豊玉之男《とよたまのお》は、さらに持論を展開した。

 「秋津洲《あきつしま》は、そんな相手とまともに戦うことは出来ません。まずは、西の海の防備を強めることでありましょう。すでに、阿津耳之命《あつみみのみこと》のお陰で、「ひなもり防衛団」は、かなりの効果を上げております。しかも、黄海以南の海では、古くからの大陸倭人《たいりくわじん》が、我々に味方してくれております。わわれわれは、大陸の雄国が海に出ないように仕向ければよいのです。華夏《かか》の雄国同士《ゆうこくどうし》が内陸での戦いに専念してもらえればそれでよいではありませんか。」

 阿津耳《あつみみ》も負けてはいなかった。

 「と申しますと、鬼谷《きこく》一族と同じ手口でありますか。」

 豊玉之男《とよたまお》は、まさか鬼谷《きこく》一族のことを、阿津耳の口から聞くとは思わなかった。改めて、阿津耳《あつみみ》の情報網の広さを思い知ったのであったが、豊玉之男《とよたまのお》は、この時とばかりに攻勢に出た。

 「鬼谷《きこく》一族のことをご存知ですか。確かに、仰る通りでありましょう。彼らも、また古き天地陰陽《てんちいんよう》の神を祀るのに苦労しているようであります。どの国が本来の華夏《かか》の魂を掴むことが出来るか、あちこちで陰謀を巡らしているのです。」

 阿津耳《あつみみ》は、いささか勇み足だと思ったが、ここで引き下がることは出来なかった。むしろ、豊玉之男が独走しないように、わざと、物知り顔に牽制したのであった。

 「奴らは、縦横家《じゅうおうか》と呼ばれて、あちらと結びつけたり、こちらを敵にしたりと、諸国王に合従(がっしょう)と連衡《れんこう》を持ち掛けては、雄国の力を消耗させていると聞いておりますぞ。」

 だが、華夏《かか》のことなら、豊玉之男《とよたまのお》の方が詳しいに決まっている。                               つづく

 

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