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急激な加速に雪塵が舞った。
純白の大地を削りとった欠片が飛沫となり視界を覆う。
切り裂かれる無垢なる雪面。
後方に飛び去る銀色の大河。
頬にぶつかる凍てついた大気。
落下するしかない力学的無力感。
浮揚するかの如き刹那…制動が掛かり、やがて訪れる運命的な静止。
そして、静寂。
脱力し雪面に横臥する。
見上げた空には…ただ、怖くなるぐらいの紺碧が広がっていた。


ゲートを越えた所で「漁(いさり)林道 」の先行者のトレースを外れ、うっすらと踏み跡が残る尾根に取り付いた。
羆の木登りの爪跡の残るトドマツの大木が立ち並ぶ斜面を攀り、一気に高度を稼ぐ。
途端に汗が滲む。
降り注ぐ陽光は、真冬の弱々しい…それとは明らかに違っている。
春だ。春の光だ。
雪面に照り返す眩しさは、長い厳冬の終焉を予期させる鋭さをもって、裸眼を刺し貫いた。
やがて、木立の間から不凍湖が望まれ、山嶺の連なりが望見出来た。
碧空と白銀の峰々のコントラストが眩しかった。

思えば…久し振りの晴天だった。
2月の半ばに、「漁川」を挟んだ隣りの尾根にある「様茶平」に上がった時は、極寒(-14℃)と烈風(風速15m/s)で初めて雪山で低体温症になりかけたのに…この穏やかさは、何だ?
ザックにぶら下げた温度計は-4℃を指しているが、全く寒さは感じない。
今回同行した「SID隊員」(相方S隊員と混同するので…フルネーム)も、久し振りの青空にテンションが上がってるようだ。
何度か偶然…山や温泉で会ってはいたが(白雲、ニセコ、ニセカウ)、一緒に山に登るのは初めての「SID隊員」は、冬の間はパウダーを求めニセコ(BC)に通っていたらしいが、殆ど青空には無縁だったらしい。
相方「S隊員」とも古い友人で、尻ボ歴も長そうだ。ザックにブラブラさせてる尻ボは、ピンクだか紫だか分からないぐらい陽灼けして変色している。
もしかしたら、余りの熱い滑走の為…摩擦熱で溶けたのかも知れない。

尾根を詰め、稜線に上がると…「恵庭岳」の雄姿が現出した。
雪化粧したトンガリ頭を、碧空へ突き上げる姿は圧巻だ。
積雪期のメインルートである北尾根の様子が良く判る。
高所恐怖症ナノで…頂上ルンゼは行かなくて良いが、一度登ってみたいものだ。
アチラから、「オコタンペ山」を眺めると…どんな感じに見えるのだろう?
「恵庭岳」の左手には、「イッチャンコッペ」や「紋別岳」があり、振り返ると…「漁岳」の山塊が聳えていた。
登山口に停まっていた6台の車の人達は、全員「漁岳」へ向かったようだ。
「支笏湖」(ポロピナイ側)も良く見える。
「北海道で凍らないのは、支笏湖と洞爺湖だけなんだよ~」と、自慢気に相方「S隊員」が教えてくれる。
「んじゃ…北海道三大秘湖のあと二つは何処?」と湖博士に質問する。
「ええ…オコタンペと東雲湖(しののめこ)とぉ…何だっけ?」
「オンネトーじゃないの?」
「うーん、自慢しようと思って…覚えてたんだけどな~」
「忘れてるやんっ!!」

※正解は…「オンネトー湖」「東雲湖」「オコタンペ湖」です。

日当たりの良い稜線は、所々笹が露出している箇所があり、油断してると、笹藪と積雪層との隙間に空間が空いている…落とし穴にハマる。
最初の犠牲者は…「S隊員」だ。
先々週、小屋泊で行った「真簾沼」(空沼)で落とし穴(倒木地帯)に落ちた拙者を嘲笑ってくれたので、お返しに笑ってやる。
続いて、「SID隊員」もハマり、下山途中に拙者もハマった。
結局、仲良く全員が犠牲になった。
雪が緩み始めた春山の証拠だが…そろそろ、羆も動き始める時期ナノで、「うわっ!羆の冬籠もり穴かっ!?」と少々焦ったりするノダ。

稜線から左手を見下ろすと、昨年ルートを採った尾根が見える。
少し歩く距離は長いが、コチラの稜線ルートの方が歩き易く、見晴らしが抜群で気分が良い。
昨年も迂回した…地形図上の小ピークは、肩の部分をトラバースし迂回する事にする。
立木の生えていない不気味な斜面を横切る。
見上げた稜線には、巨大な雪庇が発達しており、嘗て雪庇崩落からの全層雪崩があった箇所かも知れない(雪崩で立木が薙ぎ倒された可能性あり、雪山では警戒すべき場所だ)。
これから…更に気温が高くなる春山時期は、危険なルートだ。
亀裂が入ってないか、キョロキョロしながら通過する。
しかし、雪庇の上の空の蒼さはどうだ!!!
青というより藍に近く、微妙に緑も混じっているカンジもする。空というより、海の底を覗き込んでる気分だ。
ついつい病気が出て…その藍色に惹かれ、先行する二人のトレースを外れ寄り道をして、なだらかな部分を直登して、小ピークに上がってみる。
疎らな立木の向こうに、目指す「オコタンペ山」が見えた。

此処で一旦、コル(鞍部)状の台地に下ろされる。此処は昨年のルートとの合流点でもある。
その先は、ダケカンバの疎林の広い尾根を詰める。
「オコタンペ山」の肩部分のテラスに上がると…結氷し真っ白になった「オコタンペ湖」が見下ろせた。
良く見ると…結氷した湖面に一本のトレースが続いている。
あとで知った事だが、前日…山ミクの「ダイゾー殿」が偵察に来て、付けたトレースだった。
「オコタンペ湖」へ向かう道々は、現在…法面工事中で、完全通行止め状態である故(日曜日は除く)、例年のように頻繁に人が入ってるワケでは無い模様だ。

テラスから「オコタンペ山」ピークに向かって、最後の上りを詰める。
ピークの南側は、全く樹が生えていない…まっさらな一枚バーンになっている。
正に、「尻ボで滑って下さい」と言ってるような斜面ナノだ。
よしよし♪待ってなさいョ。昼ご飯食べたら…滑ってあげるからね~
純白の一枚バーンに、華麗なる…尻ボのシュプールを描いてあげるからネ~

ピークに上がると、細い立木に小さな「オコタン山」という頂上看板が取り付けてあった。
「オコタンペ」とは、アイヌ語で「川下に村がある」を意味する、「オ・コタン・ウン・ペ」に由来する。(引用Wikipedia)
因みに、「カトちゃん…ぺ」とは縁もゆかりも無い。

ピーク下の「オコタンペ湖」を見下ろす斜面を均し、椅子を作りランチにする。
今回は、雪山の定番「カレーうどん」である。
因みに、今回は丼では無く…コッヘルから直接食す。
さてさて…いつもならば、ノンビリまったりするトコロだが、今回は尻ボがメインなので…早速、荷物をまとめ滑走準備をする。
頂上直下は、東側に小さな雪庇が張り出しているので、滑り出し部分を探して少し下りる。
こうして斜面を覗き込むと、下から眺めるよりも斜度があり…「S隊員」「SID隊員」も躊躇しているようだ。
ならば…!!と、小さな雪庇からダイブして、お先に失礼する。
基本的に高い所は苦手ナノだが…尻ボ(尻滑り)に関しては、恐怖心が麻痺するのか、断崖のような急斜面でも恐怖は感じない(勿論、雪崩れないかは、慎重に確認する)。

いざっ♪
…と、ココで冒頭の意味不明な、少々ブンガク的な描写に戻るノダ。
滑走距離は、凡そ…58m44cm7mm。
時間にして、約10秒弱。
あっという間、と言えば…あっという間だが、快感を感じるには充分だ。
兎に角、気持ちが良い。
この快感に相通じる…他なるものを思い付かない。
スキーの滑走感とも違う、滑り台のそれとも違う、喩えようの無い感覚だ。

破顔一笑。
滑り終えたヒトは、兎に角…どんな人でも、何故だか笑ってしまう。
尻ボ滑りして、無表情な人間には未だ会った事が無い。
その…無垢なる事、童(わらべ)の如し。
万人が童心に還りぬ。
面白き事類無きなり。

結局…二回登り返し、計三回楽しませて貰った。
二回目以降は、前滑走のシュプール(轍)の上を滑るので、摩擦抵抗が減り、前滑走よりもスピードが増す。
滑走距離も伸びる。
体力も消耗する。
大の大人ですら、我を忘れて夢中で遊ぶのだから、これを子供がやったら…どうなるのだろう?
しかし、尻ボは雪山とセットだから、お子様には無縁の遊びだ。
大人の…雪山スキルを持つ登山者のみに許された、崇高なる遊びナノだ。

下山は、全員片手に尻ボを持ち、少しでも滑れそうな場所を見つけては試走してみる。
雪面には少し重い…今朝方積もった新雪がある為、春山の堅雪ほどは滑らず、それでも何mか滑れば、それなりに満足する。
だが、先頭の人が滑ったあとの滑跡は、程良く圧雪され、良く滑り驚くほどスピードが出る。
三人目など、圧雪滑跡が…まるで「リュージュ」のコースのようになり、加速度が半端無く、「S隊員」に至っては…殆ど、阿鼻叫喚、絶叫、雄叫び、上様御乱心~の如き声を響かせている。
まるで…天然絶叫マシーンだな。

そこで…だ。
問題は、何番目に滑るか…という事になる。
勿論、スピード感溢れるスリルを味わう為には、三番目がベストなのだが…新雪にシュプールを描く快感も棄てがたい。
いや…むしろ、人跡未踏の斜面に斬り込む緊張感や、先の見えない不安が冒険心をくすぐり、パイオニア(先駆者)としての充足感を満たしてくれるノダ。
殆ど雪面と変わらない低い視界は、先の地形的変化を予測出来ず、不意のギャップや瘤の出現に肝を潰す。
予想した以上に斜度があり、思いがけず滑走距離が伸びた時など、ワクワク感が止まらない。
そう考えると…拙者は、常に先頭を往くパイオニアで在りたいと思う。
何人(なんぴと)たりとも、拙者の前は滑らせねぇ♪の精神だ。

おぉ♪
この…最後の斜面は、凄いぞぉ~
どんどんどんどん…滑って行く~。
このまま、何処までも何処までも…果てしなく滑って行けるかも知れない♪

おわり。
いやはや…毎年恒例の「大雪山縦走」の季節がやってきたのだが、現在…北海道は台風12号のおかげで、大荒れ。
オマケに、呼びもしないのに…13号のお出ましだ。

前もって計画していた縦走コースは、現在白紙状態に。
何故なら、「大雪山」にアプローチする林道が各地で通行止めになっているノダ。
もう、こうなったら…ジタバタしても仕方ない。
入れる登山口から入るしか無い。
山の天候は、登山者の都合に合わせてくれるワケでは無い。山の天候のご機嫌を伺いながら、臨機応変に対応するしか無い。
自然に逆らっても無駄だ。

縦走は、単独での一週間に及ぶ長いもの。天幕を含めた縦走装備は軽く30kgを越す。更に、一週間分の食糧と酒、雪渓が消えた季節の為…飲み水も担ぎ上げなければならない。
総重量40kgを超える装備を背負っての、山行になる。

メインは、大量遭難事故で有名になってしまった「トムラウシ」だが、それとて長い縦走途中の一通過点でしかない。
縦走の最大の目標は、「無事に生きて下山する事」に尽きる。
そして、楽しむ事。
天候や、重いザックや、単独行や、羆や…考え出すとリスクは沢山あるけれど、慎重に尚且つ大胆に楽しんで来ようと思う。

尚、(長い)縦走紀行文はmixiの方にUPの予定です♪(ココは宣伝の場かっ!?)
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今年は、殊の外…山の雪溶けは早そうな気が。
近所の「円山」なんぞ…すっかり、雪が消え、低草木なんかは若葉を芽吹き始めている。
「こ~してはおれんっ!」
一番好きなシーズンである残雪春山が、終わってしまうではないかっ!?

…という事で、金土で「浜益」方面の「群別(クンベツ)岳」を見に行ってこよう。
あくまでも…見に行く…だけ。
「群別岳」に繋がる稜線にある1222ピーク(通称…幌天狗)への天幕泊山行だ。
来シーズンの目標である…「群別岳」の偵察を兼ねて、山でノンビリ遊んできます♪

来月は、早々にマイミク隊員達との「空沼天幕泊山行」があり、一年振りの「京都帰省」があり、「焚き火合宿」があり…と、忙しくなりそうだ。
暫く、単独で入ってないから…単独行もしたい。

夏山シーズンを前に、行きたい山を考えてみる。
「ニペソツ」には、なんだか呼ばれとるようなので…6月ぐらいに。
「暑寒別」「芦別」「夕張」「ピンネシリ」「剣山」…色々あるな~
昨年、行けなかった「羊蹄山」には、約束していた「夕張メロン」担いで行かねば。
久々に…沢もやってみたくなってきた。

さてさて…今シーズンは、ど~なる事やら。