いっぺんさん/朱川 湊人 | mokkoの現実逃避ブログ

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発売日:2011/2/10
文 庫:347ページ
ISBN-13:978-4167712044

いっぺんしか願いを叶えない神様を探す少年とその友人の
奇跡を描く感動の表題作「いっぺんさん」、
田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」と
その後日譚「磯幽霊・それから」、山奥の村で、ほのかに
思いを寄せた女の子に起きた出来事「八十八姫」など、
じんわりと沁みる恐怖と感動の九篇を収録。
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文春文庫では4作目になるようです。
言わずと知れた朱川さんの昭和な話。
カバーイラストは表題作のワンシーンですね。

「いっぺんさん」表題作
いっぺんだけ願いを叶えてくれる神様がいる神社を探して
自転車で遠出した二人の少年。彼らの願いの行方は・・・

これは、泣いた。いかにもな感動話なんだけど、それぞれの
家族の背景が描かれているから、余計に感動して、更に
語り手の少年の最後の一言で涙がドバーです(T□T)

「コドモノクニ」
 冬「ゆきおんな」
 春「いっすんぼうし」
 夏「くらげのおつかい」
 秋「かぐやひめ」


有名童話の現代版残酷物語のような形を取っています。
4話のショートショートが終わった後の締めの一言も
童話同様の形をとりながら、残酷です。

「小さなふしぎ」
高度成長期の昭和40年初頭、近所のアパートの男性に
小鳥を使った見世物のアルバイトに誘われるのだが・・・

動物を使った見世物を虐待というのか・・・
男性が芸を教えていた小鳥との不思議な話。

「逆井水(さからいみず)」
30歳になったフリーターが、旅に出た途中で逆ナンされ
更に妹を紹介され、地図にも載らない村に行くのだが・・・

性欲だけでなく、金儲けまで企んだ男の末路が哀れだ(^◇^;)

「蛇霊(じゃれい)憑き」
事情聴取で、妹のことを回想する形で話が進みます。
姉妹が舗装されていない道で蛇が動物を飲み込むのを見た。
その後、妹が自分を蛇だと言い出して・・・

昔、田舎で蛇のお社を壊してしまい、体に鱗みたいなのが
生えて来て気が狂ったという話を聞いた事がありますが、
本作の妹の豹変ぶりが恐ろしい・・・

人間は蜘蛛が苦手な人と、蛇が苦手な人に分かれ、
均等に恐怖を持つ人はいないとか?
これはわかるかも。mokkoは蜘蛛の方がコワイ。
昔、mokkoを驚かそうと、ビニールに入れた蛇を目の前に
出された時、何の躊躇もなく掴んで周りを驚愕させました。

「山から来るもの」
離婚した母親に恋人ができたので、気を使って冬休みは
祖母の家で過ごしたのだが、祖母と叔父夫婦に違和感を感じ、
夜中に変な格好をしたものを見てしまい・・・

その地域にだけ根付いた風習。ただ、知っている人と
知らない人がいた。初めて知った主人公と、祖母の放った
最後のセリフが絶望的過ぎます。

「磯幽霊」
叔母の見舞いに訪れた作家が、観光気分で浜辺に行ったら、
波打ち際で探し物をしている女性がいて・・・

死んでなお、大切なものを探し続ける女性と、原因となった
男の話は、よくある話ではあるけれど、気分悪いですね。

「磯幽霊・それから」
磯幽霊の話を許可を得て世に出した後、女性の話を
教えてくれた男性と会う事になるのだが・・・

うわぁ~コワイわぁ~。この男性の行動が怖いわぁ~
この男性、その女性を想っていたんだろうな・・・

そう言えば、自宅介護とか言って、虐待するドラマがあったなぁ

「八十八姫(やそやひめ)」
山間の小さな村では、八十八姫を畏れ敬い「ひめんごりょ」
は姫の子孫だから、特別扱いされている。
ある日、次の八十八姫が選ばれ・・・

主人公は、しきたりに反抗しようとするのだが・・・
理不尽としかいいようがない。
どんな言葉で言い繕っても、殺人だものね。


昭和ノスタルジーと言ったらいいのか・・・
昭和的な夢と希望と願いと絶望が詰まったお話。
セピア色って言うけれど、確かに懐かしい小物や行事は
出て来るけれど、本当はもっと埃臭くて残酷です。

生贄にされる子供を必死に騙す大人と、それぞれの安堵と絶望・・・
理不尽な迷信と欲の矛先はいつも子供だったりする。
その対比が大きいからこそ、子供の純粋さが際立つ。

そういえば、昔は双子は不吉と言われていて
片方を処分していたらしい。
昭和の時代になっても、そういう迷信を信じる人が
いたらしく、実際に中学の総体で双子なのに
苗字が違って、何で?って思ったら、双子は不吉だから
片方が貰われて行ったから苗字が違うと教えられ
イマドキ、そんな事やってるの?って当時は思ったけど
田舎の村落には、そういう迷信が残っていたらしい。
殺さないだけ、マシだったのかなって思ってみたり。

コミックにもなってたんですね・・・