いやはや、夏真っ盛りの北海道、今年はコロナ渦で大通りビアガーデンや高校野球が中止になって、「つまんないから、沢登りにでも行こ♪」とイイ気になって沢で遊んでばかりいたら、気がつけば…恒例の大雪山縦走の季節がもう目の前までやって来ている事に少々焦りながら、慌てて歩荷訓練などやっている…「頑なに山頂を踏まない登山家」のもじょでござりまする。

しかし、昨年の大雪山縦走はアッサリと島旅に変更しちゃったりしたから、大雪山縦走は久し振りナノだ。
つか、あの島旅以来…デカザックなんて背負っていない。
ちゃんとした山行なんて、一昨年以来やってない。
そんな体力で、いきなりの大雪山縦走なんて、できっこない。
重量級デカザックに慣れる為に、何回か歩荷訓練をせねばなるまい。…と思って、先週「手稲山」北尾根に出陣したら、見事にヤラレて、取り付きの直登尾根(結構キツい)にコテンパンにされ、途中でココロも折れ、日没サスペンデッドも重なって、スキー場にすら辿り着けずにビバークを余儀無くされたノダ。
因みに、余りのヤラレように設営後3時間程気絶して、準備していった炭火BBQは半分も食べられずに、残してしまった。
「こんな事ではいかんっ。どげんかせんといかんっ!」という事で、沢登りに行きたい気持ちをグッと抑えて、今週も歩荷訓練に行く事にした。
それについては、少し距離を歩きたかったので、縦走が出来る低山を探した。
いつもの拙者ならば、迷わずに「空沼岳」に向かったのだろうが、4年程前に歩荷訓練に歩いた「札幌岳」への縦走路は、更に荒廃が進んでいるようで、この夏には道迷い遭難者を出したというではないか。
オフィシャルには、あの縦走路は通行止めという事になっているらしく、藪漕ぎやルーファイに慣れた者にしか許されていない厳しいルートなのだ(もうやりたくない)。
生憎…今回、拙者がやりたいのは歩荷訓練であって、藪漕ぎ訓練では無いので、潔く他の候補地を考えた。

そこで思い浮かんだのは、「塩谷丸山~遠藤山~於古発地山~小樽天狗山」だった。
ま、こうやって書くと長大な縦走路みたいだが、実際は標高700m以下で殆ど起伏の無いハイキングコースみたいなもので、全体の距離も10km程しか無い筈だ。
「塩丸~遠藤山(~穴滝」間は何年か前に歩いた事もあり、縦走路の具合も良く分かっている。
先週失敗したBBQのリベンジも成し遂げたい。
夕陽を眺めながら、ゴクゴクもしたい。
更に、新しく購入した長靴の実地試験もしたい。
夜景を眺めながら、ゴクゴクもしたい。

宴の買い物を済ませ、久し振りの汽車で小樽へ。
1455時の「倶知安行き」に乗り換え、一つ目の停車駅「塩谷」で下車。
この駅に来るのも久し振りだ。
「塩谷丸山」に最後に来たのは、天幕泊デビュー戦のK隊員に付き合って、山頂での居酒屋メニュー山めし宴会だった筈だ(何しとんねん?)。
踏切を渡った所にあった目印になるガスタンクが無くなっている。
坂道を上っていくと、高速道路も走っている。
すっかり様変わりしていて、記憶の中の面影は消え失せていた。
…ので、親切な案内標識に従って、入林ポストのある登山口へ。
さっき覗いた駐車場には、デカいランクルと軽自動車の二台が停まっていたから、少なくとも…まだ2パーティーが入山中らしい。

入山して、いきなり直登尾根に乗せられて汗が噴き出す。
これは、もしかしたら…伐採用に開削したブル道かも知れない。尾根の両側は見事なカラマツの二次林になっているし、嘗て索道が尾根上に付けられていた可能性もある。
そう思わせるぐらいに、「塩谷丸山」という初心者向けの山には似つかわしく無いぐらいの厳しい急登だ。
あ、急登と言えば…因みに、C-uteでは「岡井千聖」推しでした。
いやいや…いきなりハロプロ(アイドル)ネタを絡ませてしまいましたが、最近のハロプロは大変面白く、楽曲派の拙者としても…(何のハナシをしとんねんっ)

急登に喘ぎながら…あれ?喘いでない。
確かにキツいが、呼吸が苦しくなったり、体の芯が熱くなる感じはしない。
夜勤明けで一睡もしてないのに、だ。
やっぱり、先週ヤラレたのは…気温と湿度だったのだ。
ザックに付けている温度計は、15℃程で樹林帯だから風は抜けないものの、肌感覚としては森のヒンヤリとした空気を感じられる。
先週の北尾根は夕方5時の時点で麓の気温は25℃を下回っていなかったもんな。
やっぱり、気温と消耗度は密接にリンクしておるのだ。特に汗っかきな拙者には、20℃を超える登坂は単なる拷問になる。

やがて、登山道は電光を切り始め、あっけなく台地状の笹原に出た。恐らく伐採後の植林放棄地なのだろう。
此処も嘗てあった反射板が撤去されており、眼下に小樽の海と、その向こうの増毛山塊が望めた。
駐車場の軽自動車の持ち主と思われる…最後の登山者の小太りなオバサンとスライドすると、「塩谷丸山」は拙者の貸し切りとなった。
平日を歩荷訓練に選んだのも、こうした…独り占めを狙ったからだ。
笹原の刈り分け道を30分掛からずに、懐かしい山頂に到着。
誰も居ない。
風も無く、 暫く降雨も無く虫も殆ど居ない。
一服して、濡れたTシャツを着替えてから天幕の設営に。
前回は風が強かった為に、岩峰の陰の風の当たらぬ登山道に設営したが、今日は見晴らしの良い岩棚の上に設営する。
暗くなる前に炭を熾しておく。
炭火が安定してから「生鰹」を刺身に引いておく。
今回炭火で炙るのは…「灯台ツブ」「宗八(鰈の干物ね)」「ソーセージ」「丸ホルモン(塩)」「万願寺唐辛子(京野菜ね)」「とうきび」「プチトマト」などである。
炭を熾すだけで、何にも下拵えしなくと良いから楽ナノだ。
「宗八」を焼き始めたトコロ、やけに宗八の身がピンク色だな…と思って振り返ると、西の空が信じられないような色に焼けていた。
夕焼けの色が宗八に映り込んでいたノダ。
慌てて網に載せていた宗八やホルモンを炭火から下ろして夕焼けを眺める。
刻一刻と色を変えて行く夕焼けから目を離す事が出来ずに、暫く歓声を挙げながら夕焼けショーを楽しんだ。

昨夜の一人宴は、満腹と共に襲ってきた睡魔に勝てずに、21時前にお開きになってしまった。
陽が沈むと北寄りの風が出始めて、フリースを羽織る程にまで気温は下がった。
炭火の暖かさが有り難いぐらいだった。
途中、海の方から大砲を撃ってるみたいな音がしたので、山頂まで見に行ってみると、どうやら…花火を打ち上げているようだった。
ん?確か…小樽の「潮祭」の花火は例年土日に打ち上げた筈。金曜日に打ち上げるというのは、コロナ対策で告知もせずにゲリラ的に打ち上げたものかも知れないな。
しかし、ちょうど花火が打ち上がってる辺りに広葉樹があり花火は見えず、音だけしか聞こえなかった。ので、ふてくされて寝た。

天幕に陽光が当たって天幕内が温められ、その暑さで目が覚めた。
「赤いきつね」の朝食を食べていると、長靴を履いたジイサマが上がってきて「へぇ~、昨夜はココで泊まったんだぁ(、と感心(呆れとったん?)していた。
天幕を撤収し、縦走路を「天狗山」方面に向かう。
日当たりの良いコルだからか、登山道は結構な藪被りだった。
ちゅうか、これは…殆ど最近は手入れがされていない状態のようだ。
何ヶ所もルートを倒木が塞いでいるが、最近倒れたもののようには見えない。
少なくとも、ここ…2~3年はヒトの手は入っていないようだった。
なだらかな稜線上の素敵な白樺道も、倒木と藪被りで見る影も無く、登山道にも笹が侵食し始めている。
見晴らしの無い「遠藤山」で、小休止していると…「ヤッホー」と声がして白髭が立派なジイサマが現れた。羆除けに声を出していたらしいが、縦走路にも羆の痕跡は全く無く、蝦夷鹿の足跡すら見当たらなかった。
「手稲山」辺りとは違って、野生動物の密度は低いようだ。
山と言っても、小樽の市街地が近いし、何より…この辺りには、自然林が殆ど無く、カラマツの二次林が山を覆い尽くしていた。
「遠藤山」の隣には「毛無山」と呼ばれる…いかにも「山全部伐採してやりましたぜぃ」的な名前の山もあるし、明治の開拓期に小樽港の開発に多量の造材が使われた事も容易に想像出来る。
いや、この登山道だって、幅員を見れば如何にもな作業道跡だ。
下界から見上げれば緑豊かな山も、こうして実際に歩いてみれば実状は容易く把握出来る。

起伏の少ない退屈な樹林帯縦走路でも、時折出現するキノコ類に拙者のココロも沸き立つ。
既に腐った老菌が多いみたいだが、時々イグチ系の大物が見つかるとテンションが上がった。
昨年大豊作だったタマゴダケも、「塩谷丸山」の直登尾根で一つ見かけただけだった(虫食い)。
今年は降雨が少なかったので、夏キノコは不作だった。秋キノコも余り期待は出来無いが、この山域はカラマツが多いから、ラクヨウ狙いで一度様子を見に来てもイイかも知れない。

地形図には記載が無い「大曲山」の標識を超えたら、見晴らしの悪い展望台を過ぎ、木立の間からスキー場の照明が見えたら、もう「天狗山」である。
ゲレンデを下って行くとレストハウスがあり、自販機でコーラを買って日陰を探して、一服する。
時刻は丁度1200時、4時間弱の縦走は歩荷訓練には少々物足りないが、このコースなら日帰りで十分かも知れない。
展望台のような場所には、観光客もチラホラ居たが、密というほどでは無い。
久し振りに「天狗山」からの展望を見た。
近くにある幟には「北海道三大夜景」と染め抜かれている。
札幌・函館・小樽という事かな。
いや、確かに…天狗山からの小樽の夜景はキレイなのだ。
どれぐらいキレイかと言えば、人見知りの「もじょ」が付き合う前の知り合って半月の彼女の手を、そっと握ってしまうぐらいの美しさナノだ(どゆ意味?)。
ま、そんな事はどーでもイイ。
再びザックを背負うと、スキー場ゲレンデの登山道から下山する。あと、30分も歩けば着くだろう。
夏草が繁茂する坂道を夏色の海を目指して歩き始めた。

おわり。

【写真1】余市の海を見下ろす岩棚に幕営する
【写真2】色んなものを炙ります
【写真3】積丹方面にスゴい夕焼けが広がった



いやはや、ご無沙汰いたしておりました。
ご無沙汰し過ぎたかも知れませんっ。
いやあ…いかし、雪山の次がイキナリ沢登りの山行紀という…「どんだけ両極端なんやね~んっ」という皆様のツッコミが聞こえてきそうな、「頑なに登山道を歩かない登山家」のもじょでござりまする。
しかし、雪山シーズン終了後は毎年恒例の多忙な山菜シーズンがあり、沢への出陣も…実は既に三回目だったりするのだが、特筆すべき事件も無く(いや、ホントは数々の悲しい事件もあったのだが)、「敢えて日記に書くほどでは無いんちゃう?」という逡巡もあり、今日に至った次第であります。

さて、今回は…お馴染み「手稲山探索シリーズ」最新版をお送りします。
しかし、ホントは…当初、探索する積もりなんてサラサラ無かったんですョ。
ホントならば…「嗚呼、今日も暑くなりそうだから、シャワークライミングでもして、のんびり釣りなんかもしながら一日中沢に居ようかな~ルンルン♪」という心積もりでお馴染み「発寒川」に向かったワケですョ。
装具を整え、いつもの砂防ダム上流で入渓して、のんびりキノコ探索なんかしながら、「送電線広場」(積雪期には迷い沢・峰越山への渡渉部になる)手前のミニゴルジュ滝を盛大に水しぶきを浴びて奇声を上げて登って、「二股」(月見の沢合流部)の大岩の上で昼ご飯を食べていたのです。
ここまで2時間、久し振りなので結構…楽しめたが、「発寒川」の本当に楽しい核心部は、これから始まる連続滝地帯やゴルジュ帯にあるノダ。
少しばかり緊張しながら、稲荷寿司とニヌキ(茹で卵の事ね)なんか頬張って、食後の一服をしながら、ふと思い出したワケだ。
この春先にヤチブキ(エゾノリュウキンカね)採集に訪れた「月見の沢」の事を。
「月見の沢」(※通称)というのは、「手稲山」の「平和の滝コース」沿いにある「布敷の滝」がある枝沢と言えば分かりやすいでしょう。
大して水量は多く無い小さな沢だが、その上流部にはヤチブキの群生があるという事で、この春に採集(探索)に来たノダ。
ヤチブキというのは、エゾノリュウキンカという名前で親しまれる黄色い美しい花を咲かせる植物だが、「空芯菜」みたく茎が中空になっていて、油炒めやキンピラにすると大変美味なんですな、これが。
羆ちゃんも大好物で、春先の柔らかい茎を食べに来るし、蝦夷鹿ちゃんも葉っぱをムシャムシャしに来ます。

その時の「月見の沢」探索が本当に楽しかったノダ。
楽し過ぎて内緒にしときたくなったので、日記は途中まで書いて止めた。
そもそも、個人的な探索や山菜採りを他人が読んで楽しいもんなのか?という基本的な疑問はあるものの、未知なる領域に足を踏み入れる緊張感や新鮮さは、永年山をやってる拙者には、なかなか無い魅力なので、今回は日記にしてみた。

休憩後、「発寒川」本流から離れ、一般登山道に合流した。
沢沿いの木製ベンチや登山道にはアベックの姿。
「そんなトコまで入って大丈夫なの?水染みてこないの?」 とは、買ったばかりの登山靴で沢に入って「ゴアテックス凄~い的」な笑顔で戯れてるカップルの女子。
その横から、膝まで水に没しながら「月見の沢」に入渓する…ワイルド極まりない変態。
一般登山道は渓から離れて、左手の尾根に誘導される。
嘗ては、「月見の沢」沿いに夏道が切られていたが、一箇所だけ難しい岩溝があり、簡易橋も掛けられていたようだが、毎年の春先の雪溶け増水で流されるので、巻き道(迂回路)が新たに作られたらしい(冬は雪崩の巣と化す)。
「月見の沢」は100m程で再び一般登山道と再合流するのだが、途中に3m程の小滝(直瀑)が存在する。
水量が少ないので、水の流れ落ちる岩にはビッシリ苔が生えていて、手掛かりが見つからない。
何回かチャレンジしたが、結局…流れを避けて、灌木に捕まって滝横を突破した。
渡渉部の橋から一旦登山道に乗る。
「布敷の滝」は、登山者の目もあるので登山道を使って越える。
滝自体は…所謂「ナメ滝」で傾斜した岩盤上を水流があるから、上手くルートさえ見つければ登れそうだが、やはり苔がビッシリついていて、一筋縄ではいかなさそうだ。
「布敷の滝」の落ち口から、再び入渓。
すると「布敷の滝」の半分ぐらいのスケールのナメ滝が、その上に出現した。
苔が付いているが、手掛かりは足りそうなので挑戦してみる。うぎぎぎ…水が冷たいっ。
流石に、枝沢の水は本流とは違って、ギンギンに冷えている。しぶきを浴びると痺れてくるようだ。
でも、楽し~♪
ふと見ると、右手5mぐらいのところに登山道が走っていた。登っているところを、知らない誰かに見られていたら、恥ずかしいノダ。
いい歳こいたオッサンが、満面の笑みを浮かべ、あまつさえ奇声を発し、滝のしぶきを浴びながら遊んでいるノダ。
「沢登り」というスポーツを御存知の方ならまだしも、何も知らないヒトが見たら…確実に「イッちゃってるヤバい奴」だと思われないだろうか。
ま、確かに…沢登りには一種の突き抜けた感があるのは確かナノだ。
オトナになってから、こんなにドキドキしたりワクワクする事があるとは思わなかったもんな~。

さて、登山道から離れて本格的に遡行を始める。
しかし、藪の被り方が酷くて、繁茂したシダや蕗で足元が全く見えないノダ。
春先に長靴を履いて来た時の方が、むしろ歩き易かったかも知れない。
100m程進んだところで、渓は二つに別れる。
前回来た時に確認したが、右股が本流である。
急傾斜の段丘を詰めると、再び分岐。こちらも右股が本流だが、ヤチブキの大群生があるのは左股だ。
右股に進路をとるが、暫くすると…結構な水量があった筈だが突然水が消えてしまった。
この辺りは、崖垂の下部にあたるので崩落した岩屑が積もっていて伏流する隙間が沢山ある可能性が高い。
藪漕ぎ覚悟で左手の段丘に乗ったら、鹿道があったので、それを辿ると再び見覚えある流れを見つけた。
これは、復活した本流だろうか?
それとも、先ほどの左股か?
この辺りは傾斜がゆるく、地形が複雑で良く分からない場所だ。
この冬にでも、シッカリ地形観察しに来てみよう。

渓は、だんだん傾斜をユルくして、ほぼ平坦になり、小さな沢も踝(くるぶし)ほどの深さで蛇行し始めた。
空がポッカリ開いていて、一気に明るくなった。
ここは、春先に来た時も…「なんて素敵な場所なんだろう」と感心したが、倒木も沢山あるから秋のキノコ探索にも一度来てみようと思う。
沢は大きな段丘に突き当たって、左に曲がって濃い根曲がり竹の藪の中に吸い込まれている。
うむ…、この気温の中、笹漕ぎはキツいな~
一旦休憩して、進路を検討しよう。
曲折部に戻ると、岩の隙間から伏流水が湧き出ていた。
その水で顔を洗って、喉を潤す。
見上げる段丘は、そのまま「西峰」基部に向かっているように思われた。
良く踏まれた鹿道もある。
ここは、鹿ちゃんを見習って段丘に取り付いてみよう。
急傾斜に取り付き上り詰めると、唐突に流れが復活したが、どうやは…コイツは、根曲がり竹の中に延びていた流れの続きのようだ。
真新しい鹿の足跡が沢沿いに続いていたので、それを辿りながら進む。
傾斜は更に増していき、岩がゴロゴロし始めた。
蕗やシダで足元が見えず、岩を踏み外すと転倒の恐れもある。水流の中に足場を探し、慎重に上がる。
ふと周りを見渡すと、一面のヤチブキ畑だった。
この時期、ヤチブキは花も落とし枯れ始めているが、何百株というヤチブキが傾斜地に広がっている。
これは、春先の花の時期に来たら、荘厳な眺めになるに違いない。

流れは、どんどん細くなり源頭部が近い事を予感させた。
藪は更に濃くなり、傾斜も急だ。
草いきれに、むせかえるようで…汗が滴る。
突然、目の前に4tトラックぐらいある…馬鹿デカい巨岩が、沢形を埋め尽くすように立ち塞がっていた。
うむむむ…コイツは困った。
右も左も藪が濃過ぎて迂回路も見えない。
乗り越えるにも、岩は巨大過ぎる。
か細い水流は巨岩の脇をすり抜けて、向こう側に続いているようだが、先に進む術か無い。
100tを超えるような巨岩は、嘗て「手稲山」山頂部が山体崩壊した時に落ちてきたものかも知れない。
突破を諦めかけた時、左手の岩陰に潜り抜けられそうな40cm程の岩溝を見つけた。
ザックを下ろして、横這いにすり抜けると、なんとか巨岩の向こう側に出られた。
だが、そこに水流の続きは見当たらなかった。
この巨岩の下から湧き出しているのかも知れない。
場所的には、この傾斜具合から想像するに「西峰」の基部から、右肩のコルへ向かう沢形に居る筈だ。
流石に、「西峰」へ詰める元気は残って無いので、冬に再訪した時の為に立木にピンテ(ルートマーカー)を打っておく。

さて、これから下降だが…来たルートを戻っても面白く無い。この高度のままトラバース気味に東に向かえば、ガレ場辺りに出られないだろうか?と考えた。
しかし、それが間違いの元だった。
今は、藪が生い茂る真夏だ。何処でも自由に歩ける積雪期では無い。
いくら藪漕ぎに慣れていても、北海道の藪をナメてはいけない。
日当たりの良い南斜面の藪漕ぎトラバースは、障害物競争のようでマトモに二足歩行出来るような場所は無かった。
複雑に絡み合う蔦類に手足を絡めとられ、 巨大な倒木を乗り越えたり潜ったり、根曲がり竹密集地帯に行く手を遮られたり…
見通しの利かない藪山では、地形的なルーファイよりも、藪の薄い場所を攻撃して行くしか術が無い。
だが、そんな場所が上手く繋がっているワケも無く、行程の殆どは藪との接近戦(肉弾戦とも云う)だ。
灌木の隙間から、「手稲山」山頂のアンテナが見えた。
位置関係から言えば、ガレ場までは…このまま、400m以上進まねばならぬ。
いやいや、無理無理。
流石に、ココロ折れたので、「月見の沢」に復帰する事にした。
沢形を頼りに30分程下降すると、先ほどの伏流水の湧き出し口にドンピシャでたどり着いた。
我ながら、この方向感覚と距離感の鋭さに驚嘆する(偶然じゃね?)。
「月見の沢」本流から登山道に戻り、退屈なアプローチ林道を歩きながら…「朝出発した時は、沢登りだと思っていたら、結果的に藪漕ぎ大会になってしまったのは、何故なんだろう?」と自問し続けた。
知り合いの沢屋の〇〇隊員は源頭マニアで、山頂では無く源頭を目標に遡るというが、拙者に関しては…その源頭にすら感慨は無く、地形観察が一番楽しいと来ている。
拙者は、一体全体…何がしたいんだろうか?と考えてみる。
きっと拙者は、誰も知らない場所や山の姿を見たくて、こんな変態チックな山行を繰り返しているノダ。
そういう意味では、今日の探索も満足行くものだったに違いない…と、そう思う事にしよう。

おわり。

【写真1】藪を漕いで辿り着いた先には楽園があった
【写真2】伏流水の湧水、しゃっこくて美味い
【写真3】春先に訪れた時のヤチブキ群生地花畑



いやはや、ここ2~3週間ばかし山をサボっていたら、スッカリ藪が出てしまい、図らずもシーズン初の藪漕ぎを楽しませていただいた…「頑なに登山道を歩かない登山家」のもじょで御座りまする。
ま、この時期はダニも居ないし、藪も大して濃いワケじゃ無いから、大仰に「藪漕ぎ」と声を大にして言うほどでは無いノダ。

本当は、定山渓に…来たるべき山菜シーズン突入の為に残雪の様子を偵察しに行きたかったのだが、起きたら何だか肌寒いし、天気予報は一時的な雨を告げていたので、面倒くさくなって、今シーズン最後の「ネオパラ尾根」に行ってみる事にした(だと思った)。

いつもの…取り付きに使っている造成地に上がる林道には、全く雪は残っていなかった。
そりゃあ、そうだわな。
3週間もサボってたら、山の様子もガラッと変わって当たり前だ。
んじゃ、大好きな春山をサボって、オマエは一体何をしていたノダ?と問われれば、「寝てました」と答える以外に無い。
長く厳しい寒さを乗り切った疲れなのか、無為徒労なラッセルプレイの疲れなのか、単なるクラシックの飲み過ぎなのか分からんが、やたらと眠くって困ってしまったノダ。
夜勤明けに、そのまんま職場近くにある岩盤浴に行って、調子こいて2L近くも汗をかいて、整っていたりしたのが原因かも知れないが、コロナ騒動のおかげで大好きな食べ放題にも行けず(札幌のバイキングは全滅)、今の楽しみは岩盤浴ぐらいしか無いノダ(山に行けョ)。
沢山発汗して代謝率を上げる事は、即ち免疫力UPにも繋がる筈だし、尚且つ…今、外出自粛要請の為に、いつもは混んでる岩盤浴もガラガラに空いていて、独り占めナノだっ。

とりあえず、いつもの造成地に上がって、一服しながら…攻めるルートを考えてみる。
今シーズン開拓した幾つかの候補の中から、地形的な繋がりをアタマの中でイメージし、登行ルートを検討する。
残雪を繋いでルーファイしながら登行するのも、面倒くさいからな~。
かと言って、足元は藪漕ぎを想定していないスノーブーツだ。高度を上げれば、残雪は増えるだろうが…
とりあえず、基本方針として残雪を繋いで進んでみるかぁ。
あとは、臨機応変に…だな。

造成地に隣接する灌木の林には、所々に残雪があった。
良く見ると、長靴らしき…一人分の古いトレースがある。
うむむむ…こんなマニアックなバリエーション・ルートに取り付くなんて、なんて変態なんだろう。
暫くトレースを辿ってみるが、数十mでトレースは笹藪の中に消えていた。
狙っていた尾根筋には残雪は無く、沢形に降り立ったが、こちらも疎らにしか雪は残っていなかった。
ふと足元を見ると、蝦夷鹿の足跡が大量にあった。
雪が消えたばかりの柔らかい地面に、大小の蹄の跡が無数にあった。
辺りの笹は、見事に食い荒らされていて、裸にされた灌木の姿もある。
今シーズンは、大量の足跡を見たが蝦夷鹿本人(?)には一度も出会っていなかった。
どうやら、「今シーズンは、奴(もじょ)はネオパラ近辺に出没してるらしいから、気をつけましょう」という連絡が蝦夷鹿達の間に交わされていたようだ。
歩き易い、踏み均された鹿道だと思った…尾根に向かうルートは、送電線保守用の作業道のようだった。鹿も作業道を利用しているノダ。
尾根に乗って、見晴らしの良い送電線鉄塔の下で、とりあえず…一服する。
雪が消えた尾根上は、灌木だらけだが、実は…かなりの確率で鹿道がある事が多い。
風抜けが良い故に、風化し硬くなった地面は、笹等の低層植物が根付きにくいのか、バリエーションで歩く場合は大変歩き易いノダ。
勿論、それは…蝦夷鹿にも当てはまるようで、手稲山北側の枝尾根なんかは、殆どの尾根に鹿道が付いている。

休憩後、尾根上の鹿道を利用して崖垂を目指す。
今シーズン何度となく歩いた尾根ルートだが、雪が消えると…ガラリと印象が変わってしまうものだ。
やがて、お気に入りのコル(鞍部)に差し掛かると、前方に気配を感じた。
姿は見えないが、何か居る。(ま、蝦夷鹿なんだろうけど…
)。刹那、鋭い警戒音の鳴き声が響き渡った。
近い…(60mぐらいかな?)。
ん?ちょうど、崖垂の下部あたりに居るようだ。
目を凝らすが、ちょっと遠すぎる。
せめて動いてくれたら、発見出来るのにぃ…
そこで、持っていた二本のストックを打ち鳴らすと、乾いた鋭い金属音が森に響いた。
すると、見上げた崖垂斜面を大きな蝦夷鹿が飛び跳ねるのが見えた。
彼は崖垂下を左手にトラバースするように逃げて行った。
デッカい雄鹿だったな~。
草しか食ってないのに、良くもまぁ、あんなにデカくなるもんだ。
そういえば、そろそろ…角の生え替わる時期だよな~、と思っていたら…巨大な鹿角が落ちているのを発見した。
おぉぉぉぉ…凄いっ、立派な角だ。
持ち上げてみると、ズシリと手応えがあり、角は四つに枝分かれしていた。
つまり、彼は4歳という事だな。
でも、「角の枝分かれの数で鹿の年齢が分かる」と言われるが、7つも8つも分かれている鹿角は見た事が無い。
あの体の大きさなら、15年以上の寿命がありそうなのに、そんな…高校野球の地区予選みたいな(トーナメント表も枝分かれしてるしょ?)角を持つ個体にはお目にかかった事は無い。
まさか、蝦夷鹿の寿命は…みんな、4~5年なのか?

山で鹿角を拾うのは、三度目になるだろうか…
なかなか、一般登山道を歩いていて鹿角を拾う事は無いだろう。
拙者も、山菜やキノコで山に入った時に偶然見つける事が多い。
それは、地表をサーチ(探索)しながら歩いているからで、山登りのように景色や山ガールのお尻を見ていたんじゃ、地表に落ちている…目立たない鹿角を見つける事は困難だろう。

拾った鹿角は、殆ど汚れていないので、この春になって落ちたものだろう。
まさか、さっき見た大きな蝦夷鹿が、飛び跳ねた拍子に落としたワケでは無いだろうが…
以前拾った鹿角は、部屋に飾ってあるが…最近では、帽子や濡れた手袋なんかを干したりする場所になっている。
しかし、本当は鹿角を加工して様々なモノを作ってみたいと思っているノダ。
でも、鹿角で作れるモノって、一体何があるのだろうか…
拙者が思い浮かぶのは、せいぜい…「ナイフの柄」や「刀架け」「アクセサリー」ぐらいだ。
NHK大河ドラマ「真田丸」の主人公、真田幸村は鎧兜に鹿角を付けていたが、生憎…兜は持ってないので、沢用のヘルメットに飾りで付けようかな~(重いわっ)。

拾った鹿角は、ザックの横のストラップで固定し外付けしておいた。
むひひひ♪…とニヤニヤしながら歩き始めて50m程すると、またまた…鹿角を発見した。
うむむむ…こんな偶然ってナカナカ無い事だぞぉ。
良く見れば、先程拾った鹿角と対になっている気がする。
形も線対象形(シンメトリー)になっている。
これは、やっぱり…同じ個体が落とした角なんじゃないか?
1セット揃って拾えるなんて、奇跡なんじゃないか。
いやあ、今日は…もうこれで充分満足だな~
もう「ネオパラ」上がんなくてもイイかな~、その辺でジンギスカン焼いてゴクゴクしちゃおうかな~(おいっ!)。

とりあえず、雪の消えた藪斜面を冬ルートをなぞる形で、灌木や藪に掴まりながら「ネオパラ尾根」に乗る為に攀じって行く。
しかし、良くもこんな場所をラッセルしながら登ってこられたなと思う。
一番傾斜がキツい場所を抜け、残雪が現れはじめた時、雪の上に羆の足跡を見つけた。
前掌幅10cm程のメスか若い雄だろう。
そうかそうか、このルートは蝦夷鹿だけで無く、羆ちゃんも使っておるのだな。
ふむふむ、拙者のルーファイ能力は、遂に…その域に達したと言う事だ。

「ネオパラ尾根」に乗るルートの合流点には、この冬…目印にピンテを打っておいた。
恐らく、今シーズン…「ネオパラ尾根」に来るのは最後になるだろうから、ピンテを回収しようとしたら。ピンテを結んだ枝は遥か手の届かない高さにあった。
小雪だなんだと言いながら、「手稲山」中腹でも最大で3m程の積雪量があったという事になる。

一服したあと、「ネオパラ尾根」を進むと、北側から登ってきたツボ足のトレースを見つけた。
下ったトレースは無いから、まだ上に居るのだろう。
ヒトには遭いたくないので、トレースから離れた広尾根の左寄りを進む。
緩傾斜地の…サッカー場ぐらいの大きな雪田を発見した。
なかなかに素敵な場所だ。ここにイグルーを建てて泊まると、札幌市内の夜景も良く見えてサイコーだろうな~
とりあえず、今は昼食の用意をせねばっ。
タレ漬けジンギスカンに、玉葱ともやしと饂飩を入れて、ぐつぐつハフハフする。
来る途中のマックスバリューで、栽培モノのギョウジャニンニクを発見し、つい…魔がさして買ってしまったので、それも追加する。
春山だから、ノンビリしようとしたが、気温はー5℃しか無く、オマケに下山途中には吹雪かれてしまったノダ。
いやはや…まだまだ、春は遠いんだな~

おわり。

【写真1】羆ちゃんの足跡発見♪
【写真2】札幌市内を臨む素敵な雪田
【写真3】一束198円もした栽培ギョウジャニンニク