発売日 : 2020/6/19
文 庫 : 288ページ
死際の翁は生首の絵を描いていたそうだ。
持仏堂を曳いた後、怪異が起こるようになった東按寺。
調査に出た春菜は、無残な死に様の死体が転がる地獄を幻視する。
なぜ怪異は起きたのか。
死期の迫る曳き屋・仙龍は、春菜が幻覚を視ている間、
地獄を描きたい欲求に囚われたことに注目する―。
歪んだ情念を生き血で描いた怨毒草紙、その奥に潜む
冥き陰謀とは。因縁帳、転ず。
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よろず建物因縁帳シリーズ 第6弾
仙龍を助けようと思うのに何もできない自分が悔しくて
泣いてしまった春菜にかけられた仙龍の優しい言葉は
何度も脳内リピートされてお守りになっている。
春菜は普通の曳家と隠温羅流の曳家の違いや背景を知る為
小林教授経由で木賀建設の曳家を見学させてもらうことに。
その社長は仙龍とは昔馴染みで春菜がサニワと知っていた。
東按寺の「持仏堂」の曳家を見学していて
気分が悪くなる春菜。
曳家は無事に終えたはずだったが、その直後から
不可解な事故や噂が立て続けに起こり・・・
鐘鋳建設に向かうと、そこには木賀建設の社長がいて
持仏堂を曳いた件で住職から相談されて来ていた。
棟梁は、隠温羅流の因はなくても春菜が来たってことは、
そういうことでしょうと依頼を受ける。
調査初日、怪異の噂が頻発する時刻に待ち合わせ
仙龍はやはり和尚を連れて来ていた。
小林教授と和尚、仙龍とコーイチ、そして春菜。
いつものメンツが揃いました。
しかし、怪異は既に始まっていた。
凄まじい恨みと呪い。怨毒(エンドク)。
それが凝ると鬼になる。
春菜が目にした幻視を仙龍や教授達に話した結果
江戸時代に流行した残虐絵にたどりつく。
改印(錦絵を流通させるための許可証)は、人喰い温颯
(うんそう(温;旧漢字))
江戸中期の絵師:温颯と残虐な事件の鬼哭(キコク)が重なる
やがて始まる隠温羅流の曳家
今回は木賀建設と住職も協力し、大掛かりな曳家になった
現代の職人達のプロとしての細かな作業と隠温羅流の儀式。
毎度のことながら緊張し、興奮しました。
ひとつづつ、真相に近づき、歴史が解明される。
それに対する敬意を決して忘れず儀式を行う。
サニワである春菜も気が強いとはいえ、怖いものは怖い。
仙龍の呪いを解きたい思いはあっても足はすくむ。
それでも春菜の前のサニワだった仙龍の姉:珠青に
仙龍のことを頼まれた事で勇気を持った春菜は
隠温羅流の過去を探る事を決意する。
なんか、仙龍もカッコいいけど、隠温羅流のメンツも
珠青さんもカッコいいなぁ~(〃▽〃)ポッ
今回、一番感動したのはコーイチだなぁ~
春菜と仙龍の言い合いに、コーイチが割って入って
とうとう言ったぁ~о(ж>▽<)y ☆
やっぱり、こういうのはハッキリ言うのがいいんですよねぇ
人間は男と女で出来ているけど、女は母親と女。
サニワに使うエネルギーを全て子供に回して産むから
子供を宿した女はサニワの力がなくなる。
母親ってすごいんだなぁ~って改めて思いましたよ。
そして雨月物語を読まなくてはならないらしい。
今までは関連本は読んでいても本家は読んでいなかった。
しかし、隠温羅流の過去を調べると吉備の出らしく
連想されるのが雨月物語に出てくる吉備津の釜。
本格的に春菜が動く前に読んでおかないと!
余談ですが、最初の被害者の庭守は、和尚の知り合いで
名前が猪助(イノスケ)・・・
鬼滅の刃の嘴平伊之助を連想しちゃった(^◇^;)