レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

あなたが「進化」という言葉に対して抱いている印象、定義、現象、使われている場面等について述べてください。そのうえで、動画教材の中で紹介した専門用語としての「進化」という言葉の定義を述べ、その違いについて説明してください。

適応進化と遺伝的浮動

 1.一般的な進化の捉え方 

 日常生活において、進化は常に前向きで肯定的な変化を意味する言葉として広く認識されている。例えば、スマートフォンの「最新モデルへの進化」、「ビジネススキルの進化」など、この言葉は絶えざる改善と向上のイメージを喚起する。 

 技術分野では特に、進化は革新的な変化を象徴する言葉として頻繁に使用されている。例えば、人工知能技術の急速な発展や、医療機器の高度化を描写する際に、進化という言葉が用いられる。個人の成長という点でも、「自己進化」といった表現で、継続的な学習と自己改善を表現できる。

 2.専門的定義としての進化 

 生物学における進化は、生物の形質が時間経過に伴うなかで変化することを示す。進化のメカニズムは主に、遺伝的変異、自然選択によって成り立っている。個体間には差、すなわち変異があるが、進化に関係するのは遺伝する変異である。この遺伝的変異の中で、環境に最も適した特徴を持つ個体、すなわちもっている遺伝子によって生存率や残せる子の数が異なることで、有利な形質が集団中に広まったり、不利な形質が消えていったりすることによって進化が生じる。このことを自然選択という。また、生存や繁殖に有利な形質が広まっていく進化を適応進化といい、生物が環境に適した形態や行動を示すのは、自然選択による適応進化の結果であるといえる。環境に適したという点で考えると、ネジレバネも、寄生して生存するために有利な形質であるものが生き残った結果であり、昆虫に見られる擬態も同様である。講義の中で紹介されていたランとガの共進化も、互いを生存に有利な環境と考えれば、説明することができる。 

3.一般的な捉え方と専門的定義の違い 

 一般的な進化の捉え方と専門的定義には、技術の向上や環境に最適に適応したという点で、一見互いに指向性のような共通点が見られる。しかし、実際の進化は特定の目的や方向性を持たない。

  例えば,対立遺伝子Aまたはaのみをもっている生物を考えてみる。この集団の中からある数の個体を無作為に取り出し、それが次世代の親の集団になるとする。この場合、集団が非常に大きければ、平均的には次世代のAをもつ個体とaをもつ個体の数は同じになると期待される。ところが実際に取り出される個体は、たまたま4対6になったり7対3になったりすることがある。このように自然選択がはたらかない場合でも、単なる確率的な過程によって、集団の遺伝子の構成(遺伝子頻度)が世代を経て変わることがある。

  このような偶然による遺伝子頻度の変化を、遺伝的浮動というが、このようにもっている遺伝子によって生き残りやすさに違いがない場合でも、遺伝的浮動によって遺伝子頻度は変化し得る。これは,適応進化によらない進化のしくみである。  一般的に用いる用語である進化や、進化が生物の形質の変化のみで捉えると、そこに何らかの方向性や必然性を感じることが一般的であるが、進化を遺伝的変化の累積過程と考えると、偶然性に大きく依存していることが、進化の大きな要因である。