北九州市防災フェスタ2023レポ | 上条武術研究所

上条武術研究所

プロレス・サンボ・合気道を経験。
月刊秘伝読者。
○現在の活動
・自宅ジムを開放(不定期)
・武術系、介護系の同人誌制作

北九州市防災フェスタ2023へ行って参りました。
行列が出来てます❕正直、驚きました。市民の防災意識も高いんだな~と感じました。

ちなみに過去の私の防災フェスタのレポはコチラ。
さて、今年の会場はこんな感じ。
昨年は、まだ新型コロナの感染を危惧してか、寒空の中ながら外での開催だったのですが、今年は西日本総合展示場に戻りました。室内なんで寒くない。

華やかな消防音楽隊。

北九州市の水害パネル。

パネル展示では、これが特に気になりました。
昭和28年に発生した足立山の土砂災害の跡。土石流で渓流に沿って発生する様子が分かります。
防災を学んでいると、知識としては知っていても想像がつかないケースが多々あります。
このような知っている地域の実際の災害の写真は参考になります。

災害用伝言板ダイヤルの体験。
災害時は通常の電話はまず繋がりません。SNSのほうが繋がるなんて話もありますが、災害伝言ダイヤルを忘れてはいけない。
で、171という番号を知っていても、使い方は知らなかったりします。ここで体験できたのは嬉しい。災害伝言ダイヤルを使用するため何が必要かもこの体験でわかる。
災害伝言ダイヤルはいつでも体験できるわけではないのですが、被災地域でなくても解放される日も定められていますので、その時に使ってみて、使い方の練習をしておきましょう。

消防ホースで作られたクリスマスツリー。
???
いや、何も言えません…。

災害車両の展示は花形。
自衛隊車両や消防車だけでなく、電話の移動基地車や給水車などの展示もありました。

救助訓練が見れるブース。これはカッコいい!
壁はそうやって登るんだ!と驚き。
あと、このブースの見所として、陸上自衛隊、航空自衛隊、消防局、海上保安庁と様々な機関が時間別に同じ場所で訓練をしていたところがあったかと思います。
訓練を実施している時、観覧席でそことは別の機関の隊員が「あれでやるんだ。」とか「ワイヤー1本?」みたいな話をしていたのが興味深かったですね。プロの方々も他の機関の救助方法が見れて、面白い取り組みだったんじゃないかと思いました。

軽石災害。
海底火山の噴火で発生する災害。直接的には関係ないですが、こういうのも知っておこう。

アンパンマンの凄さよ。
会場が行列のできるほどの多さだった理由がわかりました。この時間だけステージに人が殺到!開場後も行列ができていたのは、決して市民の防災の意識が高いからではない。アンパンマンショーが原因だ。
私は子供がいないので知りませんでしたが、アンパンマンの人気がマジで凄い!マジで!
ただ、アンパンマンを客寄せの目玉にして、子供達を防災が学べる場所に誘うのは本当に正解だと思う。


お笑い芸人のヒロシさんのステージもありました。
キャンプyoutuberとしての講演です。避難した後の生活とキャンプという分野は親和性がありますからね。そういう仕事もたまにあるとのこと。
このトークショーは、防災に使えるキャンプグッズ紹介という内容でした。

しかし、写真撮影禁止。やっぱり所詮はタレントさんだな。【防災】ですから、公共性の強い分野なのに写真撮影禁止は少し悲しい。
内容もファンのためのトークイベントのような趣で、ファンの方はヒロシグッズを掲げたりしていて楽しまれていた様子はありましたが、私のような防災を学ぶために来た人間としては、合間合間に挟まれる小ボケに「そんなのいらんねん、話を進めろよ!」と感じましたかね…。
いや、まだ会場がドッカンドッカンうけているなら小ボケをいれるのはいいんですけど、笑いはゼロでお笑いの営業のステージとしてみても厳しいステージでした。
防災の内容的にも、ヒロシさんに特段、防災の勉強をしている様子も感じられなかったので、少し物足りませんでした。

ただ、本人が言ってましたが「自分はキャンプをやっていただけで、防災の仕事はくるが、自分としてはキャンプと防災に通じるものがあるとは思っていない。」とのこと。なるほど、だからか。
いや…そう思っていたとしても、そんなこと防災のステージ上で言ったらダメよ!
まあ、ヒロシさんでイメージされる卑屈な性格からくる発言とも思われますが、その辺りの等身大な感じは好かれる要素なのかな~とも感じました。

一応、ヒロシさんのトークショーの中で拾えた情報は書き出しておきます。キャンパー視点からの意見はあまり聞く機会もないので貴重かもしれません。
・紐を用意するなら麻紐。紐として使えるし、焚き火の火種にもなる。ただ、災害の場合はガス漏れもあるから、安易な焚き火はしないほうがよいので、場合にもよるが、麻紐は紐以外にも火種という使い途があるわけだ。
・結束バンド。紐は防災の備蓄品としてリストに入ることが多いが、しっかり結ぶには技術が必要なので、結束バンドも良い。ヒロシさんはキャンプに結束バンドを持っていくそうだ。これって、実際に紐を使っている人ならではの発想ですよね。
・ヒロシさんは熊本地震の際にボランティアで被災地に行った。その時に避難所で感じのは、飯はあったが、水が足りなかったこと。水は飲み水だけでなく生活にも使うから。というわけで、簡易の浄水器、キャップがフィルターになっているタイプのものを紹介。
・キャンプ用のアルミホイル。普通のアルミホイルより厚く何回も使える。鍋としても使えるので、荷物が嵩張らない。
・サンダルのようなすぐに履ける靴。これはキャンプの経験というより、ヒロシさんの持論。防備だけを考えると頑丈な革靴がよいかもしれないが、災害時は咄嗟に動かないといけないケースもあるかもしれないのですぐ履ける靴のほうがよいと思っている。また、防災の準備として【枕元に靴を置く】とか言われることがあるが、枕元に靴とか置きたくないでしょ?サンダルとかスリッパ的なものなら置いていてもおかしくないんじゃない?という話。これは賛否があるかもしれないが一理ある。


ヒロシさんのステージの次は、北九州の大学による防災活動の報告会。何だったら私はこれが目的で来たところもあります。ちゃんと防災を学べたのはこの時間でした。

九州女子大学。栄養を学ばれている学生さんによる『北九州市防災備蓄食品を用いた災害食レシピ』。
北九州市と連携し、北九州市の備蓄を美味しい料理に変えるレシピの紹介していました。
確かに先日、私も別の防災イベントで北九州市の備蓄のパンを食べる機会がありました。これがクソ不味いのよ。私は防災レシピの必要性を感じましたね。

また、味だけでなく、栄養面にも着手しており、防災食というのは炭水化物が多い。そのため栄養には偏りがあるという。
メインの備蓄品に加えるべき備蓄は、スキムミルク、青魚の缶詰、乾燥野菜(切り干し大根、干し椎茸)、ビタミンミネラルが豊富なナッツ類、野菜ジュースなど。野菜ジュースはトマトも多く、調味料としても使える。
災害時、食事の時間だけでも楽しめるように防災食の意識向上を掲げていました。
確かに。被災時に食事が違えば、おそらく活力も沸くもんですよね。


西日本工業大学EWA(土木サークル)さんによる『楽しく防災を学ぼう』。
土木を専門に学ばれている学生さんで、災害に対してはインフラ整備などのハード面へのアプローチを得意とされているはずだし、実際の発表の中でも、コンクリート構造工学やGIS(空間情報で地図を解析する技術、Googleマップなどに使われている)の話などが出てきており、内容も少し専門性がありました。
なので、市民と接する活動は難しいところなのかな~と思いましたが、様々な活動をされていました。

・サーターアンダギーを作り、その捨てる油で波消しブロックの形のキャンドル作りイベント。
そう!僕の話になりますが、僕のほうは介護分野で小学生と関わることがありましたが、今の小学生ってSDGsをしっかりと学んでいるんですよ!だから、環境保全みたいなところを含めながらも、防災への関わり、差別への関わり、介護への関わりの話をしていく教育ってのが可能なんですよね。

・苅田コンクリートランド2023。セメント工場の見学。重機体験。セメントでコースター作り。クレーン車のラジコンとミニチュアの波消しブロックを使った護岸工事体験などのイベント。
凄いイベントだな。セメントのコースター作りって、可愛らしい感じですけど、セメントを練るところからやるんですって。なかなか普通じゃ経験できませんよ。
子供達への防災教育は、もしかしたらハード面から入ったほうが、ある種のロボットアニメのような感じでワクワクがあって良いのかもしれませんね。


北九州市立大学さん。
『防犯防災プロジェクトMATE』
防犯防災サークルで、警察や市役所と連携して、防犯防災のコミュニティを作るみたいな活動をされているのかな?
普通に文学部とか外国語学科とか言っていたような…。

まず内容よりも気になったのが、このマイクを持っている高橋さんという女性はしゃべりが上手い。ラジオのパーソナリティーや地方タレントで即戦力で活躍できるレベル。
普通の学生さんは原稿を読むだけの発表になるんですよ。介護の研修でも、講師が原稿を読んでいるだけのような喋りの時がある。勿論、それは悪くないんですよ。専門分野を学んでいるだけで、ステージで話す技術を学んでいるわけではないですからね。それが普通。
でも、こちらの女性は原稿の内容を、自分の言葉に置き換えて話をしている。台詞を読んでいるのではなく、内容を伝えている。そういう意味のしゃべりの上手さ。何時間でも飽きずに聞いていられるヤツ。多分、ステージに立ったり、人前で話す経験を、この若さで相当に踏んでいる方かと思います。

さて、内容のほう。
・あそぼうさい…市民センターなどで子供達への防災教育として行っているイベント。
実際に会場内でもブースがありました。
正直やっていることは、ダーツだったり、輪投げだったり、パターゴルフだったり、手作りボーリングだったりですよ。よくある手作りのレクリエーションですよ。
ただ、ゴルフを梅雨前線にみたてて、九州の土地に触れないようにするとか、輪投げの的が火災が発生した天ぷら油になってるとか、全てのレクでそういうアレンジがされています。
今の大人って、阪神淡路や東日本大震災で防災の重要性って理解している人が多いと思うんですよ。次の課題として、それを子供達にどう伝えるか?のステージに来ているのかなと感じました。あそぼうさいは素晴らしい取り組みです。

と、少し話は逸れますが、40代の僕らが子供の頃って、まだ大東亜戦争を経験した大人が40~50代くらいの年齢で生きていて、学校の授業とかで戦争体験を話していたんですよ。なんか、それに似ているな~なんて思いました。


そんな感じでした。



イベントを全体として見ると、災害に備えるというより【普段使いの物を災害に活用する】とか、考え方としては反対になりますけど【普段でも使える災害用品】みたいな…謂わば『備えない防災』がテーマにあったような感じもします。

また、アンパンマンの起用もそうですが、防災を防災として堅苦しく学ぶのではなく、遊びの中で学ぶような取り組みも多くあったなと思います。緩くなったとかふざけているとかじゃないですよ、この20年~30年で高くなっている国民の防災意識を、次世代に繋げるための意図があるのだと思います。

どちらにしても、防災が次のステージに進んでいるような感覚を覚えました。

最後にこれもそうですね。
会場で購入した木製のエマージェンシーカード。
災害時に自分の情報を記録しておくエマージェンシーカードも、単なる無機質なカードではなく、普段のキーホルダーとして身に付けていてもおかしくないデザインになっていたり。

防災は次のステージ…日常にどう溶け込むか?に進化していますよ。