いやはや、今年の雪山シーズンは殊の外…短かった。
…と思っていたら、このタイミングで新雪が降ってしまい、図らずもラッセルを味あわせて頂き、筋肉痛になっておる…「頑なに登山道を歩かない登山家」のもじょでございまする。
暖かい日が続き、里山も…そろそろ藪が立ち上がる頃ナノで、今回は久し振りに「空沼」に出掛ける事にした。
…と言っても、トレースのある一般ルートなんか歩いても、もう満足出来ないカラダになってしまったので、一昨年ルート開拓した「万計沢」と「湯の沢」に挟まれた尾根ルートを攻める事にした。
このルートは、昨年…かの「犬橇プレイ」で、イグルー泊を目論んで、敗退したルートでもあるのだが、個人的に…「万計沼」のある台地に上がる複雑な地形の探索をしたかったノダ。
「空沼岳」は夏山シーズンになれば、沢山の登山客で賑わう…お手軽な初心者向けの山だと思われがちだが、積雪期にバリエーション・ルートで歩くと、その複雑な地形にアタマを悩ませる難しい山なのである。
その原因は、大規模な地滑り地形にある。
一般ルートがある「万計沢」沿いのなだらかな地形は、嘗ての地滑りの跡であり、単純な「尾根」と「谷」で構成される山岳地形とは、かなり異なった様相を示している。
「雪山ガイド」にも、「万計沼」から「真簾沼」に上がる段丘と、その上の緩斜面の森は「ベテラン泣かせ」と記述されているように、単純に起伏を辿れば良いというものでは無い。
一般ルートを外れて北寄りの緩斜面の森に踏み込むと、至る所に新旧のルート・マーカーが散見出来る事も、その証左である。
さて、今回は距離もある行程ナノで、のんびり…「朝ドラ」を見てから出発というワケにはいかないので、「真駒内」からの始発パスに乗って「空沼二股」へ向かう。
最終除雪地点の「空沼林道」入口の橋に到着すると、昨年秋に補修されたという橋の手前から、右手の「湯の沢林道」に踏み込む。
車が一台停まっていたが、一般ルートから入山した模様だ。
新雪が積もっているが、その下はボコボコの最中雪で、歩きにくい事この上ない。
新雪に隠れているが、古いスキーのようなトレースがある。どうやら…スノーモービルのようだ(洞爺支笏国定公園内だから、モービルの走行は禁止されているんだぞぉ、バーロー)。
1時間弱掛けて取り付きポイントの、嘗ての造材置き場らしき場所に到着。
「湯の沢」を覗き込むと、ちょうど…滑(ナメ)地帯が始まる曲折部が見えたが、雪崩のデブリに埋もれていて、流れは隠されていた。
「湯の沢林道」上部の二股あたりに下山出来ないものか…と、考えてみるが、枝尾根合流点が見つかるか、どうか…。
ま、上に行ってから考えよう。
さて、造材置き場奥の斜行する作業道跡らしき幅員を利用して、尾根に乗る為に斜面に取り付く。
新雪の下は、良く締まった堅雪があり、見掛けとは違って意外に楽に歩ける。
尾根に乗ると、昨年…イグルーを諦めて、天幕泊した見覚えある場所に辿り着いた。
結構…笹が立ち上がっていて、積雪は50mを切ってるかも知れない。
尾根上は5m/sぐらいの西風が吹いていて、快晴だった空にも雪雲が入り始めていた。
尾根上を登行し始めると、暫くは緩斜面の疎林地帯が続く。
尾根上の分かりやすいルートなので、ピンテ(ピンクテープ=ルート・マーカー)は打たない。
この尾根ルートには、札幌近郊の山には珍しく、全くルート・マーカーの類いは見受けられず、ネットにも山行記録は見当たらないが、良く良く観察すると、所々に伐採用の作業道と思われる幅員はあるし、灌木を鉈で払ったような古い跡も見られる事から、嘗ては林業作業員が入っていたのだろう。
但し、雪山バリエーション登山のルートとしては、使われた形跡は見当たらない。
初登では無いにしても、こういう…ヒトの痕跡の無い山を歩くのは、気分が良いノダ。
緩斜面地帯が過ぎ、少しづつ尾根の傾斜が増していき、尾根も痩せ始める。
左右から枝尾根が合流し始めるが、地形図上のどの尾根かは同定するのは難しい。
右手の深い谷筋が、下山に使おうとした二股の谷のようだが、確信が持てない。
一応、マーカーを設置しておく(下山時に回収)。
1時間程登って、二つ目の小ピークに乗ったトコロで休憩する。
テルモスのお湯で日本茶を淹れ、「御勝手屋」の羊羹で補給する。
左手の谷が登山道のある「万計沢」だが、こちら側の斜面も気になる。
尾根上は、巨大なダケカンバやミズナラの大木も残っているが、斜面は概ね二次林だ。
この小ピークの下には、作業道跡と思われる幅員もあった。
先程、大型の動物の足跡があったが、新雪を吹き飛ばして確認したら、蹄の跡が見えたので、どうやら…蝦夷鹿のようだ。
そろそろ、羆ちゃんも穴から出てくる季節だから、厳冬期のように無警戒に歩けなくなる。
そう言えば…昨年、沢登りの下山時に「空沼林道」で、オスの羆ちゃんにも遭ったし、「湯の沢林道」には酪農学園大学の研究者が、羆の個体調査をしているという赤外線センサーと、体毛を取る為と思われる有刺鉄線を巻き付けた丸太が設置されているのを先程見掛けた。
昔「真簾沼」で天幕泊した時も、朝起きたらテン場の草付きに真新しい寝床と糞が残っていた事もある。
こんなに沢山の登山者の入る「空沼」でも、羆の生息域ナノだ。
高度を上げると、隣り合う尾根を吹き抜けた西風が強まり始めた。
倒木も増え始めて、それを…かわしながらのルーファイが必要になってきた。
三つ目の小ピークには、尾根上に何本もの倒木が重なり合って、一番アタマを悩ませる悪場だ。
前回は、左手の密集した樹林帯を巻いて、肩に乗った筈だが…良く観察すると、もう少し楽そうなルートもありそうだった。
ふと足元を見ると、蝦夷雪兎のトレースがあり、上手い具合に倒木をかわしながら小ピーク上に上がっている。
ここは、ウサ吉君を見習って、彼のトレースをなぞってみよう。
なるほど、傾斜の緩い弱点を上手く繋いで、小ピークに上がれた。
流石は、山を良く知ってる…ウサ吉君だ。なかなか、勉強になりました。
三つ目の小ピークを乗越すと、平らなコルを繋いで、866Pの登りに掛かる。
結構な急斜面だが、良く締まった雪のおかげで、さほど苦労せずに866Pに上がった。
さてさて、ここからが…本日の目的だ。
この上の「万計沼」がある台地の末端が崩落して、大きな段丘を作っている。
一般的に「崩落崖」と呼ばれる段丘から崩れ落ちた岩屑が散乱して、その下部に複雑な地形を作ったのだ。
地形図上は、概ね平らだが…至る所に谷地やポコがあり、地形図を見ただけでは進路を読みとるのは難しい。
前回は、コンパスを切りながら段丘の下部に辿り着いて、段丘を攀じ登ったが…恐らく、一番単純で効率良いルート採りは、前回のものだろうが、厳しい段丘越えをせずに沼に抜けるルートは考えられないだろうか。
地形図を良く見ると、このまま前進すると…「御簾」から「万計沼」へ続いている林道にぶち当たる。
この林道は、小屋番のオジサンが車で通って来る道でもあり、又…「湯の沢」を遡行した場合にゴールとしている林道でもある。
林道は、件の段丘を上手くかわして、沼へ向かっている。
少々遠回りになるが、偵察してみる価値はある。
866Pから、ほぼ真西に向かって小高い場所をなぞって進む。
右手には「湯の沢」がある谷筋が見下ろせるが、勿論…沢は雪に埋もれていて流れは見えない。
だが、急峻に落ち込む谷筋に、あの…ゴルジュがあり、15mの直瀑がある筈なのだ。
一瞬、「あの滝は、どうなってんだろ?」と見に行きたくなるが、我慢する。
途中、Co850の等高線が狭まってる辺りのコルで、10m程の段丘に行く手を遮られた。
むむむ…このコルが落ち込んでる右側の谷あたりに滝がありそうだ。
ちょっとだけ覗き込んでみたが、かなりの落差で落ち込んでいる斜面は確認出来たが、その先は吹雪模様で見通せなかった。
段丘を右手から巻いて乗り越すと、前方に怪しげな段丘があった。
あの上が林道かも知れんな。
攀じ登ってみたが、そこに林道の幅員らしきものは無かった。
距離的には、そろそろ…現れてもおかしく無いのだが、見落としてしまったかな。
更に上に進むと…「林道めっけ♪」
沢登りのゴール地点から、沼寄りに50mぐらいの林道を見つけた。
見覚えある林道を沼に向かうが、途中…何度か林道を見失った。吹き溜まりのせいで幅員も判別出来ないぐらいに積雪しているのだ。
雪に埋もれた林道探しゲームを楽しみながら、30分で「万計沼」に到着した。
未だ結氷した沼面に、山スキーのトレースが一本付いていた。
記念撮影をして、昼飯にしようとしたら雪が本降りになってしまった。
仕方ない、「万計山荘」に入ってランチにしよう。
小屋の横の開放されている入口から、入ると…中には誰も居なかった(当たり前だ)。
小屋の中は冷え冷えしていて、殆ど外と変わらない気温だった(ー7℃)。
スノーブーツを脱いだ足が冷たい。
小屋に備え付けのノートには、年末に宿泊した外国人3人パーティーの記載が最後だった。
【3月23日 湯の沢林道をアプローチに使って、尾根ルートのバリエーションで上がってきました。なごり雪が本降りになったので、ランチに使わせていただきました。
今日は「すき焼きうどん」だ~(ビールもあるよ)
下山は、一般ルートを下りても、つまらないから…どうしよう?考え中。 mojo】
と書き込んで、テーブルと椅子の文化的な施設を借りて、「すき焼きうどん」(九条ネギ入り)を作る。
気になる…春の選抜高校野球中継をラジオで聴きながら、ごくごく&ふはふはずるずる…を頂く。
さてさて、下山は…どうしよう?
山スキーのトレースが付いた一般ルートを下山しても面白くないし、上って来た尾根ルートを下りるのも芸が無い。
しかし、この山域には沢が3本もあるから…他の選択肢も考えにくい。
思い切って「空沼林道」側に下りる事も考えたが、土石流のせいで下流域の林道は至る所で崩壊してるし…
やっぱり、尾根ルートが妥当かな。
そうなれば、林道を引き返すのも面倒だ。
小屋の裏側の段丘を尻ボって、段丘下を北進して自分のトレースに復帰するのが、一番楽だろうな。
小屋を出発すると、段丘から下を見下ろす。
此処には、嘗ての…滝の迂回用のルートも切られていたが(地形図には記述アリ)、夏場は藪のせいで利用出来ない。
積雪期なら、造成した跡も判別出来るが、こちとら尻ボなのでルートは無視して、テキトーにダイブする。
段丘下の複雑な地形を、大体の方角を見当に北へ向かうと、10分も掛からずに、自分のトレースを発見した。
「トレース、めっけ♪」
ずっと雪が降り続けているので、2時間程前に付けたトレースは殆ど消えかけていた。
ま、尾根ルートは間違えようが無いし、変な枝尾根に入り込まない限り大丈夫だろう。
いつでも…尻ボれるよう、ウエスト・ストラップに尻ボをカラビナで繋いで、臨戦態勢を整える。
866Pを降りると、新雪が乗った緩斜面でも尻ボは良く滑った。
滑り過ぎて、加速が収まらず、必死で制動を掛ける。
登坂途中にピンテを打った…林道に下りる谷筋は、同定に自信が無かったので、取り止めた。
林道沿いに崖表記があったので、安全第一に自重した。
新たな下山ルート開拓は、次回以降の課題にしよう。
調子こいて、スタスタ下山したもんだから、帰りのバスの時間まで1時間もあった。
仕方なく退屈な舗装路を「芸術の森」まで歩いてしまった(ちかれたぁ)。
おわり。
【写真1】尾根ルートは、灌木も無く概ね歩き易い。
【写真2】久し振りの万計山荘。まだ2m近い積雪がある。
【写真3】小屋内ですき焼きうどん。京野菜の九条ネギがクタクタになって美味い。








