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今から、20年程昔…一時期「仙台」に住んでいた。
まだ、政令指定都市になる前だ。
古い商店街の裏町に、2万6000円風呂無しの部屋を見つけた。
長い旅の途中だったので、部屋には家具と呼べる物は一切無く、リサイクル・ショップで格安で売ってたTVと、旅の荷物、そして…ギターだけの殺風景な部屋だった。
レンタルビデオ店のバイト仲間は、クセのある面白い連中が集まっていて、小学校のプールに忍び込んで酒盛りしたり、荒浜の海岸で夜通し騒いだり、蔵王の露天風呂に忍び込んたりして遊んでいた(なんか…忍び込んでばっかりだな…)。
突然…実家の事情で、京都に帰る事になった時、新幹線のホームまで 仲間が見送りに来てくれた。
発車した新幹線と並んで走って見送ってくれた仲間達に、涙が溢れて止まらなかった。
半年ぐらいしか、付き合いが無かった…こんな流れ者の自分の事を、こんなにも大切に思ってくれた仲間達に、感激した。
震災に遭った彼らが、無事でいる事を…今は、ただ祈るしかない。
無事で居る事が分かれば、20年振りに彼らを訪ねてみようと思う。
どうか、どうか…生きていてくれ。
まだ、政令指定都市になる前だ。
古い商店街の裏町に、2万6000円風呂無しの部屋を見つけた。
長い旅の途中だったので、部屋には家具と呼べる物は一切無く、リサイクル・ショップで格安で売ってたTVと、旅の荷物、そして…ギターだけの殺風景な部屋だった。
レンタルビデオ店のバイト仲間は、クセのある面白い連中が集まっていて、小学校のプールに忍び込んで酒盛りしたり、荒浜の海岸で夜通し騒いだり、蔵王の露天風呂に忍び込んたりして遊んでいた(なんか…忍び込んでばっかりだな…)。
突然…実家の事情で、京都に帰る事になった時、新幹線のホームまで 仲間が見送りに来てくれた。
発車した新幹線と並んで走って見送ってくれた仲間達に、涙が溢れて止まらなかった。
半年ぐらいしか、付き合いが無かった…こんな流れ者の自分の事を、こんなにも大切に思ってくれた仲間達に、感激した。
震災に遭った彼らが、無事でいる事を…今は、ただ祈るしかない。
無事で居る事が分かれば、20年振りに彼らを訪ねてみようと思う。
どうか、どうか…生きていてくれ。
いやはや…思い付きというのは恐ろしいもんだ。
拙者の場合、時々…発作的かつ突発的に山行計画を思い付いてしまう。思い付いてしまったからには、即行動に移さなければ気が済まないもんだから、尚更厄介だ。
それも、普通では考えらんない方向性だったりするから、後になって冷静に考えてみて、とんでもない事だったりするノダ。
この日も、朝方…夜勤明けビールを飲みながら、最近読み始めた…エベレストに史上初の足跡を残したかも知れない「マロリー」の遺体発見にまつわる謎を追った『そして謎が残った』(伝説の登山家マロリー発見記)をニタニタ読みながら、ごくごくしておったら…明日、山行に行く約束をしていた「S隊員」からメールが届いた。
「晴れてて勿体無いから、山泊なんか…どう?」
うむむむ…流石、アグレッシ部所属「S隊員」!
デカザックに山泊装備をパッキングすんの面倒くさいな~と、思いつつ返信メールを打ちながら…突然、閃(ひらめ)いた。
山泊だと?
天幕泊は寒いけど、雪洞なら良くね?
そうだ!雪洞泊だ♪
雪洞と言えば、ニセコだ!(なんとなく…)
慌てて、メールを打ち直し…雪洞泊企画を打診すると、流石「アグレッシ部」!空腹の渓流魚の如く食らいついた「S隊員」。
俄かに急上昇するモチベーション。
さっきまで…「パッキング面倒くさいな~」と言ってた自分は、遥か銀河系の彼方20万光年に飛び去ってしまっていた。
こうしてはおれんっ!ガチン!(勢い良く立ち上がって、蛍光灯に頭ぶつけた音ですな♪)
えっと~えっと~、雪洞泊って何が必要なんだっけ?
「クラシック」と「バーボン」と「日本酒」と「ワイン」と…(全部、酒だろっ!?)
アタフタ…アタフタ…
前回、拙者が雪洞泊をやった時は、ニセコ「ワイススキー場」から歩いて「五色温泉」まで行ったが、今回は…その時間的、体力的余裕が無いので、「昆布温泉」回りで除雪されているパノラマラインを「五色温泉」に向かう。
途中、「余市」柿崎商店で昼飯を食べ、ついでに色々買い出しをし、オーバーパンツを忘れた「S隊員」の防水作業ズボンを買いに「倶知安」のホーマックに寄ったりして…「五色温泉」に到着したのは、遅い午後になっていた。
そろそろ、BC(バックカントリー)を楽しんだボーダーが下山してくる時間に、我々は装具を整え準備を始めた。
寝る前に温泉に入りたいから、余り遠くへは行きたくない。温泉のポカポカが冷めない距離に我が家を定めたい。
雪の中から突き出した速度制限の標識を見ると…積雪量は3~4mのようだ。
正しい、雪洞を掘る場所の条件は…知らないが、とりあえず…過去の経験から、「風の吹き込まない」「積雪量豊富な」「雪洞の上を間違ってスキーヤーやボーダーが滑らない」「ロケーションの良い」「駅から徒歩10分圏内で」「スーパーが近く」「治安の良い」「日当たり良好な」「ペットOKな」…(オイオイ!)
ま、そんな場所を探しながら…「イワオヌプリ」方面へぶらぶら歩く。
暫く歩くと…丁度上手い具合に、雪庇の張り出した緩い傾斜地を見つけた。
右手に「アンヌプリ」、左手に「イワオヌプリ」が見渡せ、抜群のロケーションだ。
ま、雪洞に入っちゃえば関係無いんだが…
地形を観察して、大体の建設プランを「S隊員」に説明する。
建坪率や建築基準法なんか関係無しに…「ダァ~と、こんな感じで♪」と、ストックを振り回して擬音で説明してるが、なんせ…アバウトがゴアテックス着て、ザック背負って歩いてるみたいな拙者だから、説明された「S隊員」もキョトンとしている。
いいの、いいの。テキトーで♪
「先ずは、入口をこの辺に掘って…そんでもって、こう…ぐわぁ~って感じで♪」(分かるかっ!?)
マイシャベルを構えた「S隊員」が掘り始める。
建築デザイナー及び現場監督である拙者は、煙草を吹かしながら…後ろで、ニコニコ眺めている。
いや…拙者が掘っても良いのだが、初雪洞掘りの「S隊員」も掘りたくって掘りたくって堪らないだろうし…その楽しみを無理やり奪う程野暮では無い。
…ので、監督しつつ、時々指示しながら、アンヌプリを眺める事に集中する。
キレーだな~アンヌプリ♪(お前も働けっ!!)
玄関の大体の形が出来上がると、奥へ掘り進む。
防寒対策の為、玄関は極力小さくしたので…作業は、膝立ちになって行う。結構キツい体制だ。
その内、上半身が入るぐらい横穴が深くなってくると、雪質は締まった掘り易い硬さを持ち始める。そうなれば、雪をブロックに切り出すように掘れるから作業効率は上がる。
そこまで深くなると、掘り出した雪を穴から捨てる事が難しくなるので、シートを穴の中に広げ一旦そこに雪を載せてから、シートを引っ張り出し、穴の外に捨てる作業が必要になる。
一人は穴掘り作業、一人は搬出作業…と、作業分担をして効率化を図る。
手の空いた時間は、雪洞の外にトイレを作ったり、掘り出した雪のブロックを積み重ねて、玄関脇にディナースペース作り。
穴掘り作業中は、風の当たらない雪洞内に居るし、体を動かしているので、さほど寒さは感じないが…穴の外に出ると、外気温は-5℃程に下がってきて、ジッとしていると寒いので、何かしら作業をしていたいのだ。
雪洞内は、かなりな広さになってきたが…二人が寝るスペースと、ザックを置くスペースが必要なので、それを計算しながら更に広げる。
つか、約一名デカいのが居るから、そのサイズに広げなきゃいけないノダ。
シャベルを締まった雪に突き刺すと、キュキュッと雪が鳴き、土にシャベルを入れた感じとは明らかに違う…食い込むような手応えを感じる。
これが、結構快感だったりする。
そう…冷え冷えのアイスキャンデーに、前歯を食い込ませた時のような、キシキシ感に近い。
大きなブロックを綺麗に切り出せた時など、「とったど~」と叫びたくなる。
時々、雪の層みたいな場所があり、掘り出したブロックに見事にフラットな平面が生まれる時があり、知らず知らずの内に笑みがこぼれる。
「ねぇねぇ♪コレ見て~キレーでしょ?」と言いたくなるが、穴は狭いので作業中は一人だから、その嬉しさを伝える相手は居ない…ので、個人的に喜ぶに留める。
作業開始から2時間経過。
陽も暮れてきたので、そろそろ仕上げ作業に掛かる。
床をフラット(水平)に仕上げ、天井が落ちてこないよう…重力を分散させるアーチ型に削り取る。
雪洞内で調理したり、人間の体温などで内部が温まり、雪が溶けて滴が落ちてこないよう、表面を滑らかに仕上げる。
小物類を置く棚や、ロウソクを置く窪みを作って…愛しい我が家の完成だ。
うーん、たった一晩の仮の宿とするには勿体無いぐらいの仕上がりだ。
かと言って、「一週間居ろっ!」と言われたら困るが…
床に断熱の為に、テントマットやグランドシート、サバイバル・ブランケット等を5~6枚重ね、各々のエアマットを敷く。
荷物を中に入れて、ロウソクに火を灯すと…雪洞内に乱反射した灯りのせいで、驚くほど明るくなった。
ビールを開けて、地鎮祭及び上棟式、並びに完成式の乾杯をまとめてする。
意外に重労働だったせいで汗をかき、渇いていた喉にビールが旨い。
ディナーは、ジンギスカン(生ラム)だ。
炭を使った「簡易式焼き網セット」を「S隊員」が持って来てくれていたが…雪洞内では一酸化炭素中毒が怖いので、フライパンでの調理にする。
さぁさぁ…肉焼くョ~♪
ジュージュー焼き始めたトコロで、「S隊員」が思い出したように…「あっ!!フクラギ買って来たんだったぁ!!」と、柿崎商店で一匹分¥200(半身二枚)で購入したフクラギを取り出した。
つか…コレ、中骨あるし、刺身に引かなきゃなんないでしょ!(順番違うっ)
ジュージュー焼かれるジンギスカンを横目に、狭い雪洞内で体を折り曲げながら、小さなナイフでフクラギを処理する。
焼き上がったジンギスカンを摘む余裕も無い。
肉食いたい!肉食いたい!
見かねた「S隊員」が、ジンギスカンを口に運んでくれる。
ふむ…くるしゅうない。
ビールも口に注いで欲しいが…それは、自分でやる。
換気の為に入口(玄関)は開けてあるが…調理をしたり、人間の呼気で雪洞内には霧がかかったように白い水蒸気が充満する。
雪洞内の気温は、ほぼ0℃。
素手でも居られる気温だ。
アルコールが入って、いい塩梅だ♪
拙者は日本酒に、「S隊員」は拙者が持参した(飲み忘れてた)ボージョレヌーボーに移行して、マッタリと飲み続ける。
冷たいお刺身に飽きてきたので(だって、一匹分あんだもん)…フライパンで、サッと炙って塩で食べたりする。
ビールを飲んだせいで、急激にオシッコがしたくなったが…雪洞から出るのが面倒だ。仕方無く…脱いだ登山靴を履こうとするが、天井がギリギリの高さだから、無理な姿勢になり…脚がつりそうになる(てか…つった!!)。
やっとこさ、雪洞から這い出ると…満天の星空が広がっていた。
翌朝…朝っぱらから、柿崎商店で買って来た北寄貝を寝転がったまんま捌き、バター焼きうどんに…オタマジャクシの親分みたいな(別名『泳ぐコラーゲン』)「ゴッコ」は汁にする(何しとんねん!?)。
食後、辺りをぶらぶら散策して…昼飯食って撤収準備をしていると、「S隊員」のマイミク山友で「アンヌプリ」越えで「イワオヌプリ」まで滑って来た「SIDさん」ご一行と遭遇。
ご一行の中には、「羊蹄山」に一緒に行った「B隊員」の姿も(おぉ♪久し振り~)。
うーん、山の世界…とりわけ、雪山の世界は狭いの~
もう少し、早く寄ってくれたら…ご馳走もしてあげられたのにぃ。
何のお構いもせず、スミマセンね~。
彼等を見送って、我々も撤収する。
突発的な思い付き企画だったが、なかなかの満足度だ。
発作的に実行した企画だったが、かなりの充実感を味わえた。
まさか…昨日の朝には、雪洞掘って泊まるなんて、思いもしなかったもんな。
せっかく苦労して作った雪洞だから、なんだか…立ち去りがたい。
名残惜しそうに、振り返り振り返りしながら…我々は帰路に就いた。
ニセコの澄みきった空が眩しい午後だった。
おわり。




