アメリカンニューシネマの名作の雰囲気ぷんぷんの本作。
巷で関連記事を漁って見ると、
「犯罪の起きない犯罪映画で、どこにも旅立たないロードムービーで、ロマンスのない恋愛映画」
と評されているのを何点も見つける。
なるほど、色んなことが起きそうでいて結局起きない。
色々気づく。
子供を置き去りにしてんのに何の事故にも展開しない!
絶妙の場面でピストルを発砲してるのに、あえなく外れてる!
パトカーがサイレン鳴らして停止を求めたのに、警官世間話だけで去って行く!
ついに州境を出ようという料金所で25セント硬貨一つない為に引き返す羽目に!
あれれあれれとなるうちに、男女の逃避行は、手荒い結末を迎えて…。
分かるなぁ実に。どこにも気持ちのやり場のない退屈な田舎の毎日の時間と天気。
その照りつける太陽と焦げ付く地面にドラムソロが苛立つように喧しい。
劇中、主人公コージーの父親の叩く太鼓。
生活のためにミュージシャンを諦めて刑事になった男が、
ぞんざいに扱って失くした拳銃を見つけられず退屈しのぎに叩く音が、もう象徴的。
強盗をしようと入ったコンビニで「裸足のヤツには売れねえ」と機先を制せられるお粗末さ。
デビュー作にして絶品のネタ満載な。
1回目はそんな痛快さを楽しんで小屋を出るんだけど…、
2回目見ると!この何も起きないという展開こそにハラハラドキドキしてしまうという!
斯くなる上は3回目俺はどうなるのか、体験してみようと画策しておる所。
 
特集4本のうち3本でフェミニズムの作風が感じられるこの監督だけど、
それが全く押し付けがましくないところが素敵なんですね。
この「リバー・オブ・グラス」の結末もご注目されるといいと思うけど、
実に洗練されてる!
しかもそこから漸く、犯罪映画やロードムービーとしての出発があるというね!