レトロ・ロマンサー(壱) はつこい写楽/鳴海章 | mokkoの現実逃避ブログ

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ページ数:382P
発売日:2014年08月

お宝鑑定番組でテレビカメラを回していた桃井初音は、
出品された江戸時代の人相書に不思議な引力を感じる。
誰が描いたともしれないその墨絵にふと指先が触れた瞬間、
脳天にドンと衝撃がきて、初音の意識は過去へと跳んだ。
220年の時を遡り、江戸の町娘・はつの肉体に
精神だけが宿った初音。
かくして奇妙な縁で強制的にコンビを組むこととなった
ふたりの前に、絵師・東洲斎写楽が現れて…。
胸躍る時代ミステリー開幕!!
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初めましての作家さん。
気になっていたのは2作目の新選組だったんだけど
写楽かぁ~と思いつつも、シリーズはやはり
最初から読まないとダメだと思って2冊一緒に購入。

これは予想外に面白かったです。
タイムスリップものって色々あるんだけど
本作では、モノに触れると、そのモノに関係する
場所に意識が飛び、その関係者の体の中に同居するって感じで
お互いがその存在を認めてるって感じ。

本作の主人公:初音は、映画を撮るという夢を持っていた。
そして大学の頃に同じ夢を持っていた先輩を追って
テレビ局に入ったはいいが、日々の仕事に忙殺されて
同じ夢を持っていたはずの先輩も夢から遠ざかっていく
そんなある日、お宝鑑定番組の撮影をしていた時
出品された人相書きに何かを感じた

一方、たまたま同じ現場に居合わせた表は
撮影している初音に何かを感じた
この表(オモテ)は初音の勤めるテレビ局の大株主であり
国内トップ3に入る映画会社のオーナーだった。
表に強引に連れ出されて、先日の撮影で気になっていた
墨絵をもう一度見せてもらうべく、持ち主の家を訪れ
その絵に触れた途端、初音は衝撃と共に過去に飛ぶ。

まぁ~こんな出だしなんだけど、この話は
写楽が誰であるかという話ではない。
写楽に関しては色んな説があるようだけど、ここでは
一番有力?な人を写楽として描いてます。
絵師ではなかった人が、何故絵を描き始めたか。
何故、短い期間だけで消えたのか。
その理由を初音のトリップを通して見てくるって感じかな

こういう謎の多い人物の色んな説をこういう形で
読めるのって幸せですよぉ~
世界七不思議とかでも、色んな説が出るでしょ
あぁいうのも基本、大好きなんですよ。
あまり堅苦しいのは嫌いだけど、こういうポップな小説で
色々と想像させてくれるのは本当に楽しい。

そして、初音の意識が同居した「はつ」
浮世絵は、絵師と彫り師と摺師がいないと作れない。
その彫り師の娘が「はつ」であり、肝が据わっている。
いきなり他人の意識が入り込んできて話し始めたら
普通ではいられないでしょ。

初めての接触が、物凄くヤバイ状況だったとしても
それをすんなり受け入れた「はつ」が凄いと思うんです。
この衝撃的な出会いの状況は、偶然にも別の出会いも
含んでいるわけで、聞いたことのある名前が出てきて
ウハウハしてしまうんですよ。

そして、初音は3回過去の飛んで、はつと同居するんだけど
過去にいる時間は数週間から半年と長いが
現代では5分から15分程度である。
その間、表が初音の抜け殻を預かっているわけだけど
そこに脳科学なんかも絡んできて楽しいやらなにやら。

そして過去と現在の繋がり。
終わらせ方もステキでした♪
そしてタイトルなんですが、最後の方でなるほどぉ~って
思うわけですよ。
何事もきっかけって必要で、それを爆発させたのが
最初の人相書きって事でしょう。
あまり書くとネタバレになるのでこの辺で。
こういう説は大好きです。

そういえば、過去に飛んでる時に、すれ違っただけの
彩雲という絵師が、含み笑いを漏らしていたのが気になる
さぁ続きというか、新選組を読むぞ