原作はケン・リュウの短編小説で、映画の通り日本を舞台にした作品。2012年に、「紙の動物園」でネビュラ賞ヒューゴー賞世界幻想文学大賞の三冠を達成した作家で、昨今話題の「三体」を英訳された方でもある。このケン・リュウ氏が今回エグゼクティブプロデューサーも務められてます。監督は石川慶さん、「愚行録」良かったですね。主演・芳根京子さん。この作品での活躍はもう八面六臂。内面的な重厚さに埋もれ過ぎず一歩踏み止まるエンターテイメント性を残した素敵な演技ですよ。最後の最後まで作品を背負い切った!
作品は前半と後半の二つの要素が絡み合ってます。人間の身体を生きていた時のまま保存出来る技術にまつわる話の前半と、それを元に不老不死を実現した後半ですね。この前半と後半が別々の監督が撮ったのかと思うほどテイストが違うんですね…何故か。良し悪しではなく好みの問題ですから、それで言うと俄然後半の面白さには声を大きくしたいですね。
不老不死と言うのは、ある時点で処置を受けてそこから老いが止まるわけですね。そこからずーっと年齢が変わらない。するとどうなるかと言うとその時点までの記憶や習得したものは蓄積されているんですが、その時点以降のモノは積み重なっていかないわけですね。時間を過ごし体験はあってもその人の中に、いわゆる“年の功”として…残っていかない!なるほど、不老不死のキモはここだったわけですよ。不老不死の処置を施してないノーマルな人と一緒に過ごしても経験値がどんどん違っていくわけですね。そうした年輪の部分で絶妙の味を出しておられるのが、小林薫さんと風吹ジュンさんですね。後半この3人の邂逅に息を呑んだ作品でした。そして最後に全てを背負う倍賞千恵子さん、刮目!