サンモール
「なんでこんなにひとあつまってへんねん」
北室長はステージ前でパイプ椅子だけが並び、休憩に座っている人はいても、誰も時間になってもぼっくりんが来ないことを嘆いている人がいない状況に疑問を感じていた。
「どないなってんねん?ぼっくりんがおらへんようになったっていうから、お客をどないかせなあかんと思って、急いできてみたら、なんでやねん?なんで、誰も待ってへんねん?こんなことほかではないやろ?」
サンモールの担当者も首をかしげている
一緒に来た市役所産業振興課の職員が口を開いた。
「ぜったいこんなことありませんよ。一緒に写真撮りたいとかでどこでやっても結構人集まりますもん」
「で、スタッフはどこにおるねん?」
「控え室から今こっちに向かっています。あ、今来ましたわ」
と階段を指差す。
階段からぼっくりんのスタッフ2名と・・・ぼっくりんが降りてくる。
「ぼっくりん、おるやん」
「いますね・・・」
スタッフの後ろから、無邪気にいつもどおりな感じで可愛くついてくるぼっくりん。
スタッフは、室長を見つけ、駆け寄ってくる。
「室長!ぼっくりんがどこにもいないんですよ!」
と後ろにいるぼっくりんが見えていないかのように、室長に訴えてくる。
「いや、そこにおるやん。ぼっくりん」
「え?」
振り返るスタッフ。サンモールの担当者も一緒に振り返り、スタッフと顔を見合わせて、首をかしげる。
「えーーー!後ろにいますよ!ぼっくりん!」
と、職員の言う言葉に、もう一度振り返り、やはり首をかしげる。
「冗談はやめてください。ぼっくりんいませんよ!室長!どうしたらいいんですか?」
「いやいやいや!そこに・・・」
と言いかける職員を止める室長。
「もうええ。なんやわからんけど、こいつらには、見えてへんのやろ。ぼっくりんが・・・」
「ど、どういうことですか?」
「まわりみてみぃ。ぼっくりんがここにおるのに、誰ひとりとして反応してない。だれもぼっくりんに目をやることがない。この場所で、ぼっくりんが見えているのは、俺とお前だけや」
「マジですか?」
「なんかがおこっとるねん。何かわからんけど」
振り返って、担当者とスタッフにむかって
「とにかく、今日のサンモールのイベントは中止や。」
といったとき、子どもが2人駆け寄って、ぼっくりんに抱きつく。
「ぼっくりん、ここにおった!」
「ほんまや!ぼっくりんありがとうな!お父さんとお母さん仲直りしたわ!ぼっくりんのおかげや!」
子どもを凝視する室長。
スタッフもサンモールの担当者も、そのことに関心がないように別の場所を見ながら話をしている。
「ちょっときみら、ぼっくりんが見えてるんか?」
「うん」
「見えるし、覚えているよ」
子どもたちは、室長の方にむかって言った。
「覚えている?」
「うん。忘れてしまう人もいるみたい。」
「どういうことや?」
「偽物がおるねん。ぼっくりんの・・・黒いやつが」
「そいつが光を出したら、ぼっくりんの姿見えへんようになってしまうみたいやねん」
「黒いの・・・君ら、それ見たんか?」
「うん。僕ら2人も一緒に見たけどなんでか、僕らはだいじょうぶやってん」
「一緒にいた他の友達は、ぼっくりんのことに興味ないみたいになって、ぼっくりんをさがす遊びをしてたんやけど、家に帰ってしもた」
「君らだけ、なんでや?」
「わからへんけど、ぼっくりんがすぐそばにおったから、守ってくれたんかもしれへん」
室長は、ゆっくりとぼっくりんの方をみる。
ぼっくりんは、大きくうなづいていた。
「なんかわからへんけど、黒いやつの光を浴びたら、ぼっくりんのことが見えへんようになるんやな」
「うん。多分そうだと思うよ」
「ぼくら、ありがとう。」
室長は、振り返り、職員に向かって、小声で言う。
「ちょっと本庁に連絡して、市内でなんか変なこと起こってないかどうか確認してくれ。特に黒いのを見かけたとか」
「分かりました!でも、室長・・・黒いのってなんなんですか?」
「メカぼっくりんや」