いやはや、昔から…「山ヤ殺すにゃ刃物は要らぬ 雨の三日も降れば良い」と申しますように、2週連続で雨の休日に見舞われ、すっかり凹んでしまい、山にも沢にも行けず、いじけて、ごくごくばかりの…「頑なに登山道を歩かない登山家」のもじょでごさいまする。
しかし、まあ…昨年も6月中は、殆ど沢に行けなかったように思うが、まるで…狙いすましたように拙者の休日に雨が降るというのは、一体どうなっておるのだ?
責任者出て来いっ。ドンっ。
とりあえず、気を取り直して、3週間振りに降雨予報も無かったので、相方と相談して「星置川」に向かった。
「星置川」は、ganさんの沢登りガイドブックにも記述があるメジャーな沢だが、我々は勿論…そんな沢には目もくれない。
我々が目指すのは、「星置川」の支流になる「滝の沢川」だ。
「乙女の滝」がある沢と言えば、分かりやすいだろうか。
「手稲山」の北にある「星置川」は、今は整備された河川だが、有史前は三角州を形成する程の水量があり、JR「星置駅」の裏側に高さ30m程の河成段丘(川が削り取った段丘)を作るぐらいの暴れ川だったそうだ。
その中流域には、「星置の滝」や「乙女の滝」があり、観光名所になっている。
嘗ては、この周辺には「手稲鉱山」があり、アジア1位の産出量と言われた金を始めとする様々な鉱物を産出した。
昭和46年に採掘自体は終了したようだが、周辺部は沢山の産業遺跡が残り、今もって「三菱マテリアル」所有の私有地であり、北海道新幹線もこの辺りに「手稲山」を貫通するトンネルを作って出てくるらしい。
「手稲鉱山行き」のJRバスに揺られ、終点の「手稲鉱山」で下車する。
バスから降りたら、待合小屋の前にデカいアオダイショウ(蛇ね)が居て、相方がビビりまくっている(蛇のほうがビビってるって)。
蛇は山の神様の遣いなんだから、なんかイイ事があるんじゃないか?
先ずは、入渓地点である「乙女の滝」を目指して自然歩道を進む。
一旦林道に出た所で装具を整える。
林道には工事用重機が入っており、新幹線工事に伴う林道整備をしているのかも知れない。
退屈な林道を暫く歩いて、「乙女の滝」に向かって、林道を外れる。
「乙女の滝に、乙女…居るかなぁ?」とワクワクする拙者に、「ここに居るョ」との相方の台詞は、さり気なく聞こえないフリをする。
滝に降りる登山道脇に、早速…コンクリートの基礎部分が残っていた。
工員住宅か何かの跡かな。
「乙女の滝」は、高さ7m程の見事なナメ滝で、巨大な滝壺を抱いている。
傾斜は緩めだが、手掛かりは殆ど無い…のっぺりとしたナメ滝だから、直登は難しいだろう。
濁った滝壺は、深さが知れず不気味だが、滝のスケールから想像するに3mぐらいの深さはありそうだ。
落ちても、滝壺にハマるだけだが、不気味な滝壺がおっかないので止めておこう。
滝の右側に倒木があり、アレを手掛かりに登れそうだ。
早速取り付くと、藪に隠れて踏み跡がある。
釣り人か、滝マニアか、廃鉱オタクかは知らないが、市街地に近い渓だから人は入っているノダ。
こんな観光名所の滝横を攀じっているトコロを滝見物の人に見られたら、何を言われるか…分からん。
このあいだ、「どさん子ワイド」で「星置の滝」と「乙女の滝」が紹介されたばかりだから、滝見物に訪れる人も居るかも知れん。
見物客が現れぬ間に、サクッと登って、滝の落ち口へ。
イイ感じのナメ床になっているが、直ぐ上流で平凡な渓相に戻っている。
ま、予想通りの展開だ。
いざ、遡行開始。
何の見所も無いまま、暫く進む。
渓に入ると、気温は15℃程になり、歩いてる分には汗が滲むが、休憩したり立ち止まると少し肌寒い。
前方に白濁したしぶきが見えたが、巨大な堰堤(砂防ダム)だった。
この堰堤を見ただけで、「星置川」の雨天の増水具合が想像出来るというものだ。
右岸の鹿道を利用して、堰堤に乗る。
堰堤の上流は、広大な砂州になっている。
流れ自体は数mで水量も多くは無い。少し濁っていて、河床の石はヌルヌルしていて、浮き石も多い。
左右から時折、枝沢が合流するが、目立った見所(アトラクション)は無いまま、小さなギャップと短いナメが現れる。
渓と平行して走る林道がある筈の左岸には、鉄分で赤く染まった小滝や、油分が染み出した露頭が現れ、鉱山の山だと実感する。
渓の中には、嘗ての鉱山の痕跡か、錆びたH鋼(トロッコのレールかな?)や、ワイヤーや導管の欠片が散見出来る。
林道と交差する橋をくぐった所で休憩する。
休憩後…出発すると、相方が木の端材で作ったような剣を拾った。
こ、これは…伝説の勇者のみが持つ事を許されるという、伝説の剣、エクスカリバー!
…である筈が無く、釣り人が暇つぶしに製作したオモチャだろう。
相方は伝説の剣を気に入ったのか、剣を片手に遡行するが…暫くしたら、邪魔になったらしく、河岸の砂地に剣を突き刺して捨ててしまった。
勇者の剣を、そんなトコに捨てんなっ(取りに行けョ)。
暫く進むと、両側の壁が立つ狭い谷が前方に見えた。
右に屈折していて先は見えないが、経験からすると…恐らく、滝か何かがある筈だ。
屈折部を曲がると、予想通り…6m程の滝が現れた。
浸食された節理のような…階段状になっていて、直登出来そうだ。
写真を撮ったあと、取り付いてみたが微妙に手掛かりが足りない。
暫く観察してみるが、浸食された上部が滑らかでホールドもステップも見当たらなかった。
滝横をスルスルと登ってしまった相方が待っていたので、同じルートを、渋々使って拙者も滝を上がった。
うむむむ…もう、この先に滝もありそうに無いから、シャワークライミングしたかったのにな~。残念だっ。
再び休憩し(休憩多いっ)、二股に辿り着いた。
さてさて、どうしよう?
地形図を見る限り、大した差は無いが左股には狭まった場所があり、何かしらのアトラクションは期待出来そうだ。
右股が本流だろうが、ここは敢えて左股を選択する。
巨大なエゾマツの倒木を潜り抜けると、渓の中に古いコンクリートの構造物の欠片が目立ち始めた。
この先に、何かしらの産業遺跡でもありそうだ。
すると、前方の小滝の上に滑らかなナメが現れた。
うむむむ…?
ナメ床にしては、滑らか過ぎる。
「わー、ナメだよ~」と喜んでる相方には悪いが、足元には同じようなコンクリートの欠片が落ちているのを、拙者は見逃さなかった。
近づいてみると、案の定…人工的に作られたコンクリート製の水路だった。
それでも喜んでる相方に、「偽ナメだからっ」と突っ込む。
水路は数十m続き、左岸には明らかに造成された草地がある。
すると、その先で…唐突に、渓が消えていた。
作為的に渓の流れが直角に曲げられている。
曲がった先を覗くと、そこには…手堀りで掘られた深いトンネルが続いていた。
足元を見ると、嘗ての河床だったらしい沢形が続いていた。
その沢形を辿っていくと、深いゴルジュ状の函があり、5m程下にトンネルの出口と思われる穴がポッカリと開いていた。
これは…いわゆる、意図的に流れを誘導している誘導トンネルなのだろう。
以前、訪れた「積丹岳(我呂の沢)」でも同じようなものを見た事がある。
という事は、流れを誘導して迂回させねばならない理由があったという事だ。
沢形を戻ってみると、左岸に蓋をされた…嘗ての横抗の抗口があった。
隙間から覗いてみるが、トンネルの半分ぐらいが砂礫に埋まっていた。
なるほど、なるほど。
この横抗を掘る為に、河岸が造成され、迂回誘導トンネルが掘られたノダ。
迂回誘導トンネルが気になったので、ヘッデンを取り出して中を偵察してみる。
相方は、ビビっていたが、後ろから付いてきた。
トンネルは、10m程先で右手に曲げられていて、出口までは見えなかった。
ちょいと、この先を覗いてみたい気もするが…相方がガチでビビっているので、引き返す事にする。
廃鉱オタクは、こういうトンネルや廃抗の中まで探索しているようだが、トンネルというのは…おっかないものだ。
落盤とかの事故以前に、暗闇に対する恐怖が先立ってしまう。
ケイビングと称して、洞窟を探検するツアーもあるようだが、タイの事故のように出られなくなってしまったら、どうしようも無い。
昔読んだ…「トム・ソーヤーの冒険」の一節に、洞窟探検に出掛けたトムとハックが洞窟の中でお尋ね者と出くわしてしまい、暗闇の中を必死で逃げるというのがあって、少年もじょは心底ビビってしまった記憶がある。
結局、物語の中では、そのお尋ね者は洞窟から出られずに、中で衰弱死(餓死だったかな?)していまい、死体となって発見された。
それが、トラウマとなり…拙者は今も洞窟がおっかない。
ケイビングなんて、バンジージャンプ以上に無理だ。
「ケイビングかバンジージャンプの、どちらかを選べ。さもないと…撃ち殺す」と脅されたら、「シャワークライミングで許して下さい」と土下座してしまうだろう(なんのこっちゃ!?)。
トンネルを出た我々は、嘗ての沢形を辿ってトンネル出口に迂回した。
出口は深い…人工的なゴルジュ状になっていて、ロープを出して河床に下降するしかなさそうだったが、左岸の壁を見上げると、誰かが残置したらしい一本のロープが下がっているのを発見した。
以前に遡行した…釣り人か廃鉱オタクが設置したものだろうか。
ロープは、かなり古そうで体重をかけるのは、おっかないので灌木に掴まりながら、巻く事にした。
ガイドブックに載っていないマイナーで、市街地に近い沢だと思ってナメていたが、色々なアトラクションが続いて、なかなか…面白くなってきた。
再び流れの中を遡行し始めると、ナメ滝が現れた。
直登を試みるが、ここも手掛かりが少ない。
流れは細くなって、水量もさほど無いのだが、それ故に岩がぬめっていて足場も取りにくいノダ。
仕方なく滝横を攀じる。
その後も、幾つかの小滝が現れたが、難しいものも無かった。
遡行を始めて3時間、そろそろ腹も減ってきた。何処かイイ場所でランチにしたいな~、と思っていたら、右岸に縦抗の櫓が見えた。
そして、その先で渓は林道と交差し、唐突に真新しい人工的な水路となり途切れてしまっていた。
林道に上がると、かなり立派な幅員があり、重機で良く踏まれていた。
上流を偵察してみたが、流れは更に細くなり、深い森に続いていた。
しかし、そこで…遡行スイッチが切れてしまった。
この左股のある沢形を遡れば、ちょうど…パラダイス・ヒュッテに辿り着くようだが、今更…藪漕ぎをする元気は無い。
「手稲山」本峰を見上げる…開けた林道脇でラーメンのランチをとり、デザートの「富良野メロン」を二人で半玉食べて、林道をぶらぶらしながら下山した。
おわり。
【写真1】登れそうで登れそうで登れない滝
【写真2】ポッカリ開いた迂回誘導水路トンネル
【写真3】登ってそうで、結局登れなかったナメ滝








