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からくりからくさ (新潮文庫)
680円
Amazon |
ページ:447P
発売日:2001/12/26
祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。
糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。
静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。
やさしく硬質な結界。
だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、
すべてはこの結界と共にある。
心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして――。
生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。
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本作と、次作の「りかさん」がリンクしているのは知っていた。
時系列的には「りかさん」を先に読んだ方がいいかもと
アドバイスももらってました。
出版順に読もうか、時系列で読もうか迷った末に
出版順に読むことにしました。
祖母が亡くなって50日目、久しぶりに祖母の家に入る。
りかさんは、祖母が亡くなった時、しばらく喪に服すると言って
祖母の家に引きこもっていた。
掃除を終えて、りかさんに話しかけるも、反応が無い。
ただの物としての人形だ。まだ帰ってきていないらしい。
祖母の残した古い家が痛まないようにと、20代の女4人と
人形のりかさんが共同生活を始める。
こじんまりとした庭と縁側のある日本家屋で、容子は
祖母から教わった染色を、与希子と紀久は大学で専攻する織物、
そしてアメリカ人で風変りなマーガレット。
それぞれが目的を持って生活する空間が出来上がる。
何気ない生活から繋がりが生まれ、やがてその繋がりは
隠れていた繋がりを浮き上がらせる。
りかさんと対で作られた人形は、紀久の実家にあった。
りかさんを作った人形作家は、元は能面作家であり、
その面をつけたツタという女性が事件を起こしていた。
能面作家は、竜女で有名になった作家で、その面は
確認できていない。
紀久が調査していた機織りと、与希子が興味を持っていた
アジアの織物:キリム。そのキリムは、マーガレットの
祖父母の持ち物でもあった。
唐草模様のように繋がりだした世界。
蔦のように繋がる文様は蛇のようで、それはたくさんの
モチーフとして使われていて・・・
決して楽しいだけの繋がりではなく、それぞれの
心模様にも激しい葛藤を与えながら、また、親戚や
先祖達まで繋がっていく。
今を生きながら、遠い昔を覗き見る。
緩やかに頑なに脈々と繋がる蔦のような物語。
梨木さんの作品は何作か読んではいるけれど
こんなに激しい執念や感情は初めてでした。
優しいだけの作品と思って読むと、苦しいかもしれない。
で、読む順番ですが、「りかさん」を先に読んで、
それから「からくりからくさ」そして、りかさんに
収録されている「ミケルの庭」を読むといいでしょう。
ミケルの庭は、からくりからくさの続編です。