いやはや、皆様…新年あけましておめでとうござりまする。
頑なに山頂を踏まない登山家…「もじょ」でございます。
新年早々、相変わらずの…山頂を踏まない山馬鹿日記にお付き合いいただきたく、謹んで拙文を新春にお届けいたす所存でございます。

さてさて、昨年は…久し振りに山で年越しを果たしたものの、準備に手間取ったりしたのもあり、企画していた「イグルー年越し泊」を出来ずに、単なる…平凡な年越し雪山テント泊になってしまい、大変心残りな一年を過ごしたので、「今年こそはっ」と気合いを入れ直し、晦日から準備に取りかかり、無事に大晦日の午前中に自宅を出発したノダ。
昨年同様…「このヒトは、大晦日にバカデカい荷物を担いで、シャベルやノコギリやスリッパの化け物みたいなモノ(スノーシューね)を背負って、一体全体何処に何をしに行くのかしらん?」という訝し気な地下鉄客の視線に晒される快感を味わいながら、お馴染みの「手稲山」に向かったのである。
今年は、シフトの巡り合わせが良く、年末年始に4連休を獲得したので、ニセコや中山峠方面への遠征も考えたが、「年越しには紅白歌合戦を見なければならない」という先祖伝来のシキタリがあるので、ワンセグ電波の確実に採れる…毎年お馴染みの「手稲山山麓」(手稲山山頂にはワンセグ電波送信用アンテナがある)に目的地を選定した次第だ。

バスの終点「平和の滝入口」で下車し、通い慣れた…「永峰沢」方面へ向かう。
昨年は、行き先を迷ったあげく、「キノコナイ キャンプ場」(秘密のテン場)に向かったワケだが、陽の当たらない沢沿いだった為、大層…寒い思いをしたので、今年は以前から目を付けていた、日当たり良好な放棄された造成地(らしき場所)に向かった。
市道脇で装具を整え、造成地へ向かう…夏場は藪に閉ざされた林道に取り付く。
暫く降雪が無いので、古いノルディックスキーのトレースが残っているだけで、新しいトレースは無く、いきなりの脛ラッセルに途端に息が上がる。
だが、造成地までは…わずか、200mそこそこの距離ナノで、汗をかく前にラッセルは終了した(近過ぎるだろっ?)。

一面の雪原と化した造成地には、蝦夷鹿と蝦夷雪兎の足跡しか無く、藪も雪に隠れていた。
とりあえず、一服して…イグルー制作用の服に着替える。
イグルー制作は、スノーブロックを抱えて運んだり、膝立ちになってブロックを切り出したり、意外と濡れるのでゴア合羽を着て、ホーマックで買った防寒ゴム手袋を履くノダ。

とりあえず、ブロックを切り出せる積雪量があるか…確認する為に雪面を掘ってみるが、1m足らずで地面が出てきてしまった。
ま、スノーブロック自体は30cmぐらいの厚みで切り出すから、それだけあれば十分ナノだ。
但し、未だ積雪量が少なく、寒さも厳しくないので、至る所に…ザラメ状のサンクラスト(や、レインクラスト)した…所謂「弱層」が見受けられ、切り出しには苦労しそうだった。

作業し易いように雪面を踏み均し、イグルーの基礎面積を決める。
基本的に、イグルー制作の難易度は、そのサイズに比例する。
イグルーの直径を余り大きくすると、積み上げた際に高くなり過ぎて作業が困難になるし、使用するブロックの数も増え、切り出し作業量も増えてしまうノダ。
今迄の経験から、ブロックは螺旋で6周(つまり、6段)するぐらい、積み上げるブロック数は40個前後にしないと、作業効率が下がり、時間が掛かってしまう事は分かっていた。
基礎ブロックは、構造物を安定させる為に少し大きめの40×40×50cmに切り出す。
寒さが厳しくないので、湿った雪質のブロックは一個で10kg近くになり、運ぶのに苦労した。
オマケに、締まってない雪だから運んでる途中で崩れたり、弱層部分で割れたりして、ブロック相手に悪態をついたり、崩れたスノーブロックを蹴飛ばしたり、一人暴れてしまった(何しとんねん)。
何時もは、反時計回りに積み上げて行くのだが、今回は試験的に時計回りに積み上げてみる。
だが、慣れない方向に要領が判らず、やりにくい。
二段目を積み上げたトコロで、冷静になる為に一度休憩する。

作業自体は、ルーティーンが完成しているから、いちいち考えて動かなくて済むようになったが、雪質の悪さに要らぬ苦労が続き、早くもビールが飲みたくなってきた(もう集中力が切れとる)。
それでも、泊まり用イグルーなので、隙間風が入らぬよう丁寧に積み上げなければならない。
凡そ、2時間で6段目が乗り、屋根が完成した。
初めてイグルーを作った時は、6時間以上掛かっていたから、技術的には確実に向上しているノダ(早く呑みたいだけだろ?)。
何時もなら、イグルー内を掘り下げ雪面下に出入口用トンネルを掘るのだが、今回は積雪量が少ないので、掘り下げる事が出来ず、イグルーの壁に穴を直接開けてみる事にした。
ドキドキしながらスノーソウをキコキコしつつ、逆U字型に出入口を開ける。
立体パズル「ジェンガ」じゃ無いが、一番下のブロックを取り去るワケだから、下手したら全体が崩れる可能性がある。
螺旋状に組み上げてるから、原理的には重力バランスは下方向だけで無く、横方向にも掛かっている筈…
キコキコ…キコキコ…

ドサッ!!!
うわぉぉぉ~!
二段目のブロックが崩れ落ちてしまった!
しかし、崩落はそれ以上は起こらなかった。
ブロックは螺旋状に、下側のブロックと交互になるよう(レンガ壁みたいに)積み上げてあるので、崩落は止まったノダ。
いやあ、ドキドキしたな~
ここで崩れたら、また…テントで年越しする羽目になるトコだった。

開けた出入口から中に入って、床に溜まった雪を排出し、寝やすいよう床をフラットに均す。
「こんなもんかな?」と、水平を確かめるべく横になると…
なんという事だ。
思いっきり、足がイグルー外にはみ出すではないかっ!?
うぬぬぬ…。
完璧に、最初の床面積(直径)計算を間違えてしまったノダ。
いつもなら、雪面を掘り下げて内部を拡張するのだが、積雪量が少ないから…183cm以上(身長)に広げる余裕が無い。
仕方ない。出入口の外にブロックを積んで、はみ出した足が外気に触れぬようにするしか無い。
追加工事30分。
トンネル状に出入口を延長し、なんとか…寝られる面積を確保した。

さあさあ、陽は西の稜線に沈みつつある。待ちに待ちに待ちに待ちに待ちに…(どんだけ待ったんやっ!?)待った、ゴクゴクタイムだ。
荷物を広げ、下半身をシュラフに突っ込んで、両足腹背中に使い捨てカイロを貼り付け、インナーダウンを着込み、一番搾りをプシュッとする。
グビグビグビグビ…ぷっはぁ~。
肉体労働を終えたアトの一杯は格別である。
内壁に蝋燭を灯し、こないだ「秀岳荘」で衝動買いした「ソーラーパフ」という…太陽電池利用のLEDランタンを点けると、乱反射した光がイグルー内を驚くほど明るく照らした。
今夜は、「牛モツ鍋」をメインに、「お刺身」と「数の子」「焼き豚」「しば漬け」(本場京都大原の帰省土産)だ。
酒も「一番搾り」を筆頭に、「久保田(千寿)」(日本酒)「ジャックダニエル」(テネシーウイスキー)と準備に怠りは無いっ。
イグルー内は、ほぼ0℃で手袋も要らないぐらいに暖かい。
いや、暖かいワケでは無いっ。
あくまでも、外気温やテント泊に比べれば少々高いという程度だ。
だが、昨年のー6℃に比べれば…。
紅白歌合戦が始まるまで少し時間があるので、昼飯用に持って来て、結局食べ忘れた「DONGURI」(札幌の有名なパン屋さんね)の「ガーリックフランス」を肴にジャックダニエルをゴロゴロしながら呑む。
BGMに付けたラジオからは、札幌市西区にあるコミュニティーFM曲「三角山放送局」が流れている。
年末進行なのか、DJ(と言っても近所のオジサンオバチャンなんだが)のお喋りは無く、PCに取り込んだ曲を延々とランダムに流していているようだ。
その…ランダム具合が面白い。
昭和ムード歌謡が流れたと思ったら、次はストーンズで、突然…クラシックが流れたりする。もう、ムチャクチャだ。
途中から、紅白で大トリを努める聖子ちゃん特集になり、イグルーに寝転がって聴く「夏の扉」などは、なかなかシュールで良かった(何のハナシをしとるんだ?)。

やがて、紅白歌合戦が始まり…それを見ながら鍋を摘みつつ、数の子をかじったり、ブリトロをしゃぶったりしつつ、一人宴は進行した。
久し振りのボスキャラ幸子が登場したり、朝ドラ「朝がきた」の主題歌(出演陣も登場)があったり、殆ど動かないで唄う…オバチャンNOKKOが居たり、それなりに楽しめた。視聴率は悪かったらしいが…大晦日は、やっぱり紅白歌合戦ナノだ。
「赤いスイートピー」を情感豊かに歌い上げた聖子ちゃんが登場した頃には、「久保田」も無くなりかけていたが、それに反して…殆ど酔いは回っていなかった。
一人だと呑むペースがゆっくりだし、更に気温は0℃を保ったまんまだから、酔っ払うには至らないノダ。

翌朝、初日の出は…寝坊して見忘れた。
そもそも、此処からは東側に「五天山」なんかがあって見えないノダ。
陽が差すと、日当たり良好な場所に建てたイグルーが溶け始め、天井からはポタポタと水滴が落ち始めた。
ドリフのコント並みに滴が落ちるもんだから、オチオチ朝飯も食っていられず、外に出て昨晩のモツ鍋の残りにマルタイラーメンの麺を入れて、余った一番搾りと共に食した。

念願の年越しイグルー泊は、この時期には、この標高では…色々と難しい事が分かった。
しかしながら、イグルーで二泊経験して色々勉強になった。
本来的には、雪山泊の新しい方法論としてのイグルーであったから、次は…いよいよ、一泊縦走本番でのイグルー泊に挑もうと思う。
イグルーは、あくまでも…手段であって、目的では無い。
誰も居ない雪山の奥地で、過ごすイグルー泊を夢見て、新鮮な気持ちで帰路に就いた。

おわり。

【写真1】イグルーの奥には阿部山が見える…雪原と化した造成地
【写真2】ローソク点灯。LEDには無い風情がある。
【写真3】ごちゃごちゃしとるが、一人宴メニュー。



いやはや…今更ですが、今年の初日記でござります。
強烈な寒気の流入で、不安定な天候が続き、年明け以来…殆ど山へも行かずに、買い占めた限定発売「琥珀ヱビス」を、ひたすら飲み続けて、ゴロゴロしまくっていた…「もじょ」でございます。

さてさて…今回の山行のメインテーマは、ズバリ!「イグルー」である。
よって、山頂なんか…行く気はサラサラ無い(ま、大体…毎回行く気は無いんだが…)。
…ので、山は積雪量さえあれば何処でもイイ。
しかし、一応…山歩き(ラッセル)も楽しみたい。
けど、トレースのある山は面白く無いので、遠慮したい。
…という事で、以前に何度か行った「手稲山」(西区平和)にある「永峰沢」へ行く事にした。
「永峰沢」は、嘗て…北大スキー部が積雪期に初めて「手稲山」に登ったルートで、二年前に「初登頂99周年記念」(100年で無いトコが素晴らしいだろぅ?)として、歩いたので…詳しくは、そちらを参照されたい。
http://m.mixi.jp/view_diary.pl?&id=1817136020&owner_id=1623849&via=list_diary_history

「琴似発寒川」を渡り「平和の滝」へ向かう道路から、直接「永峰沢」沿いに取り付く事も可能だが、民家の庭先を通過せねばならず、家人に見つけられると気まずいので…迂回コースを採る。
「発寒川」に架かる橋を渡り右側の枝道に入り、50m程行くと左手に林道がある。そこを詰めると広大な雪原に辿り着く。どうやら…宅地造成地らしい。雪原を横切って、テキトーに樹林帯に入る。
古い…クロスカントリースキーのトレースと、消えかけたワカンのトレースがあるが、新しい物は見当たらない。
時折、木立には古い…布製のマーカーが見つかる。
昔は、ここから「永峰」経由で「手稲山」へ向かう夏道ルートもあったそうなので、その名残かも知れない(永峰沢には小屋もあったらしいぞぉ)。
とりあえず、沢沿いに進めば良いのでマーカーは無視して、自由気儘に歩く。
ラッセルはくるぶしあたりで、フカフカの新雪を蹴散らして進む。
灌木の隙間をぬいながら、上流を目指す。

暫くすると…「手稲山」と「ネオパラ山」とを繋ぐコル(鞍部)の白い峰が見え始める。
気温はー1℃で暖かく、アウターを脱いでフリースになる。
「永峰沢」に掛かったスノーブリッジを慎重に渡り右岸へ。
トドマツの疎林を緩やかに登る。
「手稲山」本峰へ続く「永峰尾根」への取り付き部は、このまま左手の尾根だが、今回は再び「永峰沢」を渡り左岸へ。
このまま高度を上げれば「ネオパラ山」に行くが、今日はイグルーの日なので…少し開けた平坦地を見つけ、建設用地に選定する。
ここには、2週間前にイグルー制作に来て…途中、挫折したイグルー遺跡がある。
新雪を被ったそれは、トーチカのような哀愁をまとっている。…気がしないでもない。
とりあえず…一服して、遺跡の横にイグルー建設を開始する。

先ず、イグルーの大きさを決める。
横になって寝れるぐらいの広さが欲しいので、凡そ2mの直径の円をストックで描き、その円内をスノーシューで踏み固める。
ぐるぐる回りながら…シッカリ踏み固める(コレが結構キツイ)。
スノーシューを脱いでも沈まない程度になったら、いよいよ…スノーブロックを切り出しに掛かる。
この為に新しいショベルを新調した。
今迄使っていたのは、「秀岳荘」で、ダンボールに突っ込まれていた…大安売り¥3000持ってけドロボー!!ぐらいの安物の赤いプラスチックの物だったが、良く締まった雪には歯が立たないし、頑丈なアルミのシャベルを買った。
黒いシャフトに緑のブレードは、なんだか…Kawasakiのバイクみたいで格好良い。
どうやら…「K2」というスキー板メーカーの、雪崩救出(アバランチ・レスキュー)用のシャベルみたいだ。
本来は、雪崩に埋まった人を掘り出す為の装備だが、勿論…雪洞掘りや、イグルーにだって使える。
なんなら、鉄板代わりにジンギスカンも出来そ~なくらい、頼もしい(やんないけど…)。

新雪は、どんなに踏み固めてもブロックで切り出せないし、締まっておらず強度不足ナノで、50cm程掘り下げた場所の圧雪をスノーソー(雪用ノコギリ)で切り出す。
先ず、基礎となる一段目は40×40×30cm(縦・横・高さ)ぐらいの、大きめサイズで切り出す。
踏み固めた円に沿って並べて行く。隣り合わせのブロックが密着するように、接合部は斜めに切り取り隙間が出来無いようにする。
少し傾斜地に建てたので、水平になるよう…高さを合わせる。
一段目で16個のブロックが並んだ。
二段目を重ねる前に、頭頂部を内側に傾斜させて切り揃えておく。こうすれば、二段目以降は内側に傾いて、自然とドーム状になる…という仕掛けだ。
一段目を並べてから、再び…ブロックの切り出しにかかる。
これが、面倒くさい。
複数人で作業分担すれば、効率的ナノだが…ブロック切り出し職人のアト、ブロック運び職人になり、ブロック積み上げ職人になる。
その度に、ウロウロして…面倒くさい。

二段目は、30×30×25cmぐらいのブロックを切り出し、そこいらに並べておく。
ブロック切り出し場から這い出して、一段目の上にテキトーに配って行く。
そのアト、イグルー内に入って、密着させる為…接着面をフラットにノコギリで削って、重ねる。隣り合わせになるブロックも、接着面を削って密着させる。
頭頂部を削ってあるから、二段目は内側に少し傾いて重なる。

本格的なイグルーは、このように一段目二段目と重ねるのでは無く、螺旋状にするらしい。
その方が、早く効率的に、美しく、強度のあるモノが出来るそうだ。
ま、初めてのイグルー制作なので、今回はブロック塀方式だ。

二段目を組み上げたトコロで、やっとこさ…現場監督から許可が出たので一服する。
兎に角、ブロック切り出し作業が、見掛け以上に重労働だ。
圧雪のある深さまで掘り下げつつ、キレイなブロックを切り出せるよう…ショベルで頭頂部をフラットにして、スノーソーでキコキコやる。
この…スノーソーを差し込んで挽く作業は、今までに無い感触で楽しいのだが、それを力まかせに引っ張り出すのが大変だ。
余り力を入れると、ブロックが崩れるし、分厚い手袋(ミトン)をしてるから…隙間に指をねじ込む事も出来無い。
ユサユサ揺すりながら、少しづつ手前に引っ張って行くのだが、地味でキツい作業になる。
試しに…隙間にショベルの先端を差し込んで、テコの要領でブロックを浮かせてみたら、なんなくブロックが手前側に引き出せた。
うーん、なんせ…初めてだから、試行錯誤の繰り返しナノだ。
効率的で楽な作業形態を探りながら、アレコレ試しつつ、失敗したり、勢い余って…すっ転んでみたり、ふてくされて…ブロックを蹴飛ばしてみたり、腰をさすってみたり、考えてる振りしてサボってみたり…(コラコラ!)

あ、今更ながらに気付いたのだけれど…特にイグルーに興味の無いヒトは、こんな日記読んで楽しいのかな?
一部のイグルーマニアな二名だけ(誰とは言わんが、本人は分かってると思う)喜んでんじゃないのかな?

さて、そうやって4段目まで積み上げると、ブロック壁は胸の高さにまでなった。
あとは、屋根部分を塞げば良い。
因みに、イグルー内部の床からもブロックを切り出して80cm程掘り下げてある。
んで、そこで…拙者は衝撃的な事実に気が付いた。

イグルーから出られないノダ!
4段積んだブロック壁は…もう、乗り越えられる高さでは無くなっているノダ!
うむむむ…これは、困った事態になったぞぉ~
自分で作ったイグルーに閉じ込められて遭難か?
因みに、イグルー内部には作業道具のショベルとスノーソーしか無い。非常食のチョコレートひとかけらも無い。
昼飯食って無いから、お腹はペコペコだ。
勿論、ビバーク装備も無い。
琥珀ヱビスも、ザックの中だ。
万事休すっ!!

しかし、ご安心召されい、皆の衆。
イグルーに知識の無いヒトには、ピンチに見えるだろうが…事前学習に余念の無い拙者には、全て想定内である。
おもむろに…ショベルを手にした拙者は、掘り下げた(雪面より下)部分に横穴を掘り始めたノダ。
つまり、脱出口を開けると同時に、イグルーの出入り口を開削しようというノダ(これが、普通らしい)。
その為に、外側も外壁間近まで掘り広げてある。
硬く締まった雪を、慎重に掘り進める。
余り大胆にやると、せっかく積み上げたブロックが崩れる可能性があるので…少しずつ少しずつ、慎重に。
トンネルは、重量(重力)を分散させるように…アーチ状に削って行く。
ヒト一人分が腹這いになって通過出来るぐらいの横穴が貫通し、外界が見えた(ちょっと、嬉しい♪)。
もぞもぞと匍匐全身して外に出ようとしたら…途中で引っかかってしまった。
今更ながらに、オノレの巨体を恨めしく思う。
再び、もぞもぞと後退し、も少し横穴を広げてやる。

とりあえず…無事に外界に出られたので、遅めの昼飯にする。
メニューは相も変わらず…「鍋焼きうどん」だ。
昨年の秋から、ず~っと「鍋焼きうどん」が続いている。
棟上げは、まだだが…「琥珀ヱビス」で乾杯する。
兎に角、腹が減って…力が湧かない。
途中まで出来上がったイグルーを眺めながら飲む「琥珀ヱビス」が、なまら…美味い♪(いつも美味いけど…)

食後、屋根部分の制作に取り掛かる。
ここからは、ネットで見つけた…元北大山岳部のイグルー制作のベテランのサイトを参考にさせて貰う。
キレイな円形に積んだ4段目から、突然…多角形に変化する。
複雑な天井部分を簡略に済ませ、制作時間短縮を狙った…オリジナル技術らしい。
経験者だけが知る裏技だ。
15×40×8cmの細長い形に切り出したブロックを、内径を跨ぐ格好で多角形に外側から組んでやる。
最初は八角形、次に六角形にと組み、三角形になったトコロで、薄く大きく切ったブロックで塞いでやる。
爪先立ちで背伸びして、やっと届く高さナノで…バランスを崩して、イグルーに倒れ込まないよう気を付ける…おっとっとっと~(危ない危ない…)

じゃじゃ~ん♪
遂に、イグルーが完成した。
とりあえず…横穴から中に入ってみる。
昼飯食ったけど、つっかえ無かった。
おぉ~!
屋根がのると、それだけで立派な家のようになり…感動モノだっ。
身長183cmの拙者が立っても、まだ天井に余裕がある。
雪洞には、圧迫感が付き物だが、イグルーには…それが無い。
床に座って、天井を見上げてみる。
重なり合った…純白というより、なんとなく青みがかったブロックが、外光を透かして光っているように見える。
青と白のグラデーションを纏った薄光は、神秘的な美しさを持って視界を覆っていた。
雪洞が胎内の安堵感をもたらすならば、イグルーはバロック建築様式の教会の洗練された静謐さを醸し出している…ような気がする。

実働6時間の大作が完成した。
やっぱり、完成棟上げ式の為に「琥珀ヱビス」は、残しておくべきだったな…と少し後悔した。
タバコを吹かしながら、ゴロンと寝転がると…飽きる事無くゲージュツ的ですらある天井を見上げるのであった(暗くなるから、早く帰りなさいっ)。

おわり。

【写真1】基礎となる一段目を並べる。
【写真2】二段目完成。三段目のブロックも切り出す。
【写真3】完成したイグルー。ショベルとスノーソーのみが職人の道具だ。
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歩き慣れたアプローチの林道跡を歩いていた。
噎(む)せ返るような草いきれの中を、10分も歩くと汗が滲んできた。
入渓地点と決めた砂防ダムまでは、登山口から1km弱程ある。林道脇には幾つも「発寒川」に下りる踏み跡があり、何処から入渓しても良いが、砂防ダムで一旦林道へ戻るしか無い為に、砂防ダム入渓は真っ当な選択に思える。
手稲山登山道の「布敷の滝」手前の「二股」と呼ばれる…廃道となった旧登山道との分岐がある場所から入渓する人達も多いというが、そこまでのつまらない登山道歩きに耐える忍耐力は、今の我々には無い。
兎に角、一刻も早く涼しい沢に入りたかった。

西区平和にある「発寒川」は、初心者の沢登り練習には最適の沢だと、良く云われている。
市街地からも近く、ロープを使わねばならない滝にも、シッカリした巻き道があり、滑と滝と函(ゴルジュ)と釜が連続する…面白い沢であるらしい。
沢は、手稲山登山道に沿って流れており、登山道からもチラホラと沢の様子が見下ろせる。
今迄、その涼しげな風景を登山者として眺めていた。そこを歩こうという発想すら無かった。
時折、ヘルメットを被った沢登りの人達を見掛ける事もあったが、あくまでも他人事として捉えていたのが正直なトコロだ。

沢登りなど素人が手を出せる代物では無い…そんな諦観があったし、特別な技術や知識、装備が必要な特別な遊びだと思っていた。
沢登りをやらない、数多くの人達と同じように。
しかし、3週連続で沢を歩いてみて思うのは…沢登りは、そんなに敷居の高い遊びでは無いという事だ。
登山で培った歩き方や、最低限の装備や、読図能力があれば、敷居は更に低くなる。
簡単な岩登りの技術が必要な箇所もあるにはあるが、そそり立つような岩壁を登るワケでは無いし、目も眩むような高さなんて無い、例え落ちても下にはタップリと水があり冷たいだけで終わる事の方が多い。
技術的に難しい滝やゴルジュには、巻き道が作られている事が多いし、難しい下りも林道や登山道が使える沢もある。

拙者の、この…沢登り日記(遡行記というのかな?)を読んで、「また、大変な事をしているな~」と思われている諸兄に言いたい。
沢を遡行している間の、ほぼ9割はニタニタ笑っているノダ。
残り1割は、爆笑している。
つまり、常に笑いが止まらない状況が続いているノダ。
試しに、他の沢登りのブログを検索してみれば良い。
イイ年こいた…オジサン、オバサンが笑っている写真しか見当たらない筈だ。
川遊びが堪らなく楽しい事は、子供の頃を思い出せば容易く解る筈だ。
普段…むっつり難しい顔をしている大人が、例外なく子供のような笑顔になるのが「沢登り」ナノだ。
勿論、この「発寒川遡行」も笑いが満載の行程だった。
ここに記すのは、その…ほんの1コマに過ぎない。

入渓後…いきなり、テクニカルな遡行が続く。
沢に配置された岩が巨大だ。
「手稲山」自体が岩の塊みたいな山だから、自ずと沢にも岩塊の破片となる岩が多く、絶える事無く連続する。
時折、現れる滑床の規模は小さいが、小滝と滑が交互に現れ、全く飽きない。
昨夜夜半に降った雨のせいか、水量は心持ち多目だ。
曇り空からは時折、雨の気配を感じるが、こちとら…濡れる気満々だから気にならない。
生憎の天候に、毎週末満車になる「平和の滝」駐車場もガラガラだった。
人気の沢の筈だが、今日は我々以外に入渓者は居ない模様だ。
だが、岩には分かりにくいが…踏み跡が幾つも残り、ビッシリ苔の付いた岩も人間が足を置いた場所だけ、苔が削られている。
積雪期には「迷沢山」への渡渉部(スノーブリッジ)がある「送電線広場」を通り過ぎ、更に上部に進むと倒木が増え、沢は野性味を増してくる。
連続する小滝には、それぞれに親切に巻き道が付いているが、我々は敢えて…それを使わない。
とある…ゴルジュ状の釜を持った小滝で、「S隊員」が難しそうな「へつり」に、遊び半分、修行半分でチャレンジする。
拙者は、対岸の易しいルートでカメラを構える。
「よしっ、ここは…オイシイとこをバッチリ押さえるから、任しておけ♪」と、期待にワクワクさせながら、ファンダーで「S隊員」を追う。
濡れて滑りやすくなった岩には、殆ど足掛かりは無い。
手のホールド頼りに体を支えながら、1cm程の足掛かりに足を置いた瞬間…

ドボンっ!!
「ひぃぇぇぇぇぇぇ、冷たい~♪」(何故か嬉しそう)
「わはははは♪」(爆笑)
見事落下した「S隊員」は、函を下流へ泳ぎ、岩の上に這い上がった。
いやはや、期待を裏切らないヒトですね~アナタは。
バッチリ、オイシイとこを頂きました。

3時間近く遊びながら…登山道「二股」の近くに到着し、補給食のおむすびを頬張る。
近くには入渓ポイントを示す、ピンクテープがある。
ここまでも結構面白かったが、ここからが「発寒川」の核心部が始まる。
登山道を歩けば、わずか小一時間の距離に我々は、3時間近くを費やしたノダ。
それだけ見ても、如何に…その行程が面白かったか分かって貰えよう。
「初心者向けの練習に最適の沢」だって?
何を仰いますか。もしかしたら、今迄に行った…どの沢よりも楽しいです。
こんな近所に、こんなに楽しい場所があったなんて!

一人だけ寒そうにしている「S隊員」に促され、遡行再開。
春先にはデブリ(雪崩の堆積物)で埋まる急峻な谷に挟まれた場所を通過すると、一本の倒木にビッシリ「平茸」(ヒラタケ)が付いているのを発見した。
「S隊員」を手招きして呼び、山の恵みを採集する。
二人で食べ切れない程の「平茸」を収穫し、遡行再開。
そりゃあ、こんな寄り道ばかりしてれば進まない筈だ。

いきなり、小滝地帯が始まる。
連続する小滝は、各々深い釜を持ち見事だ。そこかしこに魚影が見える。
3m程の小滝が二段になり、激しく水しぶきを跳ね上げている。
取り付く前に、進むべきルートを目視確認し、シュミレーションする。
自分の技量と相談し、ルートを選択する。
自分の技量は、実際に落ちてみない事には分からない。
「行けそう」に見えても、アタマの中で見事に登りきるイメージが見えても、実際に取り付くと意外に滑りやすく、足掛かりに見えた出っ張りも、体重をかけるには小さかったりする。
三点支持で壁にへばり付き、次の手掛かり足掛かりを探している内に力尽き…ドボンとなって初めて、自分が通過可能な難易度かどうか判断出来るのだ。
言わば…自分の技量を、身を持って試してみて認識するしか無いノダ。

そんな我々の前に現れたのは、立派なゴルジュで…巻き道が右岸上部に切られており、一筋縄では行かなさそうな難所であった。
見た限り…殆ど足掛かりは見当たらない。
しかし、こ~ゆ~ゴルジュを、両足を両壁に突っ張りながら通過している写真を見た事がある。
ふと…行けそうな気がした。
だが、大抵の場合「行けそうな気」がする場所は「行けない」場合が多い。
「そうな…」と言ってる時点で、確信は無いと言ってるも同じだからだ。
日本語として正確に表現すれば…「もしかしたら…行けそうな気がする」である。
だが、自分の技量を過信するワケでは無いのだが、予感めいたヒラメキが(何の根拠も無いのに)芽生える瞬間がある。
勿論、瞬時に…落ちても怪我しない深い釜がある事は確認する。
内心…「落ちるだろ~な~、落ちたら冷たいだろ~な~」と考えている。
半笑いのまま、ゴルジュに取り付く。

先週の「黄金沢」で、釜を泳いだおかげで恐怖感は感じ無かった。
むしろ、泳いだ時の気持ちよさを思い出して…「落ちるかも知れないな~。ま、落ちちゃってもイイかな~。落ちた瞬間をカメラで押さえてくれれば、オイシイな~」と、半分以上落ちる気になって、振り返った「S隊員」がカメラを構えているのを確認すると、変に安心したりして…(落ちる気満々だろ?)

狭い…幅1m50cmぐらいのゴルジュの壁に両足を突っ張ってみる。
沢靴は壁をシッカリとグリップしているが、ズリズリと進んでみると…奥に行くに従い微妙に幅が広がっている。
めいいっぱい足を広げても、ギリギリ届く幅だ。
バリバリの昭和生まれだが、これでも…足の長さには自信がある。買ったGパン(この呼び方だけで、既に昭和だ)の裾を切った事が無いのが密かな自慢だったりするノダ。
しかし、拙者は認識した。
足の長さは足りるノダ。
長さは足りるが、股関節がこれ以上広がらんっ!!
う゛…身動き出来ん。
にっちもさっちも行かなくなった。
どしよ?
確か…こんなTV番組があったよな?
肉体自慢のアスリートが、様々なアスレチック的な障害をクリアして行く…確か「SASUKE」だっけ?
あれで、似たような障害セクションがあった筈だ。
確か…こんなふうに、両手両足で突っ張ってたシーンを見た記憶がある。
拙者は、両手を左岸の壁に、両足を右岸の壁に突っ張ってみた。
おお♪出来たぁ!!
出来たけど、この姿勢で…どうやって進んでいたかを見た記憶が無い。
多分…ビールのツマミの「鰹のたたき」を頬張っていて、見逃したノダ。
うむむむ…万事休すっ!!

ドボンっ!!
うひゃあ、冷た~い♪(何故か嬉しそう)

足が付く深さだったので…ゴルジュの出口の下流方向に、胸まで浸かりながら引き返しつつ「S隊員」を見ると、カメラ片手に大爆笑していた。


その先に現れる沢の二股は、左股の本流に進む。
暫く進むと…目の前に、今回のゴールと決めていた大滝が現れた。
ほぼ…垂直に流れ落ちる、高さ10mはありそうな美しい滝だったが、山登りで頂上に立ったような感動は無かった。
滝の右岸に高巻いている踏み跡があった。滝の上部の様子が気になったので、藪に掴まりながら登ってみたが…期待したような桃源郷は無く、平凡な沢だったので、さっさと帰路に就いた。

下りながら、気になっていた…魚影が見えた釜に竿を出してみる。
25cmクラスのヤマメが二匹連れた。
先程採った「平茸」と「ヤマメ」で、今夜のオカズが揃った。
釣り上げたばかりのヤマメ二匹を、片手にぶら下げながら…退屈な登山道を「平和の滝」へ下山した。
駐車場には、我々の車だけがポツンと残されていた。

「沢登りの練習に最適な発寒川」だって?
丸一日遊べる…こんな面白い沢は、なかなか無いんじゃないか?
少なくとも、我々にとっては最高に楽しめた沢だった。

おわり。

【写真1】両足を突っ張ってみる
【写真2】両手両足で突っ張ってみるが、にっちもさっちも行かなくなって…
【写真3】ドボンっ!!うひゃあ~冷たい♪

連続写真でお送りしました。
【写真提供S隊員】