「SF巨大生物の島」「恐竜100万年」の記事に続く、レイ・ハリーハウゼンの記事です。
今回は元祖的怪獣映画2本。
どちらも非常に基本的な、怪獣映画のオリジナルパターンというべきプロットになっています。結果、とてもよく似た2本になってるんですよね。
①原子怪獣現わる
The Beast from 20,000 Fathoms(1953 アメリカ)
監督:ユージーン・ルーリー
脚本:ルー・モーハイム、フレッド・フリーバーガー、ユージーン・ルーリー、ロバート・スミス
製作:ジャック・ディーツ、ハル・チェスター
原作:レイ・ブラッドベリ
特殊撮影:レイ・ハリーハウゼン
撮影:ジャック・ラッセル
編集:バーナード・バートン
音楽 デビッド・バトルフ
出演:ポール・クリスチャン、ポーラ・レイモンド、セシル・ケラウェイ
北極で核実験が行われ、氷の中で眠っていた怪獣が目覚めます。物理学者のトムはそれを目にしますが、しかし誰もそれを信じようとしません。
古生物学者のエルソン教授もはじめは信じませんが、助手のリーがトムに協力し、襲われた漁船の乗組員から証言を得て、怪獣の正体が太古の恐竜リドサウルスであることを解き明かします。
やがて、怪獣はニューヨークに上陸します…。
「ゴジラ」の1年前に公開され、そのヒントとなったと言われる元祖怪獣映画です。
怪獣が核実験によって極地の氷の中から目覚める、目撃者が信用してもらえず狂人扱いされる、漁船が襲われる、そしてついに都市に上陸して大暴れする…と、「ゴジラ」をはじめとして後に様々な映画で踏襲される「定番の展開」が、ここで既に確立されています。
「ゴジラ」のヒントというのはよく言われるのですが、印象はそんなにかぶる感じではないですね。
空襲の恐怖が投影されたゴジラの重厚な存在感はここにはあまりなくて、むしろ素早く動き回るスピーディな爬虫類という印象です。
対抗するのもすぐに軍隊が展開するのでね。大八車引いて逃げまどうだけの日本とはやっぱり違うんですよね。
また、リドサウルスは核実験で目覚めた怪獣だけど、ゴジラと違って放射能を帯びてはいないんですね。タイトルの「原始怪獣」とは違ってる。
近づいた兵士たちがバタバタと倒れていく…というシーンは放射能っぽいんですが、リドサウルスの血が未知の病原体を含んでいるという設定になっています。
だから、うかつに攻撃できない…というのは、むしろずっと後の「シン・ゴジラ」との共通性も感じますね。
原爆実験で目覚めた怪獣ですが、倒すのも「アイソトープ」だったりします。
原子力を決して悪く言わない…というのも、この時期のアメリカ映画の特徴ですね。もしかして、今もかな。
ハリーハウゼンのモデルアニメーションは素晴らしいです。
モノクロの映像の美しさも際立っていて、印象的なシーンが多いです。
灯台の光に惹かれて、夜の闇の中に上陸する怪獣。
マンハッタンのビル街を、スムーズに動き回る怪獣。
夜の遊園地で追い詰められ、炎に包まれる怪獣…。
この時期のアクション映画の常道なんだと思うけど、物理学者には思えないヒーロー然とした主人公、生物学者らしからぬ色っぽいヒロインが登場するのも楽しいですね。
②水爆と深海の怪物
It Came from Beneath the Sea(1955 アメリカ)
監督:ロバート・ゴードン
脚本:ジョージ・ワーシング・イエーツ、ハル・スミス
原案:ジョージ・ワーシング・イエーツ
製作:チャールズ・H・シニア
特殊効果:レイ・ハリーハウゼン
撮影:ヘンリー・フリューリッヒ
編集:ジェローム・トムス
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:ケネス・トビー、フェイス・ドマーグ、イアン・キース、ドナルド・カーティス
アメリカ海軍の潜水艦が何者かに襲撃され、マシューズ艦長はスクリューに絡みついていた組織を海洋生物学者のカーターのもとに持ち込みます。カーター教授と美貌のジョイス博士は、それは巨大なタコだと解明します。南太平洋で行われた核実験によって、深海に棲息していた巨大なタコが餌場を追われて浮上したのです。3人は軍に対策を訴えますが、人々は巨大タコの存在など信じません。やがて漁船が襲われて沈没し、巨大タコはいよいよサンフランシスコに上陸します…。
「原子怪獣あらわる」とプロット一緒ですよね。
ヒーローと美貌の女性科学者、という配役も一緒だし、人々が信じず狂人扱いする展開も一緒。漁船を間に挟んで、上陸に至るのも一緒。
まあ、それが王道というものなのかもしれないですが。
怪獣はタコなので、海から巨大な触手がドーン!と出てくるわけですが、「シン・ゴジラ」でしっぽが出現するファースト・シーンを連想してしまいました。
「シン・ゴジラ」はむしろこの辺の古典を強く参照しているのかも…と思わされたり。
ゴールデン・ゲート・ブリッジを襲うタコ。
やっぱり怪獣映画は名所を襲ってナンボですね。
タコだけど、海だけにとどまらずちゃんと上陸して街を襲うのがいいですね。
「原子怪獣」もヒロインは学者のはずなのにお色気担当だったんですが、本作はそれがさらに進んでます。とても海洋生物学者とは思えない色っぽさ。
最初こそツンデレかなーとか思いますが、すぐに主人公の艦長とくっつきます。教授にも気があるみたいなので、あっちこっちへふらふら。
えらく自由です。タコを調べに行った海岸で、教授を待つ間に水着に着替えて艦長と遊んだりしてます。
この、現代の映画よりも進んでるかのような自由な感じも、本作の見どころだったりします。最後は「きみは新種の女性だな」なんていうジョークで落ちるんですよね。このオチを言いたかったんだと思いますが。
この辺も、「タコまだかな…」とばかり思わずに積極的に楽しむと、なかなか楽しいんじゃないかと思います!