設問2 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

『アネモメトリ』特集記事で扱った事例のなかから、イベントや行事のデザインとして優れていると思われるものを2つ選び、それぞれの内容を対比的に考察してください。

#79農からさぐる、地域の文化
#112食と農の循環をつくりなおす
  この2つの記事は、農業と地域の関わり合いについてのものであり、地産地消というイベントがベースになっている。
 「農からさぐる、地域の文化」は、京都の大原で行われている、大原ふれあい朝市についての記事である。この朝市は20年以上続き、地元で収穫したものを地元で販売する、地産地消のための販売所としてできあがったものである。この朝市が始まったきっかけは少子高齢化で農業が衰退し、各家が持つ農地は荒れはじめたためである。農業を元気にするためには、どうすればいいか、地域の農家が集まり、まずは農作物の販売所を確保するという目的で始まった。
 この朝市がもたらした副産物は、大学卒の若者から大原で農業をしたいと申し入れが出てきたことである。朝市を見て、ここなら農業ができると、移住する若者が現れ、現在では、現在13〜15名の移住者が、大原で農業をしている。彼らは、今や大原の農の中核を担う存在である。現在、農業の担い手不足が全国で深刻な問題となっているが、なぜ大原は成功したのだろうか。作った人顔が見えることで、安全安心な野菜を求める一般の人々にとって、大原の野菜は魅力的なのである。そして、この安心安全な野菜が、地域を越えて多くの消費者を引きつけることになった。
  地産地消をベースにした農業の振興については、記事の内容以外にも様々なメリットがある。例えば、食材は収穫後すぐに消費されるため、新鮮で栄養価が高い状態で提供され、生産者との距離が近いため、食材の生産過程や品質についての情報が得やすく、安全性が高まることが挙げられる。さらに、地元の農業や生産者を支援することで、地域経済の活性化に繋がるり、地産地消は地元の雇用を創出し、地域社会の経済的な安定と発展を促進することが可能となる。また、地産地消を通じて、生産者と消費者の関係が強化され、地域コミュニティの絆が深まる。これにより、地域全体の協力と支援の体制が強化され点などが考えられる
 「食と農の循環をつくりなおす」の記事は、徳島・神山町の株式会社フードハブ・プロジェクトについてのものである。この会社は、2016年4月にはじまった農業の会社である。「地産地食」を軸に、「育てる(農業)」「つくる(料理・加工品)」「食べる(食堂、パン・食料品店)」「つなぐ(食育)」の4つの領域で、農業を次の世代につないでいく循環をつくることを目的にしている。このプロジェクトも大原の朝市の取り組みと同じように地産地消がベースになっており、農業を担う次の世代の育成が目的であるが、大原の実践が、地産地消を目的とした農業の確立であるのに対して、フードハブプロジェクトは、農業を食育までつなげている点が異なっている。フードハブプロジェクトでは、食育を食農教育という名称で呼んでいる。子どもたちに農業を体験させ、作物を育て、収穫し、それを料理して食べるという過程を通して、子どもたちに食と農のつながりを理解してもらうことを目的にしている。また、耕作放棄地を改良して、在来種小麦を育てるプロジェクトでは、高校生が放棄地を改良して畑に変え、そこで収穫した小麦でパンをつくる取り組みも紹介されている。このように学校教育との連携で、農業や食への関心を高めることに、地域性を導入したことで、子どもたち興味関心の高揚が期待できると考える。
 興味関心の高揚以外にも、地元の食材を通じて、子どもたちや消費者に食材の生産過程や季節性、地域の食文化について学ぶ機会を提供できることが考えられ、これにより、食に対する理解と関心が深まり、健康的な食生活の実践が促進される。
 地産地消の野菜を店頭に並べているスーパーなどはよく見かけるようになり、学校給食で、地元でとれた食材を提供するといった試みは、全国的に広がっている。この2つの記事の試みはこれからの農業や食文化について考えるよい事例となっている。