今年3月の公開時に見逃していたインド人監督の日本映画。
色んな映画祭で戴冠して、中でも一度舞台で共演しただけなのに可愛い後輩と言いたくなる、謎の男を演じた間瀬英正が大阪アジアン映画祭の最優秀男優賞を獲得したので、これでやっと念願が叶って見ることができた。物語の体幹となる寓話的な役どころを飄々と不思議な空気感で演じ切って、間瀬君の受賞になん度もうなづきながらスクリーンに見入った。
今寓話と書いたが、正にインド出身の監督が日本の戦争体験をファンタジーに描く事で説教の様な押し付けがましさがなくて、実に魅力的な作品になっている。特に死んだ祖父が内地の故郷の山の中に三八式歩兵銃を隠し埋めていたと言う、ちょっとありえないかもしれないエピソードこそが間瀬君演じる逆向きに歩く男と対になってファンタジーで、143分の長尺の作品をとっつき易くしてくれている。俳優陣の演技にしてもそう言う演出が施されているのだろう。それとは逆に音楽が、祖父の死と遺したモノや父子家庭の生活のやり場の無さなど、心の奥の叫びの様なものを感じさせて重く響く。
アフタートークで監督ご自身が「何日かは心の中に残ってもらえると嬉しい」とコメントされたが、心配はいらないでしょう。
戦争を題材にした映画なら「コントラ」というのがあったと、観た人には確かに刻まれたと思う。