この映画のレビューはこちら。

A4サイズ、オールカラー、24ページ。720円。

中身はオーソドックスな作りのパンフレットなんですが、特徴的なのはそのビジュアルイメージ。

なんとなーくハーレクイン風味というか、女性向け恋愛サスペンス映画みたいなデザインの表紙。

そして、裏の見返しには漫画家の池田理代子先生による少女漫画風イラストがあります。

美男美女の女性向きロマンス映画みたいなビジュアルイメージ。

 

いや、まあ、ペネロペ・クルスハビエル・バルデムの夫婦スター共演作だし。

夫婦の秘密が徐々に明らかになっていく誘拐サスペンス…という意味では、決して間違ってはないんですが。

アスガー・ファルハディ監督の作品ですしね。基本的に気の悪ーい話だし。

なんか微妙にズレてるような気も。

 

翻訳家の小竹由美子氏によるコラム「誰もがお互いの過去を知っている小さな村で、事件は起こる」

当人同士しか知らないはずの秘密を、皆が知っている田舎のコミュニティ。そんなコミュニティでこそ起こる事件と、そんなコミュニティならではの展開、顛末。

この辺り、日本映画の「凪待ち」とまったく共通しているところですね。スペインの片田舎と、東北の漁港の街が図らずも同じ側面を見せています。

 

アスガー・ファルハディ監督のインタビュー。

15年前にスペインを旅して、行く不明の子供を探す写真のポスターを見かけたことから、この映画は着想された。

メインのキャラクターはペネロペ・クルスとハビエル・バルデムを念頭に置いた当て書きだった。

キャラクターは観客に評価されるべきなので、監督としてはキャラクターに批判的な視点は出していない。

撮影を通していつも心がけているのは、観客がキャラクターに共感することだ。

…といったことを語っています。

 

映画評論家、松崎健夫氏のコラム「視線によってファルハディが描くふたつの異なる感情」。

なんでもないシーンの中にキャラクターの背景を示す細かな視線移動を潜ませることで、言葉によらず背景を伝えている、ファルハディ監督の視覚効果を紹介しています。

他にも、冒頭の時計塔で映画のテーマの一つである「時間」を示しいること。激しい雨を使って先の見えない不安を表していること…などの例を紹介していますが、本当かな。やや後付けめいてる気もしますが。

 

ペネロペ・クルスハビエル・バルデムのインタビュー。

ペネロペ「(ラウラに共感したか問われて)そういうことは一度も考えなかったわ。彼女という人間やその気性や行動について賛同する必要はなかった」

ハビエル「(パコに共感したか問われて)彼のことがすごく好きだよ。役者は自分のキャラクターを評価するのではなく、守らないといけない」

夫婦でも、微妙な違いがあるのが面白いですね。

 

映画ライター・今祥枝氏のコラム「巨匠が新境地で描く”最も近い他人”の真実 そして、己れのルーツを舞台に躍動するスター夫婦の共演」

ラウラとパコの間にある、本物の夫婦よりも強いように思える絆に注目し、そこに本物の夫婦であるスター夫婦の姿を重ねる…。

そういう見方をすれば確かに、ハーレクイン風の女性向けラブロマンスとして本作を受け取ることもできなくもない…気もしてきます。

 

というわけで、「ベルサイユのばら」池田理代子先生によるイメージイラストです。

なんか、こういう少女漫画的世界観で捉え直すと、また別の映画の楽しみ方ができそうな気がします。