2019年の台湾映画。元々は2017年発表のゲームだそう。
この白色テロを題材にしたゲーム『返校 -Detention-』の世界的大ヒットによって、
今回の映画化も大ヒット。2020年にはネットドラマ化もされている。
と、まあそんなことを実は何も知らずに劇場に入って度肝を抜かれたクチだけど、
何だかエドワード・ヤンの「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」を思わせる清楚な雰囲気の始まりに耽っていたら、
あれよあれよとホラーの世界に引き込まれてしまった!しかもファンタジーでロマンスだ。
あっという間に引き込まれる要素として、映画って何より美術だったりするけど…これがもう本当に素晴らしい。
プロデューサーや監督のインタビューをあちこちで見たけれど、
ゲームからスタートしているからこそ敢えてこのゲームの持つ要素を一旦解体して再構築させたとのこと。
キーワードが人間の持つ「恐怖」ということらしいけど、恐らくこの恐怖を感じる登場人物個々を
丁寧に描いているからこそ美術が嘘くさいケレンにならない。
賛辞として受け取ってほしいけど、心情の機微を描くということでは、そらぁやはり金字塔でもある「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」だったり、「非情城市」だったり台湾映画の受け継ぐ系譜というか財産だと思うわけでね。
そこをしっかり掘り下げ丁寧に描写することで、現代の日本人が詳しいとは云えない白色テロという政治の恐怖についても、
臨場感を感じることができるわけだ。しっかりとその辺を堪能できるということが凄すぎるわけでね!
とにかくこんな凄いエンターテイメント映画が台湾からも産まれているという事。
人間を一人一人丁寧に描けば、観に来た人一人一人にしっかり刻まれる…
本当にそれを強く感じた一本。
さて小耳に挟んだ話。
お隣韓国も映画産業では日本の遥か先を疾走するわけだけど、
国からの助成の手法がというかコンセプトが羨ましい。
多様な作品を援助するという事で、
「大衆が理解しがたい映画」だったり、「商業映画の外で文化的・社会的・政治的イシューを扱う映画」という作品にこそ
助成の手を向けるというのらしい。