久々の「空沼岳」である。
勿論、今回も頂上なんか行く気はサラサラ無い。
今回は、実は…沢登りナノである。
拙者…ワンゲル時代に1~2度やった事があるが、30年以上振りだから、殆ど初めてみたいなもんだ。
慌てて…前日に、沢靴やヘルメットを買い揃え、お馴染みの登山口へ向かった。
しかしながら、何故イキナリ「沢登り」なのか?
諸兄姉の疑問は分かる。
自分自身でも良く分からんノダ(オイオイ…)。
強いて云えば…暑いから?(オイオイ…)
正直言って、夏山は嫌いだ。(オイオイ…)
暑くて、虫が沢山居て、汗もいっぱいかくし、ビールもヌルい。
従って、昨年までは真夏には殆ど山行をしなかった。
秋の縦走に向けてのトレーニング山行だけだった。
しかし、相方「S隊員」の誘いもあり、30年以上振りに「沢登り…やってみよーかな~」と思ったワケなのだ。
「沢登り」と聞くと…沢登りをやらない一般登山者の皆さんは、「なんか…ロープとか使って、滝とか登って、岩登りの技術や装備とか無いと大変なんじゃないの?」と思いがちだ。
だが、それは…間違った認識だ。
山でも、初心者から上級者のカテゴリーに分けられているように、沢にも難易度によりカテゴリー分けされている。
勿論、ロープでビレイ(確保)したり、ラペリング(懸垂下降)が必要な難しい沢もあるが、今回の空沼岳「湯の沢」は、ロープなど全く不要で基本的な「三点支持」さえ分かっていれば、初心者でも歩ける沢だと云う。
以前、空沼岳中腹の「万計沼」で一服していた時、「湯の沢」を一人で登ってきたオジサンに会った事がある。
実際、ロープやハーネス等持っておらず、小さなザックと沢靴だけ…という出で立ちであった。
それに…この「湯の沢」という響きが萌えるではないか。
麓には、嘗て「常盤温泉」もあった事だし、もしかしたら温泉でもあるんではないか?と冒険心をくすぐられる。
という事で、採石場奥の林道入口の橋の手前に駐車し、買ったばかりの装具を整える。
先ずは…「ネオプレーン素材」(ウェットスーツみたいなもん)のソックス。
フニャフニャの手触りが、なんだか気持ち良い。
その上に、沢靴を履く。
昔、ワンゲルでやった時は「地下足袋」と「ワラジ」だったが、今回は「キャラバン」のゴム底の沢靴を選んだ。
一般的には沢靴の底はフェルトらしいが、一般登山道を使って下山する場合の事を考えて、グリップ力のあるゴム底にした。
人によっては、下山用に登山靴を持って行くらしく、フェルト底はそれぐらい一般登山道では使えないという事なのだろう。
ま、ネットで色々調べても、装備には人それぞれに拘りやスタイルがあって、結局…自分に合えば良いという事なのだろう。
沢靴の上に、防寒防水及び怪我防止の為に、ネオプレーン素材のスパッツを装着する。
この装備については、目的がなんとなく納得出来無かったのだが、なんとなく…※「UWF」のレガースぽくってカックイイので買ってみた。
※注「UWF」(universal wrestling federation)
蹴り、投げ、関節技、締め技を主体とした攻撃で、リアルな闘いを求めたプロレス団体(ロープに振られたりしない)。
初期メンバーには「佐山サトル」(初代タイガーマスク)や、「前田日明」「藤原喜明」などが居た。
「レガース」とは、回し蹴りをする時に脛を保護するクッションが入った脛当ての事。(mojopedia引用)
んでもって、ヘルメットを被る。
拙者もカッコイイ岩登り用が欲しかったのだが、生憎…サイズが無く、仕方無く※「プロノ」に向かった。
※「プロノ」北海道東北域に展開する現場作業着の専門店。オレンジの看板が目印だ。安全かつファッショナブルな現場作業員を目指す兄さんに人気。いっちょまえに浸湿撥水素材を使った雨具などもあり、多分…登山に必要な服装は一揃え揃う筈である。(mojopedia引用)
青いヘルメットは、如何にも現場の雰囲気が漂っていて…なかなか、※イカス♪
※「イカス」格好良い。オシャレ。70年代の若者言葉。 英訳すると「cool」という事になる。(mojopedia引用)
ザックは「second・street」で見つけた…今は無き「秀岳荘」オリジナルで、化繊Tシャツはゼビオスポーツで冬場に安売りしていた「umbro」だが、サッカー関連のメーカーだとはヒトに聞くまで知らなかった。
ズボンも「second・street」の衣料品20%OFFセールで見つけた「Colombia」の化繊100%の古着だ(乾きやすい)。
装具を整えていると、続々と車がやって来て、何故か…登山口への林道を進まず、我々の隣に駐車し始めた。
うむ?みんな、「湯の沢」遡行目的なのか?
そんなに、沢登りは人気だったのか?
…と思っていたが、恐らく皆さん「空沼岳」へ登りに来たが、登山口手前に車を停めて準備をしている我々に釣られて、ここから歩くもんだと勘違いしているようだった。
皆さん、「空沼岳」は初めてなのだろうか?
しかし、流石に…普通の登山とは違う怪しい雰囲気を醸し出している我々の後を着いてくるヒトは居なかった(一人は現場用ヘルメット被ってんだから)。
我々は、「万計沢」に掛かる橋の手前から右手に続く林道を歩き始める。
夏草のむせかえるような草いきれに囲まれた林道は、大変歩き心地が悪く、沢音が響く左手の藪に突進し※入渓を目論む。
※「入渓」沢に入る事。(沢用語は色々難しい)
砂防ダムの上流から入渓する。
川面を渡る涼しげな風と、木洩れ日。キラキラと光る水面と、水音の響き。
新鮮な驚きと、発見に満ちた景色にテンションは(密かに)上がる。
早速、水流の中に入り、沢の流れと水の冷たさを感じてみる。
ピッチリと密着したネオプレーンの靴下のせいか、殆ど濡れる感覚は無い。従って、冷たくも無い。
少し拍子抜けした感もあるが、それが装備の正しい機能ナノで、これでイイのだ。
沢靴も岩にピタリと密着して、今迄に無い感覚に驚く。
なんとなく…「さぁ来い」という感じがする。
こちとら、濡れても構わない…というか、むしろ濡れる事を前提とした装備と心構えで来ているから、当たり前だが…山登りで沢にハマって登山靴の中を濡らした「やっちゃった感」とは全く違うノダ。
「さぁ、濡れてやろうじゃないか感」で胸が膨らむ。
この…初めて沢に浸かる瞬間というのもイイ。
山との距離感が、ぐっと近付く感じがする。
皮膚感覚で沢を感じる瞬間に、人間同士のフィジカル・コンタクト(肉体的接触)した時のような親近感が涌く。
ガイドブックに因れば…本来の入渓地点は、まだまだ上流の林道終点らしいが、こちとら…先週の「札幌岳」の林道歩きで、林道にゃウンザリしている。
入渓して暫くは、なんて事も無い平凡で退屈な河原歩きが続くが、林道の退屈さと比べたら、全然マシである。
その内、突然…「滑」(ナメ)が現れた。
「滑」というのは、河床の一枚岩の上を水流が流れている場所で、ハナシには聞いていたが、歩くのは初めてだった。
それまでの、浮き石だらけのゴツゴツした感触とは異質の、フラットで滑らかな岩の感触が新鮮だ。
まるで…何だろう?
比喩すべき他の感触が思い浮かばない、生まれて初めて感じる感覚に戸惑い…且つニヤニヤが止まらない。
「湯の沢」の水は白っぽい…恐らくは、石灰岩が溶け出した独特の色をしている。
その…白っぽい水が5cm程の厚さの薄い水流となり、滑の上をサラサラと流れている。
いやはや、これは楽しい。
滑地帯が数十m続いた沢の回廊は、やがて…唐突に普通の河床に戻る。
あっけない終わり方に、名残惜しく…引き返して、もう一度歩きたくなる。
しかし、次なるアトラクションが直ぐに待ち受けていた。
小滝だ。
背丈程のギャップを、白濁した流れが泡立ちながら落ちている。
幅は2~3mで、横の草付きを巻く事も出来るが、ここは…初小滝という事で、水流の中を直登してみる。
泡立って良く見えない水流の中に、足掛かりを探してみる。
水圧に負けてネオプレーンの靴下の隙間から中に、冷たい沢水が入り込んできた。
うひぃ~気持ちイイ♪
手掛かりを探して、水流の中に手を突っ込んでみる。
うひぃ~気持ちイイ♪
水しぶきが顔に掛かる。
うひぃ~気持ちイイ♪
これは…楽しい。
小滝の上に持ち上げた視線と、水面が重なる。
新鮮なアングルに、ニタニタが顔に張り付いたままになる。
あっけなく小滝を越えると、また…景色は平凡な沢に戻った。
この…緊張と緩和の繰り返しが、楽しさを倍増させる。
次の曲がり角を曲がったら、何が現れるか…ワクワクする。
次は、どんなアトラクションが待ち受けているか、早く見てみたくて「S隊員」を追い越してみたりする。
でも、そこには何も無かったりして、期待と落胆が繰り返される。
「緊張と緩和」「期待と落胆」
そして、落胆のあとには…出たっ!さっきの小滝より大きな5m級の滝だ。
「落胆と驚き」
これは…一流のエンターテイメント冒険小説を読んでいるような味わいと、面白さがある。
とりあえず、一回休憩して興奮した精神を落ち着けよう。
濡れる気満々で来たからには、諸々の防水対策も怠りない。
タバコもビニール袋に入れて来ている。
河原の手頃な石に腰掛け、補給をし、一服する。
川上から下降流の涼しげな風が降りてくる。
上流に向かうにつれ、段々と川幅が狭まり、谷も深くなってきた。
だが、沢沿いのルートは何処も似たような沢形の地形で、確かな現在地が判らなくなっている。
時々現れる支流や、林道の下をくぐる道管のトンネルが唯一のランドマークになっている。
恐らく、目的の「万計沢」に達する林道の合流点までの半分辺りに居る模様だ。
再び遡行を再開し、暫くすると…また、滑が現れた。
いよいよ、核心部が始まったようだ。
細い回廊が延々と続いている。
駄目だ。もう…ニタニタを我慢出来ぬ。
幾つかの小滝を越えると、6~7mの滝が現れた。
中央部は水量があったので、右寄りを攀じる。
その先には、狭いゴルジュが待ち受けていた。その隙間からは、真っ白な飛沫を落とす大滝が覗けた。
慎重にゴルジュを突破し、大滝へ。
うむむむ…
ここは、流石に巻くんだろうが、さて…どのルートを登ればイイものか…。
滝の右側の急な草付きには、踏み跡もあったので右側を巻く事にする。
先ず、「S隊員」が取り付く。
落ちてきた時の為に、下で構えておく。
急勾配の草付きをドンドン登って行くが、高巻く積もりナノだろうか?
下から見上げると、あの…草付きの途中から、滝へ向かってトラバースしてる不明瞭な踏み跡が、恐らくは先行者達が採ったルートに違いない。
「S隊員」が藪の中に消えるのを待って登攀する。
濡れた岩には足掛かりが少なく、手頃な場所にあった笹を掴んで体を持ち上げる。
掴んだ笹には、殆ど葉が付いておらず…みんな、この笹を掴んでいる事が分かる。
滝の上へ出ると、更に小さな滝が待っていた。
高巻いて登った筈の「S隊員」の姿が見えない。
暫く待っていると、ひょっこりと姿を現した。一人で落ちたんじゃないかと心配していたが、大丈夫な様子だ。
更に細くなった流れを進むと…
ジャジャ~ン、先程の滝よりも更に高い滝が現れた。
落ちた水流は、細かい飛沫となっており、その高さが伺える。
高さは10m以上はありそうな、美しい滝だった。
「湯の沢」一番のハイライトだ。
滝の前で記念写真でも撮ろうと思い、「S隊員」に向かって手振りで滝の前に立つように促すと…何を勘違いしたか、「S隊員」はドンドン滝の直下に進み、その飛沫のシャワーの中に身を投じた。
勿論、全身びしょ濡れだ。
だが、その顔には笑顔が弾けていた。
そう来たか…ならば、拙者も♪と滝の下に入る。
拡散しながら落下した圧力が、体中を圧迫し。
その刹那、体の奥の方で何が弾けた。
「空沼」の知られざる姿を垣間見た思いで、胸がキュンとなった。
おわり。
【写真1】小滝を登る。気持ち良すぎる。
【写真2】ゴルジュを通過するS隊員。奥に大滝が待ち受ける。
【写真3】大滝シャワーに打たれて、アドレナリン出まくる。








