」
「今度行くよ。本当は私だって全部行きたいくらい。全部のライヴで私の場所を用意しておいて欲しいくらいだけど・・・そんなわけにはいかないでしょ。」
「明日、温泉でも行かない?一泊しかできないけど、近場で。」
って誘われて、
温泉街を浴衣で歩くマサムネさんの、草履からちらっと覗く綺麗な足首に見とれる。
立ち寄ったお店で可愛い髪飾りを見つけた。
「可愛い、これ欲しいな。」
「つけてみる?」ってマサムネさんの手が私の髪にのびてきて、
「ほら、可愛い、似合うよ。買おうか。」
旅館に戻って大浴場へ。
女湯に浸かりながらマサムネさんを想う。
何してるかな・・・
あがったら、マサムネさんはロビーで待っていてくれた。
二人で歩いて部屋に戻る。
「お風呂は良かったけど、一人ぼっちだし、ちょっと寂しかったかな。」って言うと、
「じゃ、後で、部屋のお風呂一緒に入ろうか?」
「ええ~それは恥ずかしいから・・・・」
「想像しながら寝ることにするよ。おやすみ。」