ミイ子「昨日さ、また渚が私の残業手伝ってくれたんだよ〜!なんか、何も言ってないのに『ミイ子、今日はちょっと無理そうかなって思って』って…すごくない?」
マリカ「もはやエスパー。ミイ子がため息ついた回数で心の限界を測ってる説あるね。」
ミイ子「まじでそれ。しかも手伝いながら、『無理しないでいいんだよ』とか言ってくれるのよ…。まさに仏。」
マリカ「渚の共感力はすごいけど、そんな人ほど、自分のことは後回しになりがちなのよ。」
ミイ子「うん…それちょっと思ってた。嬉しいけど、ちょっと心配になるときあるんだよね。渚、たまにすごい疲れた顔してるもん。」
マリカ「共感はギフトだけど、説明書なしで使うとバッテリー切れになる。特に渚みたいにソマティック・エンパシーの傾向がある人はね。」
ミイ子「それ、なんかすごそうな名前だけど、どういう意味?」
マリカ「身体的共感。他人の感情や感覚まで自分の身体的感覚として感じる能力よ。相手の姿勢、表情、呼吸まで、自分の体でコピーしちゃうこともある。神経系が他人のチャンネルにチューニングされるの。」
ミイ子「え、じゃあ私が疲れてたら、渚まで一緒にしんどくなるってこと?」
マリカ「そう。しかも無意識だから、本人は“何でこんなに疲れてるのか分からない”ってなる。共感が過ぎると、他人の感情まで持ち帰っちゃうの。」
ミイ子「あああ、それ言ってた!『最近、何もしてないのにどっと疲れる』って。めっちゃ当てはまってる!」
マリカ「それ、他人の感情お持ち帰りセットね。」
ミイ子「いやセットいらん。でもさ、どうしたら渚みたいな人って、ちゃんと自分を守れるの?」
マリカ「まずは、自分の体に戻る練習。相手に引っ張られてるときって、呼吸が浅くなってたり、姿勢も崩れてたりするのよ。」
ミイ子「あー、それ私もあるかも。人と話してるとき、相手と同じ顔してたり…。」
マリカ「それこそ共感のミラーリング現象。意識的に自分の姿勢に戻ったり、呼吸を整えたりするだけで、他人の感情との境界線を引けるようになるわ。」
ミイ子「へえ〜、それなら私でもできそう!」
マリカ「あと、気をつけてほしいのは、“相手を助ける=その人の感情を丸ごと感じること”じゃないってこと。」
ミイ子「あ、それ響く…。私、ちょっとそう思ってたかも。共感するなら、一緒に落ち込まなきゃいけないって。」
マリカ「それ、優しさの罠よ。共感は理解であって、同化じゃない。自分の土地に足をつけたまま、手を差し伸べることもできる。」
ミイ子「めっちゃ詩的な正論。」
マリカ「詩は真実を柔らかく包む毛布だから。」
ミイ子「もうそれもTシャツにしよう。」
マリカ「Tシャツ屋さん始められそうね。」
ミイ子「とにかく、渚にも教えてあげたいなあ。『共感しすぎないことも、優しさだよ』って。」
マリカ「それ、渚だけじゃなくて、誰にとっても必要な知恵かもね。」
ミイ子「私も、自分の“感じる力”がちょっとでも誰かの助けになったら嬉しいなあ。」
マリカ「うん、それで十分。誰かの荷物を背負わなくても、隣を歩くことはできるから。」
私たちの共感は、ただの気持ちではなく、体や神経レベルでも起こっています。
相手の感情に寄り添うことは大切ですが、無意識のうちにその感情を「自分のもの」として抱え込んでしまうと、心も体も疲れてしまいます。
でも大丈夫。まずは、浅くなった呼吸や緊張した肩に気づくことから始めてみましょう。
そして、相手の気持ちを真似しすぎていないか、自分の感覚に立ち戻れているかを、そっと観察してみてください。
他人の気持ちを大切にしながらも、自分自身とつながっていること、それが、共感と健やかさを両立するカギです。
