後宮の検屍女官/小野はるか | mokkoの現実逃避ブログ

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発売日:2021/4/23
文 庫:256ページ
ISBN-13:978-4041112403

後宮にうずまく疑惑と謎を検屍術で解き明かす、
中華後宮検屍ミステリ!

「死王が生まれた」
大光帝国の後宮は大騒ぎになっていた。
謀殺されたと噂される妃嬪の棺の中で赤子の遺体が
見つかったのだ。
皇后の命を受け、騒動の沈静化に乗り出した美貌の宦官・
延明(えんめい)の目にとまったのは、幽鬼騒ぎにも
動じずに居眠りしてばかりの侍女・桃花(とうか)。

花のように愛らしい顔立ちでありながら、出世や
野心とは無縁のぐうたら女官。
多くの女官を籠絡してきた延明にもなびきそうにない。
そんな桃花が唯一覚醒するのは、遺体を前にしたとき。
彼女には、検屍術の心得があるのだ――。
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中華後宮検屍ミステリ シリーズ第1弾
「死王」「冤罪のなる木」「猫の声」「罪」の4編

検屍に意欲を見せる女官と冤罪により宦官となった官吏の
中華宮廷ミステリー?

「薬屋のひとりごと」に似てると言われてましたが
確かに女官と官吏がメインで美形だけど、
薬屋の・・・猫猫(マオマオ)も、本作の桃花(トウカ)も
売られたという共通点はあるものの、背景が違う。

更に桃花は、皇帝の寵妃である梅婕妤(バイ ショウヨ)から
皇帝の目につかないように、隠して飼殺す目的で
働かせている侍女であり、梅婕妤は皇后敵対派である。
桃花はズボラなのでありがたく感じているらしいが。

また、官吏の延命が本物の宦官なので、その扱いや
侮辱なども描かれており、更に、皇后派であるので
梅婕妤と敵対する立場にある。

読んでみないとわからないと思ってましたが
検屍なので、相手にするのは「屍」 
土葬の時代な上に、遺体の扱いも違う
※グロ描写あるので注意。

検屍術の蘊蓄や、昔ならではの手法なんかも紹介され
口説くない蘊蓄好きには、たまらないと思います。

また、皇后派の延命が桃花に検死を依頼するのも
皇后敵対派である梅婕妤が主の昭陽殿から
呼び出さないといけないので、その偽装も大変。
それも面白くもあるんだけれど・・・(^◇^;)

死罪か否かが運によって決まってはならない
そう思う延命も、冤罪によって宦官にされた。
冤罪だとわかった時には、時すでに遅しであった。

また桃花も、検屍官だった祖父を尊敬していた。
だから、検屍を面倒がって手抜きする輩も、金で
真実を曲げる輩も大嫌いだ。

検屍術とは〝冤罪を無くす術〟 無冤術という。
死者の声を聞き、罪なき虜囚を救うすべである。

それぞれの理念と色々な思惑が絡み合い
死が偽装される。
それを時間をかけて丹念に真相を導き出す。

「死王が生まれた」という騒ぎから離れられず
一時は落ち着きを取り戻したかに見えた騒動も
後宮内部では何気に引っ張られたりしている。

一筋縄ではいかない後宮のドロドロ関係は
本当に何がどうしてどうなったぁ???
って感じで捻じれに捻じれているのです。
これは先がちょっと知りたくなりました(^◇^;)

本作でもちょっと印象に残った事や
メモ書きなんぞを・・・

男の膝には黄金の価値がある
簡単に人前で膝を折るなという、延命を男として
扱った言葉。
宦官は糞尿にまみれても膝をつくと思われていた

欅柳(カワヤナギ) 冤罪のなる木
欅柳の皮を皮膚に湿布すると、こん棒や拳で殴ったような
打撲傷のようになる

言葉なんてものはね、とっても重くて、そのくせ
とっても軽いものなんだよ。大事なのは、自分だ。
自分がどういう答えを出すかだろう?


宦官の宝(パオ) 
腐刑の際に切り取ったものを壺に入れて置く
昇進や異動の際に検閲が必要になる。
冥府の王で閏王(ジュンワン)は、子孫繁栄を捨てた者を
許さない。
宦官は死後、納棺の際にこの宝を元の位置に
戻さなければ、来世は人間にしてもらえない
その分、価値があり、盗難や転売が後を絶たない。

宦官について、結構詳しく書かれてます。