昨晩このパンフを読みながら寝落ちしたからか、宇宙人に拉致されそうになる夢を見た。
夜に何やら察知するところあって玄関から外に出てみるとUFOが飛んでいるのである。想像力のかけらもないが正にアダムスキー型である。下方に光を発しているのだけどそれが緑とも橙ともつかず…不思議な光。未知なる恐怖というのが確かに自分の中に芽生えるのを感じるのだが、未知ゆえにどの程度の恐怖を感じればいいのか見当がつかないという何とも奇妙な感覚。兎も角、家に入り鍵を掛けた。この鍵が半分グラグラと壊れていて何とも頼りない。ひとまず二階に上がったがヤツはすぐ音もなく侵入して階段を半分の重力で済む様なフワフワとした足取りで上がってきた。衣装も芸がないが「宇宙家族ロビンソン」の様な黒のVネックだ。地球人の様でいて決定的に何かが違うんだろうなという顔付きは、藤木直人さんに似ていた。現物を見た瞬間恐怖の程度が具体的になる。藤木直人さんを模したこの宇宙人に捕まったらもう2度とこの地に戻ってこれないな…。と思う間も無く既に目の前にいてこちらに手を伸ばしてきた。何故か側にあった壊れた窓枠でその手を払い落とそうとしたら、「あ」と意外そうな反応。万事休すと絞り出した声で呼んだのは妻の名前を三度だった。
そう、この三度呼んだ名前が妻だったというのがこの「最後にして最初の人類」という作品に大きく関係しているのだな、きっと。
作品には、旧ユーゴスラビアに残るスポメニックという戦争記念碑が登場し、原作となるオラフ・ステープルドンの同名SF小説がティルダ・スウィントンによって語られる。監督と音楽が北欧の作曲家ヨハン・ヨハンソンだ。
ヨハン・ヨハンソンの音楽には、以前何の前振りもなくバッタリと出会った。演出を受け持った小公演の客入れ音楽を探していて、TSUTAYAで手当たり次第に借りてきたものの中に「Dis」というアルバムがあった。水がじわじわと染み込んでくる様な曲調を実に気に入ったのだけど、その時の作品には少し合わなくて…それでもiTunesに入れてずっと聴いていた。映画「メッセージ」で異星人とのコミニュケーションが“心象の記号”で成り立っていく過程を印象的に描けていたのはヨハン・ヨハンソンの音楽に依るところが大きいと思う。
この未知とノスタルジーを同時に感じる奇妙な感触が、宇宙人に捉われそうになったとき妻の名前を必死で呼ぶ感覚に似ているのだろうか。それとスポメニックに合わさるヨハン・ヨハンソンの音楽。
このスポメニック群のかつて全体主義の政治体制で作られた手作り且つ奇妙で無機質な装いも、である。
この作品に翻って考えると、20億年後の確かに自分たちの末裔に違いない者たちに感じるノスタルジーと未来の未知なる環境とに自分がどんな関係性を感じるか…という事??なんだか死ぬ瞬間を迎えないとその答えも浮かんでこない気がして、それもまた常に抱える恐怖である様にも思える。

スポメニックはTBSの深夜番組「クレイジージャーニー」で写真家の佐藤健寿氏がレポートする回で度肝を抜かれた記憶があるのだけど…定かでないのが残念。