「消費するアジア」大泉啓一郎著 中公新書
久しぶりにヒットの1冊。
新興国では都市部と農村部の経済格差が大きく、
国単位で平準化した数値で考えると本質が見えないという著者。
かわりに、大都市圏ごとの新しい経済単位を使い、
消費の視点で市場を分析したのがこの本です。
アジアに限って言えば
先進国:日本
NIES:韓国、シンガポール、台湾、香港
ASEAN5:タイ、インドネシア、マレーシアなど
不可解な新興国:中国、インド
という分類でしょうか。
新興国という言葉は一般的にはBricsを指しますが、
著者は中国、ASEAN5、インドをひっくるめて新興国と呼んでいます。
日本企業がプラザ合意以降、
安価な労働力を求めてASEAN諸国へ生産拠点を移しました。
さらに人件費が高騰してくると、バングラのダッカなどより安価な都市へと移ります。
「国から国へ」でなく、「都市から都市へ」という視点が新しいところです。
インドでは1日2ドル以下で生活する貧困層は、およそ人口の半分。
農村部では、経済成長の恩恵を充分に受けていません。
いまだに国民をどう食わせるか、に心を砕かなくてはなりません。
一国で見ると都市部と農村部では大きな違いがあることが、
確かにインドで暮らしているとわかります。
アジア経済を都市単位で分析する鋭い切り口に技ありでの一冊です。