花まんま/朱川 湊人 | mokkoの現実逃避ブログ

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現実から目を背けて堂々と楽しむ自己満足ブログ

 

発売日:2008/4/10
文 庫:317ページ
ISBN-13:978-4167712020

母と二人で大切にしてきた幼い妹が、ある日突然、
大人びた言動を取り始める。
それには、信じられないような理由があった…(表題作)。
昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、
当時子どもだった主人公が体験した不思議な出来事を、
ノスタルジックな空気感で情感豊かに描いた全6篇。
直木賞受賞の傑作短篇集。
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気になっていた本作をやっと読めました。
正直、タイトルの意味がわかっていなかったのですが
わかった途端に泣けました。

「トカピの夜」
小学校低学年の時に暮らした大阪の下町で、外国籍の
体の弱い子と友達になったが、容態が急変して亡くなり
トカピという妖怪になって飛び回っているという・・・

意味もなく怯える大人たちと違って、子供ながらにも
その意味をくみ取った主人公の優しさが沁みる。

「妖精生物」
コインロッカーに子供を捨てるのが増えた時代
小さな瓶に入れ、砂糖で生きるクラゲのようなものを
怪しい男から買い、育てていたのだが・・・

他の作品とは毛色が違うと言うか、確かにあったであろう
汗臭い欲に、不思議な生き物を絡めているけれど
この話は、わかるけど嫌だ・・・

「摩か不思議」
働きもしないでブラブラしている叔父が亡くなった。
火葬場を目前にして、霊柩車が動かなくなり・・・

面白くて父親よりも好きだった叔父だけど、
死んでからも通した我がままは、まるでコメディです。
霊柩車を見ると親指隠すって、ありましたよねぇ
葬儀場の前を通る時も、つい、やってしまいます。

「花まんま」表題作
前世を思い出した妹と、生前に暮らした家に向かった兄妹。
妹が生前の親兄弟と接触する事を拒否した兄は、
妹の替わりに差し出した物は・・・

前世の記憶を持つ人の特集とか昔あったよね?
花まんまの意味が分かった時、泣けました。
前世の記憶を持った妹の優しさと、それを受け止めた
生前の家族にまた泣けました。兄貴っていいなぁ~。

「送りん婆」
病気等で苦しみ続ける家族を逝かせる送りん婆。
死の間際に苦しみを取り除き、最後の時間を持てる。
跡継ぎに認められたみさ子は・・・

言霊が力を持っていた時代、あの世へ送るための仕事。
送り言葉を教わりはしたものの使っていないみさ子。
トッポ・ジージョが懐かしい。

 

「凍蝶(いてちょう)」
周りから差別されていた主人公が、放課後の時間を潰す為
たまたま墓場で出会った女性と仲良くなり・・・

同和問題(部落差別)で、友達関係が長続きしない主人公。
差別はいつの時代も親が子供に教えている。情けない。
決められた日しか会えなかった女性の仕事は・・・

ジェリー・ビーンズと落雁・・・どちらも苦手です。
 
凍蝶とは、冬季まで生きながらえた蝶で、晩冬の季語。
蝶々の数え方は、1頭・・・知らなかったぁ

蝶の木は、何度かテレビでドキュメンタリーを見たことがある。
蝶の生る木 オオカバマダラ ↓クリックサイト

リュウキュウアサギマダラ 浅葱(あさぎ)色 毒がある

 

大阪に住んだことはなくても、感じるのは懐かしさ。
昔、子供の目から見たり感じたりした似たような空気感。
不思議な事も、怖い事も友達や家族に対する気持ちが
自分も通ってきた子供という共通視点だからこそ
懐かしく感じるんだなぁ~と思いました。

「トカピの夜」と「花まんま」が好きです。