Red Sparrow(2018 アメリカ)
監督:フランシス・ローレンス
脚本:ジャスティン・ヘイス
原作:ジェイソン・マシューズ
製作:ピーター・チャーニン、スティーブン・ザイリアン、ジェンノ・トッピング
ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・アイアンズ
①アクションなしで勝負する!
ジェニファー・ローレンスがスパローと呼ばれるロシアの女スパイを演じる本格的スパイ映画です。
女スパイと言っても、たとえばシャリーズ・セロンの「アトミック・ブロンド」のように、華麗な戦闘能力は持っていません。
ジェニファー演じるドミニカは元バレリーナで、スパイになったばかり。一応訓練は受けていますが、特に銃のエキスパートであるとか、格闘技を身につけているということもありません。
だから、アクションシーン自体ほとんどなし。今時の映画には珍しく、爆破も、カーチェイスも出てきません。
でも、面白かった! 最初から最後まで、先の読めない展開で目が離せません。
ロシアを故郷とするロシア人の少女が主人公だから、アメリカ側について当然…という安易な展開にはならないんですね。本当に最後まで、ドミニカがどっちにつくかわからない。
派手なアクションがなくてもどんどん引きつけられる、パワフルな作品になっていました。
②エロで戦う!女スパイ
戦闘力はない代わりに、ドミニカの武器はセックス。
スパローはロシアの「肉体を武器とする」特殊部隊。女なら男を、男なら女を誘惑する術を教え込まれ、体を張って標的に近づいていくことになります。
だから、スパローの学校では相当に際どい「授業」が行われるんですね。
ドミニカはバレリーナでしたが、ライバルの妨害でその道を絶たれてしまいます。そこに近づいてくるのが、ロシア情報省に属する叔父のワーニャ。病気の母の療養費を稼ぐために、ドミニカは叔父に利用され、スパローの学校に送り込まれることになります。
バレリーナがライバルの妨害によって負傷…
病気の母を助けるために仕方なくスパイの道へ…
セックスの技を教え込まれるスパイ学校…
昔懐かしい、この雰囲気。これ、劇画ですね。
今時のコミックではなくて、昔懐かしい劇画。
エロ要素満載で、主人公がヒドい目にあわされながら、それでも非情に生き抜いていくシビアなヤツ。
ジェニファー・ローレンス主演のスパイ映画で、まさか劇画に出会うとは。
昔の、東映とかのエログロスパイ映画のノリでもあります。
いやほんと、面白かったです。
③グロ要素と拷問もあり
エロと言えばグロ。グロ要素もきちんとあります。
ドミニカをつけ回す殺し屋がサディストで、生きたまま皮を剥いでから殺すんですね。「やけどの皮を剥ぐ道具」が怖い。
この男が、グロ要素を一手に担っています。映画全体では、そんなにあちこちグロいわけではないのでご安心ください。
でも、この殺し屋のシーンはエゲツないです。
拷問もあります! ロシア当局によって、ドミニカが苛烈な拷問を受けるシーンがあります。
拷問もこの一箇所だけで映画全体としては大丈夫…ではありますが、やっぱりこれもエグいです。
ジェニファー・ローレンスがかわいそうに、とことんボコボコにされます。
ジェニファー・ローレンスはこれはほんとの体当たり演技と言えますね。
この人、映画によって印象がまったく違う。
見てて、そんなに器用な何でもできる女優さんという印象ではないんだけど、何事も頑張ってやり切ってる感を受けます。
面白かったのは、スパロー学校の先生を演じるシャーロット・ランプリング。ロシア特務機関のベテラン・セックス教官!
はまり役…と言っていいのか。まさしく劇画的なキャラクターを、楽しそうに演じています。
あと、ドミニカの叔父さんを演じたマティアス・スーナールツという人がプーチン大統領そっくりで、気になって仕方なかったです。
あれ、絶対わざとでしょ。
④全体が伏線、そして純愛も
エロとかグロとか際どいことばかり書いちゃいましたが、全体としては決してそんなにドギツイ作品ではないです。
基本は、知力を尽くした騙し合い。伏線を張り巡らせてラストでスパッとどんでん返しを決める、スッキリする物語になっています。
かわいそうな仕打ちや目を背けたくなる拷問も、伏線の一部と言えるんですね。映画全体が伏線だと言えます。
それに、セックスが武器と言っても、実はドミニカは劇中で一度だけ、ある相手だけとしかやってないんですね。
だからこの映画、実は純愛映画だとも言えるんですよ。
そんなふうに、何かと面白要素が満載の映画です。
女の子が酷い目にあう展開が続くので、万人にすすめる映画ではないですが。
むしろ昔懐かしい、辛口で面白い映画でした。最近の映画はソフトでつまらん、という方に!
ジェニファー・ローレンスの日本公開での前作。僕のレビューはこちら。