The Return of the Living Dead(1985 アメリカ)

監督/脚本:ダン・オバノン

製作:トム・フォックス

製作総指揮:ジョン・デイリー 、デレク・ギブソン

撮影:ジュールス・ブレンナー

音楽:マット・クリフォード

出演:クルー・ギャラガー、ジェームズ・カレン、ドン・カルファ、トム・マシューズ、ビバリー・ランドルフ

 

① 80年代の雰囲気濃厚な…

なぜかWOWOWで、80年代ホラーを集中してやってました。時代性が濃厚な「バタリアン」。懐かしいな〜。

 

「バタリアン」は日本の配給会社が勝手につけた独自タイトルだけど、印象の強さはすごいですね。意味はまったくわからんけど、なんか合ってる気がする。

派生した「オバタリアン」も今や死語ですが。

 

今観ると、当時の悪ノリの片鱗が字幕に残ってる。

登場人物が「バタリアンが…」とか言ってるし、日本でゾンビに名前つけて勝手にキャラ化した「タールマン」とか「オバンバ」とかの単語も残ってます。

 

良くも悪くも、80年代の軽薄バラエティ文化に取り込まれた作品で。その部分が、懐かしアイテム化しちゃってる感はありますね。

映画自体は今観ても十分面白い傑作だと思うんだけど。

 

②オリジナル設定で勝負!

「ダーク・スター」「エイリアン」の脚本で知られるダン・オバノンの才気が走ってる本作。

原題“The Return of the Living Dead”で、ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)の続編、もしくはパロディになっています。

劇中では、映画「ナイト・オブ〜」は事実を脚色した映画化だった!という設定で、いかにも都市伝説的な設定がまず楽しい。

 

「ナイト・オブ〜」を強くリスペクトしている作品でオマージュも多いんだけど、ゾンビの設定などはオリジナルのものになっています。

「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」のロメロゾンビ設定を、ほとんど使っていない。あえて、全部変えてある。

だから、ゾンビ映画としての面白さはロメロの映画とはまったく違う独自のものになっています。

 

オマージュ作品の場合、ゾンビ設定をそのまま使ってしまうものが多いんだけど。

本作はあえて、すべて独自設定で勝負してるんですね。

そういう作品って、意外と少ない。本作を、多数の亜流作品とは違う、オリジナリティあふれるものにしています。

 

ロメロゾンビの、「頭を破壊すると死ぬ」「動きは遅い」「知性はない」という基本特徴が、ことごとくひっくり返してあります。

頭部を破壊しても、体を細切れにしても死なない

全速力で走って襲ってくる。

言葉を喋り、知性がある

 

それらの変更が全部、本作ならではのホラーシーンに生かされてるんですね。

「映画みたいに」頭部を破壊しても、死んでくれない。

体バラバラでも生きてるゾンビ、縦割り標本でも生きてる犬とか、上半身だけのオバンバゾンビとか。

「映画みたいに」ゾンビをなぎ倒しながら走り抜ける…みたいなのが通用しない。すぐ捕まってしまう。

逃げて閉じこもっても道具を使って開けに来るし、無線で救急車を呼んで犠牲者をどんどんおびき寄せてしまう。

 

「ナイト・オブ〜」の映画は存在するけど、事実は違う…という世界観が秀逸で、それが最後まで展開に生かされていくんですね。

登場人物たちは映画と同じように行動するんだけど、それがことごとく裏目に出て、事態はどんどん悪くなってしまう。

その繰り返しがギャグにもなるし、同時にホラーとしての絶望感もただならぬものになっていくという。

さすがダン・オバノン。考え抜かれた脚本なのです。

 

③毒の効いた演出も出色

脚本家として知られるダン・オバノンの、本作は数少ない監督作です。

演出も的確なんですよね。冒頭の「長々とセリフで展開させてからの、転調」など、緩急のリズムが気持ちいい。

 

やはり脚本家による演出だけに、脚本のヒネリの効いて面白いところを、演出で上手く強調している感があります。

生きてるのに死んでる特徴しかない、とかね。自ら焼却炉に入っていく男とか。

ブラックなギャグであると同時に、ちょっとほろっとさせるペーソスもあったりします。

 

前半、ひとしきりゾンビとのドタバタを展開させてから、細切れにしても死なない死体を焼却炉で焼いて、一旦ホッとする。

でも、焼いた煙が雨になって落ちてきて墓場に染み込み、ますますシャレにならない事態を引き起こしてしまう…。

この、観客も一旦ホッとさせておいての、エスカレートが上手い。

 

これ、ギャグにもなってるし、「ナイト・オブ〜」の究極の解決法だった「焼く」というのさえ否定されてしまう、絶望的なスリルにもなっている。

そして、その同じ展開がラストでもう一回繰り返されるんですよね。今度は核ミサイルによる大規模な焼却と、その後に来るだろう大規模な災厄を想像させて。

繰り返しの天ドンギャグだし、「博士の異常な愛情」的な、毒と悲壮感と黒い笑いに満ちたキレ味鋭いエンディングでもある。

でも映像はあくまでもバカっぽく。よく出来た映画だな〜と思います。

 

ダン・オバノン、脚本では他にも「ブルーサンダー」(1983)とか「スペースバンパイア」(1985)とか「トータル・リコール」(1990)とか、印象的な作品が多いんだけど、監督作は本作と、あと1本だけでした。

貴重な監督作が日本で「バタリアン」になったのが、良かったのか悪かったのか。

逆に、当時の記憶が薄れた今こそ、オリジナリティある1本のホラー映画として受け入れやすい作品かもしれないですね。

オバタリアンもみんな忘れたことだし!