The Nun II(2023 アメリカ)
監督:マイケル・チャベス
脚本:イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン アケラ・クーパー
製作:ピーター・サフラン、ジェームズ・ワン
原案:アケラ・クーパー
撮影:トリスタン・ニービー
美術:ステファン・クレッソン
編集:グレゴリー・プロトキン
音楽:マルコ・ベルトラミ
出演:タイッサ・ファーミガ、ジョナス・ブロケ、ストーム・リード、アナ・ポップルウェル、ケイトリン・ローズ・ダウニー、ボニー・アーロンズ
①シンプルなモンスターホラー
1956年、フランスの教会で神父が焼死。1952年のケースとの類似が指摘され、アイリーン(タイッサ・ファーミガ)は現地へ派遣されます。一方、アイリーンと共に生き延びたモリース(ジョナス・ブロケ)はフランスの女学校で働いていましたが…。
本作は「死霊館のシスター」のストレートな続編。主人公アイリーンをはじめ、登場人物も共通しています。
直接的なパート2であり、また元はと言えば「死霊館」シリーズのスピンオフであり…といったところから、必要以上に設定がややこしくなってる感もあるんですが。
ストーリー自体は、シンプル。なんか怖い顔の尼僧の姿をした悪魔が、意味もなく人を攻撃してくるモンスターホラーです。
全体はお馴染みのジャンプスケアの繰り返し。
…ではあるんだけど、なんか画面の切り替えが早いな。ためてためて…襲ってきた!と思ったら、もうその瞬間には切り替わる。
「どんな目にあうか」は見せてくれない感じ。そこは映画のレートを上げないためでしょうか。
まあ、グロシーンはなく残酷すぎず、適度に怖がれるファミリー向けホラーと言えるんじゃないかと思います。
②ちょっと切ないアイリーンの描き方
本シリーズの魅力は、何と言っても「いるだけで怖い」「顔が怖い」シスター・ヴァラクにあると思うのですが。
(演じるボニー・アーロンズはデヴィッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」で「ファミレスの裏に出現する怖いホームレス」を演じていたりします)
このパート2、ヴァラクの出番はそんなに多くないんですよね。出し惜しみで、なかなか出てこない。
モリースがヴァラクに取り憑かれているという設定で、代わりにモリースが暴れるシーンが結構長いこと続きます。
パート1にも出ていたキャラクターで、実はアイリーンがちょっとほの字…という男が、狂気のシャイニング状態で襲ってくる、というこのプロット。
どこかで見たような…と思ったら、マイケル・チャベス監督のシリーズ前作「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」がこのプロットでしたね。
エドが取り憑かれ、ロレインを襲う…という。チャベス監督、このパターンが好きなのかな。
アイリーンはヴァラクに打ち勝ってモリースを救うのだけど、シスターなので、思いは遂げられない。
なので、ハッピーエンドだけどアイリーン的には切ない感じの終わり方。そこは味があったと思います。
③いろいろもう一歩なんとかなりそう…なんだけど。
ホラー映画として弱いのは、結局のところヴァラクがどうしたいのか、何が目的なのかよくわからない…というところでしょうか。
そこはシリーズの前日譚にしている弱みかもしれない。この映画だけで決められることが少ないので、ヴァラクをあんまりいじれなくなってる。
ヴァラクが尼僧の格好してるのも、そういえば何でだっけ?って感じはしますね。
ヴァラクがパワーを手に入れるために聖遺物を探していて、同じ聖遺物をヴァラクを倒すためにアイリーンが探す…というのも、なんだかよく分からない感があって。
世界に散らばった聖遺物をめぐって、アイリーンとヴァラクが闘争する…というのは、楽しげな伝奇ロマンになりそうな雰囲気なんだけど。
もう一段、設定を詰める必要はあるような。
あと、前作が実際にルーマニアの古城で撮影をやっていて、意外に重厚な雰囲気が出ていた持ち味は、今回はあまりなかったですね。良くも悪くも、普通…な印象。
エンドクレジットの途中にはウォーレン夫妻が出てくるのだけど、アイリーンのタイッサ・ファーミガ、いよいよお姉さんとそっくりになってきましたね。
(アイリーンを演じるタイッサ・ファーミガはロレイン・ウォーレン役のベラ・ファーミガの実妹)
これだけ似てると、キャラクター上でもつながりがあって欲しくなってくるけど。今のところ、特に言及はされていないですよね。(もしかしてされてたっけ? されてないですよね。)
アイリーンとロレインは実は親戚だった!とか、年代設定的にはいっそ本人でも通じそうだけど。
ロレインが実在の人物なので、あまり適当なことはできないだろうけど。どうせなら、何か工夫して欲しい気はします。今後のシリーズに期待…でしょうか。