Resident Evil: Welcome to Raccoon City(2021 アメリカ)

監督/脚本:ヨハネス・ロバーツ

製作:マルティン・モスコヴィッツ、ジェームズ・ハリス、ハートリー・ゴーレンスタイン、ロバート・クルツァー

製作総指揮:ヴィクター・ハディダ、アレックス・チャン

撮影:マキシム・アレクサンドル

編集:デヴ・シン

出演:カヤ・スコデラリオ、ロビー・アメル、ハナ・ジョン=カーメン、アヴァン・ジョーギア、トム・ホッパー、リリー・ガオ、ニール・マクドノー、ドナル・ローグ

①基本に還るリブート

製薬会社・アンブレラが撤退に向かい、衰退しつつあるラクーン・シティ。この街の孤児院で育ったクレア(カヤ・スコデラリオ)はアンブレラ社による陰謀を知り、ラクーンの警察で働く兄クリス(ロビー・アメル)に知らせるため故郷に帰ります。ラクーン市警では、スペンサー邸の調査に向かって消息を絶ったブラヴォーチームを探すため、ジル(ハナ・ジョン=カーメン)ウェスカー(トム・ホッパー)、クリスらのチームが出動。クレアは警察署でレオン(アヴァン・ジョーギア)と合流しますが、ゾンビと化した群衆に取り囲まれてしまいます…。

 

「バイオハザード」は、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演のシリーズが6作目!まで作られて完結。今回はリブート1作目ということになります。

なので、これまでのシリーズの知識は必要なし。安心してここから観られる作品です。

 

今回は、原作であるゲーム版「バイオハザード」、その原点であるプレイステーション版に立ち返り、初期のゲーム版の雰囲気を再現することを追求しているのが特色です。

ストーリーやキャラ設定はゲーム版そのままではないものの、舞台は「1」の洋館と「2」の警察署に設定され、初期ゲームの色彩が濃厚なものになっています。

ミラ・ジョヴォヴィッチ版はその1作目からゲームとは別物の路線だったので、これはむしろ新鮮ですね。

 

プレステ版の1、2は僕も遊んだので、洋館探索、振り向くゾンビ、犬など、なかなか懐かしいムードになってました。

僕はその後のゲームは一切やってなくて、キャラやストーリーもろくに知らない。以前の映画シリーズにもほとんど思い入れがない…という状態だったので、本作は素直に楽しむことができました。

 

本作はそういう人…それこそプレステの昔にゲームやってたけど、それ以来ご無沙汰…という人に向いてるかもしれない。

もちろん、初期ゲームを知らなくてもまったく問題ないので、ゲームも以前の映画も何も知らない、という若い人も観やすいんじゃないでしょうか。

 

②序盤は退屈…

とは言え、本作は何だかエンジンがかかるまでが長い

序盤が退屈なんですよね…。クレアがヒッチハイクしてやって来て、トラックで何やかんやあって、家に行ってクリスと会ってなんやかんやあって、一方でレオンやジルが紹介されて…という導入部。

割と丁寧に登場人物を紹介し、導入部を描いていくんだけど、やたらと退屈でした。暗い雨の夜に展開するのもあって、眠くなります。

 

ラクーン・シティで何かが起こっている…のですが、その何かがいまいちよく分からないので、緊張感に繋がらない。

「バイオハザード」なので、ウィルスが漏出した、感染した住人がゾンビになって襲って来たというシンプルな設定でいいと思うんだけど。

視点が限定されていて、街全体で起こっていることが描写されないので、今どういう状況にあるのか、今は何を怖がればいいのか、もう一つ分かりづらい。

街の人がゾンビと化した…と言っても、暗い中で金網にしがみついた十数人が出てくるだけなので。カタストロフを感じるには、かなり想像力が必要です。

 

クリスたちのチームが洋館に入って、つまりは初代ゲーム版のストーリーが始まった辺りで、ようやくホラー状況が登場人物たちを飲み込んでいくドライブ感が生じて来て、面白くなってきます。

どうせならスタートもゲームと同じにして、洋館に入ったところから映画を初めても良かったんじゃないのかな。

ゲームの味である、いきなり異常な状況に放り込まれて退路を断たれる感覚があれば、より没入度が増したのではないかと思います。

③シンプルでざっくりの良し悪し

洋館と警察署それぞれのチームがゾンビと遭遇して以降は非常にテンポ良く、並行する状況をスピーディに描いていきます。

ホラーの見せ方にも、なかなか工夫があって面白い。

室内バトルのもたらす閉所恐怖的な感覚、闇の閉塞感は良かったですね。

完全な闇の中、マズルフラッシュやライターの僅かな炎でゾンビの接近を見せるシーン。密室感が良い感じでした。

 

洋館から秘密の通路を通って研究所へ、警察署からゾンビだらけの街を経て孤児院へ、そこから研究所へ行って合流…という流れも、遠いプレステ版の記憶を思い起こすようで、ゲームっぽくて良かったんじゃないかと思います。

孤児院で助けてくれるクレアの友達も悪くなかった。説明不足なので何だかよく分からないものの…なんですが。

 

全体通して設定は荒っぽくて、ゲームの記憶もあるので何となくは分かるものの、よく考えたら何だかよく分からない…というところは多かったような気がします。

アンブレラの陰謀が要するに何だったのか、孤児院はどう関係していたのか、どうして関係者は誰もいなくてウィリアム・バーキン一家だけ残っていたのか、朝になったら爆発するのはどういう理屈か…。

 

シンプルなのはいいけれど、アンブレラに誰もいないのをはじめ、街にも人がいる気配がほぼない

その割には主人公側の人数は飽和気味で、それもゲームキャラを満遍なく出そうとするとそうなっちゃう…のだろうけど。

結果、主要キャラ以外はいない世界のように見えてしまうのもゲームっぽいところで、世界の広さは感じないですね。

 

④良くも悪くも、「普通」な感じ

映画は1998年に設定されています。特にその時代でなければならない理由も見当たりませんでしたが、これも原作ゲームの時期に合わせたと思えばいいのでしょうか。

音楽は当時のものが上手く使われていて、予告編でもかかっていた4 Non Blondes“What’s up”は印象的でしたね。

時代がぴったり…というわけでもないのだけど、「プレステが懐かしい」という気分とは上手いことシンクロする選曲だなあ…と感じました。

 

そういう微妙なノスタルジーを除けば、良くも悪くも「普通の」ホラー映画だった印象です。

ラストには続編への引きらしきものがあるけど…どうかな。そこは興収次第ですかね。

個人的には、ゲームをやったのが1と2だけというのもあるので、あまり次に期待するものはないかな。

 

ちょっと思ったのは、どうせ続編を睨むなら、いっそ1だけの忠実な映画化に徹しても良かったんじゃないかな…ということ。

どうせ世界がそれほど広がらないなら、洋館だけのシンプルなシチュエーションホラーにして、前半のゾンビの恐怖からじっくりと描いた方が、満足度の高い作品になった気がします。

 

バイオハザードの1の面白さって、序盤ゾンビものだと思ってプレイしてるんですよね。ロメロのゾンビの世界を再現したゲームだと思ってる。

それが後半になると、より強力なクリーチャーが出てきて、ゾンビものを超えたモンスターホラーになっていく。

その意外性が、結構な衝撃だったと思うんですよ。映画でそれを再現できるのは、リブート1作目だけの特権だったはずなので。

ちょっともったいなかったなあ…と思ったのでした。

 

 

 

クレアのカヤ・スコデラリオの前作、ワニ映画。

 

ジルのハナ・ジョン=カーメンがヴィランのゴーストを演じていました。

 

レオンのアヴァン・ジョーギアはこちらで愛すべきバカ男のバークレー。キャラ一緒かも。