翻訳:原島 文世(茨文字の魔法と同じ訳者)
発売日 : 2001/8/1
文 庫 : 318ページ
そこは奇妙な学校だった。入学してくるのは、
異世界へ行った、不思議の国のアリスのような少年少女ばかり。
戻ってはきたものの、もう一度“不思議の国”に帰りたいと
切望している彼らに、現実と折り合う術を教える学校なのだ。
転入生のナンシーも、そんなひとり。
ところが死者の世界に行ってきた彼女の存在に
触発されたかのように、不気味な事件が・・・。
アリスたちのその後を描いたファンタジー3部作開幕。
ヒューゴー、ネビュラ、ローカス三賞受賞!
世界幻想文学大賞候補作。
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初めましての作家さん。
青子さんのレビューを読んで購入
「不思議の国のアリス」を読んだけど
アリスが出発したところに戻ってきた時、
どんな気持ちだったか考えたことがなかったの。
文中にあるセリフだ。
全く同じことを考えた。
不思議の国の魅力の方に気持ちが向かっていて
そこから戻った?放り出された?時の気持ちを
考えたことがなかった。
むしろ、戻れてよかったぁ~って感じで・・・
出発点に戻った時点で、不思議の国に帰りたいと思う事は、
この現実世界が既に自分の世界ではなくなっているって事。
けれど扉は閉ざされているから戻れない。
家族は、妄想に憑りつかれた可哀そうな子と決めつけ
何とか元に戻そうと?する。
ここは、そんな子供たちに、現実と折り合う術を教える寄宿学校。
責任者のエリノアは、ナンセンス世界へ行った一人だが、
扉はまだ閉じられておらず、行き来が可能。
転入生のナンシーは、死者の殿堂から帰ってきた。
寮生活の為に持ってきた洋服は、親によって勝手に
年相応の明るい可愛らしい服に変えられていた。
拒絶するナンシーを救ったのは、菓子の国から戻った
ルームメイトのスミ。
突飛な行動が目につくスミだけど、ナンシーの心を
瞬時に理解して、妖精国帰りのケイドのところに行き
ちょうどいい服を見繕ってもらう。
他にも色々な国からの帰還者?がたくさんいて
既に派閥みたいなものも出来ていたり・・・
そして突然、スミが殺され、やがて連続殺人へ・・・
予想通りに犯人探しが始まって、マイナーイメージの
国からの帰還者が犯人扱いされる。
そこは現実的なんだなぁ・・・
エリノアが、みんなを落ち着かせるのだが・・・
何というか、十二国記「魔性の子」を連想しました。
記憶を失ってはいたけど、帰って行った高里と、
強く憧れながらも行けない広瀬。
この学校の子達は記憶を失わず、ただ帰りたいと願う。
その世界こそが、紛れもなく自分の本当の世界だと。
そして帰ることが出来た者と出来ない者。
それを隔てるのは何なのか。
この学校の子供たちだからこその、セリフも納得。
ナルニアはファンタジーのフリしたキリスト教の寓話
作家連中は、物語を書きたくて、自分たちみたいな子の
話を聞いて、でまかせを書いて有名になった。
被害妄想的というか、帰れない自分に苛立っている?
時間の流れも、現実とは違っているらしい。
求めてやまない状況を目の前にした時、時は止まる。
傍にいながらも、違う時の中にいた者が
動き出した途端に、時がふたたび流れ出す。
時間とはそういうものだ。
なんか、そういう瞬間は分かる気がする。
そして、一番印象的だったセリフが
「どうしてあなたのハッピーエンドだけが重要なの?」
全くもって、ごもっともです。
誰もが自分だけのハッピーエンドを願うんだろうけど
それが行き過ぎると、反発がくるのは当然だよね。
両親に泣きつかれて休みに帰ることを決めたナンシー
自分に折り合いをつけようとしていた矢先、
救ってくれたのは、殺されたスミだった・・・
最後の最後は、山に戻って来たハイジを思い出しました。
子供ってやっぱりそうするよね・・・
3部作。これは続きを読まなくては!!
しかも次巻、最終巻とも評価が高い。
((o(´∀`)o))ワクワクするわぁ~
青子さん、ステキな本に出会わせてくれてありがとぉ~♪