折顔の武器 伏羲琴
すごーく気になって
いろいろ調べるうちに深みに嵌り
いつものように脇道にそれました。
中国文化の難しい部分は分からない箇所を調べると
奥行きが思った以上にあることに気が付いて
本筋からだいぶ乖離しているところです。
さて、伏羲琴。
古琴という楽器の型式の一つで、
伏羲式の古琴、すなわち伏羲琴と呼ばれています。
神話の世界まで話は遡り
夏の時代の神、伏羲に由来します。
桐の枝にとまっていた鳳凰をモデルに伏羲が作った楽器が伏羲琴です。
(伏羲琴の細かい来歴は長くなるので割愛します(笑))
様々な型式がある古琴のなかでも
音色が良く、人気は現在まで至ります。
そして、現存する伏羲琴のなかで
最高峰とされているのが「九霄環佩」という名前がつけられた古琴になります。
九は数字の中で最上とされていて、九霄は九重天、神様たちの世界を表します。
環佩は丸い珠がついた腰飾りを指し、歩くと鈴のような音がなります。
天女様がいつも身に着けている腰飾りから聞こえる鈴の音のように
天から聞こえるような清らかで美しい音色の古琴という意味になります
そして、もっとも古いとされている
古琴は4本あり
うち3本は中国故宮博物館、中国国立博物館、遼寧省博物館に国宝として保存、
残り1本は愛好家
何作如さんの手元にあります。
九霄環佩にはこんなエピソードがあります。
何さんはこの古琴を手に入れた際にどんな音色がするのだろうと
全国の有名演奏家を招き試し弾きをさせたところ、
音質や音色に美しさが欠け演奏には向いていない、
収蔵品として保管するしかないと評されました。
しかし、何さんは諦めず演奏に叶う相手を見つけるため
演奏家を探し続け、ついに中央音楽学院の古琴教授、古琴大師の李祥霆先生に行きついたのでした。
李祥霆先生の手の中で九霄環佩は生き返ったかのように奏でられ、
それは艶やかで温かく調和のとれた正に天籟の音色だったようです。
その4本の中で最上品と言われるのが故宮博物院の収蔵のもので、
去る2023年4月7日に広州市の松園で習近平国家主席がフランスのマクロン大統領を非公式に招待した際に
李祥霆先生の娘であり演奏家の李蓬蓬先生が演奏しました。
『李蓬蓬先生は10歳の頃より父の李祥霆に師事している著名な古琴演奏家です。
「現存している20張の唐琴(唐時代の古琴)のうち、12張を父は演奏したことがあり、
その中で九霄環佩の音が一番素晴らしく、演奏できる保存状態も最も良いと聞きました。」
「演奏に万全を期すため、演奏の数日前から準備をはじめ、
古琴の音色がうまく共鳴できるよう充分に振動を与え正しい手順で弾きました。
この琴を手に入れたばかりの頃の音色は今ほどではなく、日ごとに良くなりました。」』
(来源:央视新闻)
李さんの演奏している九霄環佩は1267年の歴史があり、
持ち主もかの玄宗皇帝に蘇軾と凄い歴史があります。
故宮博物院に保存されている九霄環佩は
時価総額なんと4億元、日本円レートが1元=15円ですので
600億ほどになります。
世界一高い楽器みたいです。うわあー。
蔼蔼春风细,朗朗环佩音。垂帘新燕语,沧海老龙吟。”落款是“苏轼记”
と彫刻されており、
超個人的意訳になりますが「草木が生い茂る春の風は軽やかで、環佩の清らかな音は澄んではっきりと聞こえる。
春に幕のように群れをなし飛来した燕は鳴き、古の龍は目覚め大海に鳴き声が低く響く。」
この詩の意味するところは
「ひとたび音を奏でれば環佩の音のようにどんな者でも目覚めさせる。」ですが
宋時代に生きた蘇軾は生涯で二度左遷を味わい、批判者扱いを受けていました。
自らの心境を言葉に出して言える環境に長く居なかったため
彼の詩の作風には、苦境のなかでも信念に基づいて懸命に生きようとする彼の強い意志を表現しているものが多いです。
音色が美しいということを現していると同時に
己の信じる思想はきっと世の中を正しくできる、という意味も含んでいるように感じます。
彫刻も達筆でかっこいいのは当たり前だけど、
思うようにいかない時代に生きながら己の心境をここまで詩として言葉巧みに完成させて、
かつ当時も名品として名高かったであろう九霄環佩に彫り込むとか最高すぎませんかっ!
調べるてみると演奏を聴いてめちゃくちゃ楽しめたので
以下、李蓬蓬先生と、李祥霆先生の演奏動画が見れる
リンク貼り付けておきます。
九霄环佩!1267岁的古琴,音色太美了 (baidu.com)
伏羲琴、折顔が持つにふさわしい楽器でした。
たぶん九霄環佩持っていたんじゃないかな(笑)
完。


