ページ数:244P
発売日:2016年12月
時は明治。浅草の人気芝居小屋「大北座」の跡取り息子・由之助は
ある日、馴染みの警官から頼み事をされる。
それは、魚目亭燕石と名乗る“訳有り戯作者”の
世話役になってほしいというもの。
燕石は「浄天眼」の持ち主で、物に触れるとそれが持つ“記憶”を、
人に触ると読心術が出来てしまうが、それが嫌で家に引きこもり、
戯作を書きながら女中の千代とともに静かに暮らしているという。
だが、由之助や警官によって呪いや殺人事件に巻き込まれていき…?
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謎解きレトロ浪漫ミステリー、シリーズ第1巻
初めましての作家さん。
物や人に触れる事で、その記憶や思いがわかってしまう能力:
浄天眼を持つ燕石は、高級料亭の跡継ぎを妹に譲って、自らは
小説家として深川の別宅に引きこもってしまう。
そんな燕石に、浅草の人気芝居小屋「大北座」の由之助が
世話役を頼まれる。
過保護に育てられた由之助だが、外に出ることが嬉しくて
燕石の家での生活をスタートさせる。
とは言っても、家の中の事は女中の千代がやってくれる。
ただ、千代と燕石は家の中で顔を合わせることがない。
燕石には、幼馴染の相良という警官がいるのだが
難題にぶつかると燕石を頼ってくる。
・・・というのは、とりあえずの背景。
よくある千里眼ものとはちょっと違って、浄天眼で事件も解決、
日常の謎的なモノや心の問題まで解決に導きくってお話し。
これが結構楽しかった♪
「たがそでの椿」
鶴田屋という材木問屋の娘:志乃の遺体があがった。
少し先の橋の上に志乃の草履が置かれており、その隣には
男物の草履が揃えて置かれていたので心中と思われたが
状況がおかしい。これは事故か事件か・・・
そして残された片袖から視えたこととは・・・
「アカハラの小箱」
燕石の妹の翠子が友人から小箱を預かってから
変な事ばかり起こって気味が悪いと言う。
小箱には何が入っていたのか・・・
「消えずの露」
女中の千代は元々は翠子の子守りとして燕柳館にやってきた。
事あるごとに燕石に千代を返せと文句を言う
誰もが知っている千代が燕柳館にやって来た経緯とは・・・
「祈りの笹子(一)」
境内でイタリアの曲馬団が公演をするらしく
由之助は許嫁の小梅と一緒に外出を願い出るが
義兄夫婦は頑として首を縦に振らない。
そんな時、由之助は燕石は相良から燕石に伝言を頼まれた。
「つじのきりゅう」が大阪に潜伏していたことがわかったと。
外出を固く禁じられている理由と、つじのきりゅうとは・・・
浄天眼を使うと数日寝込むことになる上に、
人の死の記憶を視るのはあまりにも苦しいから
燕石は事件関係で浄天眼を使う事を嫌がる。
結局押し切られて使うことになるものの、
しょうがないとはいえ、お気の毒です(^◇^;)
ちょっとした小ネタが気に入りました。
椿の強い霊力について触れられていて、
日本書紀に出てくる土蜘蛛の話とか、八尾比丘尼や
七草がゆのことがサクっと説明されて、惚れ薬の
話まで出てきます。別の意味で楽しい♪
本作では、最初の2作が浄天眼を使い、残りの2作は
千代が燕柳館に来た経緯と、燕石の別宅に女中として
入り、顔を合わせなくなった理由が語られ
最後の話は、小梅の出生の秘密が語られます。
そして、浄天眼を使ったところで下巻に続きます。
これは物凄く気になりますよぉ~