映画のレビューはこちら。

B5判、28ページ、800円。20ページカラー、8ページモノクロ。

原作タイトルである「HHhH」をあしらった、表紙のデザインがいいですね。英語タイトル「THE MAN WITH The IRON HEART」をうまいことデザインにいかしてます。

パンフレット表紙は、割と自由なんですよね。デザイナーの腕の見せどころ。映画の内容を上手く踏まえて、面白いデザインにしていると嬉しくなります。ポスターのメインビジュアルそのまんま、というのは興ざめですね。

 

「監督のことば」として、セドリック・ヒメネス監督のコメントが掲載されています。

「私は、観客にこの物語に夢中で没頭して欲しいと願っています。そうすれば、当時の人々が感じたのと同じ緊迫感や強い信念を感じ取ってもらうことができると思うからです。この物語が起こっている時代をより鮮明に、生き生きと描くため、撮影には35ミリフィルムを使用しました。」

 

長文コラムが3本あります。

1本目は編集者/映画批評家の高崎俊夫氏のコラム、「実験的手法の原作から生まれた、作家的野心を感じさせる秀作」

ハイドリヒ暗殺を扱った過去の映画(「死刑執行人もまた死す」「暁の七人」「ハイドリヒを撃て!ナチの野獣暗殺作戦」)や、原作「HHhH プラハ、1942年」が紹介されています。

特に「HHhH」のメタフィクション的な実験的構成を紹介し、暗殺の瞬間を多層的に捉え返していく映画の手法も、その影響を受けた野心的なものとしています。

 

2本目はドイツ現代史研究家の早稲田大学教授の増田好純氏による「交差するそれぞれの日常ープラハの街角にてー」。

映画のエンディングのシーンが冒頭部で引用されているコラムです。一応、ネタバレ注意。

ハイドリヒの歴史上における役割、暗殺のもたらした影響について、知ることができます。リディツェ村の虐殺が世界に宣伝されたことで、世界の怒りに火を注ぎ、国際世論はこぞってドイツに背を向けた…というのが興味深かったですね。レジスタンスたちの決死の行動は、多くの人々の虐殺という結果を招いてしまったけれど、長い目で見ればナチスの衰亡につながったわけです。

 

東京女子大学名誉教授の芝健介氏による「第二次世界大戦勃発とハイドリヒの謀略〜タンネンベルク作戦」

ハイドリヒの経歴の中で、この映画から割愛された重要な事件、1939年の「対ポーランド侵略」をめぐる謀略について、解説されています。

 

後半はプロダクション・ノート。映画の制作に関して、監督の言葉がところどころに挟まれています。

「この二つの物語(原作における、ハイドリヒ側とレジスタンス側の二つの物語)は、僕にとってとても重要でした。一つは悪に進み、もう一つは善に進むからです。そしてそれが世界を変える。ナチスは独自のイメージで世界を変えようとしました。レジスタンスも世界を変え、秩序を回復したいと思ったのです」

 

「彼(ハイドリヒ)はナチ運動の中に自分の怒りのはけ口を見つけたのです。彼は怪物になる予定ではなかった。もし、兵士のままでいられたら、もし軍隊をクビになっていなかったなら、彼は怪物にはなっていなかったでしょう」

 

「ラインハルト・ハイドリヒは、リナ・フォン・オステンなしには、あんな人間には決してならなかったはずです。おそらく彼女は自分で権力を得たかった。でも当時の女性にとってそれは不可能なことでした。ある意味、自分の夫を通してそう生きるしかなかったのです」

 

「プラハやドイツ各地にもロケハンし、最終的にブダペストに決めました。ブダペストは1940年代からあまり様相が変わっていなかったからです」

 

それにしても、なぜか立て続けに3本、ナチスにかかわる映画を観ています。

この「ナチス第三の男」はもちろんとして。

「未来を乗り換えた男」「サスペリア」は、直接的にナチスや第二次大戦がテーマではないんだけど、物語の中にしっかりと存在している。

もともとの公開時期も違うだろうし、こうして続けて観てるのはたまたまとしか言いようがないんだろうけど、なんだか不思議なシンクロニシティを感じます。