コーポ・ア・コーポ(2023 日本)
監督:仁同正明
脚本:近藤一彦
原作:岩浪れんじ
撮影:山本英夫
美術:小林慎典
編集:渡辺直樹
音楽:加藤賢二
出演:馬場ふみか、東出昌大、倉悠貴、笹野高史、前田旺志郎、北村優衣、藤原しおり、片岡礼子
①生活感はない日常系ファンタジー
コーポという名前の安アパート。母親から逃れて隠れるように暮らす辰巳ユリ(馬場ふみか)、日雇い労働者の石田鉄平(倉悠貴)、女性のヒモとして生きる中条絋(東出昌大)、怪しげな商売を営む宮地友三(笹野高史)らが暮らしています…。
漫画が原作。原作は未読です。
大阪の(どこかよくわからない)下町のアパートの住人たちの、何も起きないようなそうでもないような、まったりした日常を描きます。
それにしてもどこなんだろうな…。鶴橋商店街が出てたし近鉄電車が走ってたようだけど、急に道頓堀になったり淀川になったりもしていたような。
オンボロアパートが舞台でみんな貧乏であるはずだけど、毎日とてもヒマそうで、昼間からアパートにいてボーッとしてる。
生活感はほぼない。ゆるい日常系ファンタジー…ですね。
②キャラクターは記号的
キャラクターはみんな、とても記号的です。
スカジャン着て金髪の女の子は母親がスナックに勤めてて、弟が「彼女に子供ができた」とか言ってくる。
ドカタの兄ちゃんは家でもニッカポッカ着てて、高嶺の花のお嬢さんと恋に落ちる。
ヒモの男は家でもスーツ着ていて、うっすい過去を語る。
じいさんはニコニコしながら売春の斡旋してる。
俳優はみんな良くて、彼らを見てるだけで楽しくはあります。
常に面白くもつまらなくもなさそうな表情の馬場ふみかは魅力的だし、元気でうるさい倉悠貴もいいし。
だらしない男をやらせたら最近ピカイチの東出昌大はさすがだし。笹野高史は言うまでもないし。
「ビリーバーズ」の北村優衣も、「元ブルゾンちえみ」の藤原しおりも良かった。
ただやっぱり、このストーリーとキャラクター造形では表面的になるのはいかんともしがたい。
いかに東出といえども…って感じではありましたね。
③煙草を吸う時間のような映画
ただ、だからと言って見るべきところがまったくないか…といえばそんなこともなくて。
ゆるい空気感自体を楽しむ日常系ファンタジーとしては、心地よい時間が過ごせたような気はします。
こんなアパートが現実にあったら、さぞ不快で居心地悪いだろうと思うけど。
映画の中のファンタジーの舞台としては魅力的で、そこで暮らしてみたいと思えるような求心力はありました。
本作ではみんながよく煙草を吸うのだけど、何というか…「煙草を吸う時間」のような映画だなあ、と。
特に何が得られるでもない。意味なく時間を潰してるだけ。何だったら健康を損なってさえいる…のだけど。
愛煙家にとってはそれなりに楽しい、かけがえのない時間で、何度もそこに戻ってきてしまう。そんな時間。
ユリが自転車に乗って大阪の下町を走っていく、その視点を追いかけていくシーンが印象的でした。
そんな「なんでかわからないけどいいシーン」は多かったように思います。
だらしない東出昌大の最近の代表作。
倉悠貴はこちらでもヤンキーな感じでした。
お嬢さん役北村優衣の体当たり。