設問1 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に入学しました。このブログは学習記録としてレポート等の成果を載せています。複製、転載はご遠慮ください。

『アネモメトリ』特集記事で扱った事例のなかから、場や空間のデザインに関わるものを2つ選び、それぞれの内容を対比的に考察してください。

 私たちが生きていく際に、最も重要な場、空間は環境である。そこで環境という場をどう整えていくかという点に注目し、環境を整える実践を取り上げ考察することにした。 「ゴミを「自分ごと」化する」という記事では、スポゴミという、ゴミ拾いをエンターテインメント化して、ひろくゴミへの意識を呼びかける取り組みを紹介した記事である。ゴミは人間が快適な生活を営む上で、必ず発生してしまう環境にとっては負の遺産である。スポゴミの実践例として、海岸でのスポゴミが取り上げられていた。海岸に落ちているゴミは、海の生物に害を及ぼす可能性がある。プラスチック製品などは分解されにくく、海の動物が誤って摂取することで命を落とすこともあり、また、ゴミが海に流れ出ることで、海洋汚染が進行し、生態系全体に悪影響を与える。すなわち環境保全のためには、ゴミをなくすことが必要である。では、なぜ環境保全を行う必要があるのだろうか。景観の保全や、私たちの生活をよりよく快適にするということはもちろんであるが、生物多様性を保全するという意義がある。人が生きていける環境は、多くの生物が生きていける環境で成り立っており、生態系の維持につながっている。また、水の浄化、土壌の肥沃化、気候の調整、害虫の抑制など、多くの生態系サービスを提しており、これらのサービスは人間社会にとって不可欠である。この点は「育つ環境をととのえる人も、自然も」の記事のテーマである「生き物が育つ環境をととのえる」と共通するものである。  この実践では、植樹や林業を通して山の環境を整え、生物の多様性を維持するほかに、治水や、二酸化炭素の削減などを通して、環境を保全していくプロジェクトが紹介されている。これは、先に述べた生態系サービスの提供につながるものである。生態系サービスの中でも、特に強調している点は、治山治水という点である。山に降った雨を山が蓄えるためには、山に木を植える、すなわち植樹が必要であり、植えてそのまま放置するだけでなく、森林を保全するためには、定期的に人の手が入らないと維持できない。ここで生じる課題は、林業を担う人材をどのように確保するかという点である。人材の確保には、自然に関わりたい、山に関わりたいという意識を高めると同時に、子どもや若い世代にとって、森や山にたずさわる魅力的な職種を増やしていくことが必要である。この記事の中でも子どもたちに、まず体験させることの重要性が示されている。まず、自然を観察し、ふれていくことは、その子自身のケアにもなる。うまくいかないことも、恐ろしさも身をもって知るなかで、子どもたちは自らをたくましく育てていける。そうして成長した子どもたちが、環境の改善にたずさわっていけるよう、喜びを持って森や山の仕事に就けるような選択肢を増やすことにつながる、と述べられている。先の記事のスポゴミでも、環境問題に関する意識を高めるための活動が必要であり、学校教育と連携した取り組みが紹介されており、若い世代への取り組みの必要性という点で共通している。  この2つの記事の取り組みは、ローカルな活動とグローバルな視点という点でも共通している。スポゴミの活動は、地域の活動(ローカル)が中心であるが、目指す目標は、スポゴミの活動がなくなるというグローバルな目標設定がなされている。山の環境を保全する活動でも、地域の里山などの保全から、最終的には、二酸化炭素の削減というグローバルな目標設定がある。これは、環境活動の基本である「地球規模で考え、地域で行動する(Think globally, Act locally.)」に共通するものである。私たちが自らの生活と環境との関わり合いについて認識を深めつつ、足元から取組を進める上で、貴重な事例であると考える。