ページ数:266P
発売日:2002年03月
訳: 堀 茂樹
ベルリンの壁の崩壊後、双子の兄弟の一人が
子供のころの思い出の小さな町に降り立った。
彼は少年時代を思い返しながら町をさまよい、
何十年も前に分かれたままの兄弟をさがし求める。
離れた地でそれぞれの人生を歩んできた双子の兄弟が
ついに再会を果たした時、明かされる真実と嘘とは?
抑制された筆致でつづられた衝撃的な傑作
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悪童日記にはじまる三部作の完結編。
50歳を超えたリュカが故郷に戻りクラウスを探す。
クラウスは幼い頃、精神障害となった母と別れ、その後再会し暮らす。
悪童日記で母親が爆死しても何の感情も表に出さなかった事に
違和感を感じていたのだが、これで納得。
おかあさんの代理としていた他人だったから無感情でいられたのね。
さすがにここは安心しました(^◇^;)
ただ、前2作と繋がった物語であるというのには無理がある。
共通した登場人物の役割も役柄も違っている。
3作での年齢が違うので、感じ方が違うというのもあるだろうけど
思い出や思いは時に美化されたり、作り変えられたりする。
そうする事で、心の安定をはかりたかったのか・・・
ここでも二人の恐れがあちこちに見え隠れしている。
リュカはクラウスが自分を探していると信じ
見つけてくれることを期待し、物語を描き続けながら
50歳を過ぎてしまった。
クラウスは、片割れが幼い頃に行方不明になり
その原因が父親であり、激昂した母である事を知り
母と一緒に暮らすようになっても、精神障害となった母は
リュカだけを思い待ち続ける姿に、リュカの存在を恐れる。
激しく求めながら、それを得られない苦しみ。
お互いの存在を疑わないのに、かみ合わないジレンマ。
クラウスは一度リュカの姿を見ているのに気づかない歯がゆさ。
二卵性双生児か?と思ってみたり・・・
やっと再会できたのに、待っていたのは拒絶。
それでもリュカはクラウスが片割れであることを疑わない。
クラウスもリュカを片割れと確信しながらも否定する。
その結末があまりにも悲し過ぎた。
リュカは、それでも同じ場所にあることを望んだ。
クラウスは、いつか同じ場所に並ぶことを確信した。
一緒にあるべきものが、1つであるべきものが
引き裂かれる悲劇。
切ないながらも、でもクラウスの一言で
ちょっとだけ安心しました。
なんかすごいもの読んだなぁ~
感想書きながら泣けてきたわ。
物語とは別だけど、作中でお墓を探せなかったって描写がある。
そこにあるはずなのにたどり着けない。
なんとなく、その時の不安がわかるような気がした。
卒業した学校に数年ぶりに訪れた時、同じ学校なのに
空気が違う。同じはずなのに違っている。
まぁ~学校は特別な場所なので、卒業した途端に
別物として認識されるんだと思った。
また、十数年経って、田舎の思い出の場所を訪れた時
場所は合っているのに、目的のものが探せない。
あったはずのものが見当たらない。
過去に住んでいた場所から、よそ者と認識された感じで
ショックだった。
思い出の場所は、思う人全てに優しいわけじゃないって
そんな事が頭をよぎりました。