レポート試験 | 65歳の芸大生

65歳の芸大生

定年退職後、新しいことにチャレンジしたいと考えて、今まで縁がなかった芸術について学ぼうと思い、京都芸術大学通信教育部芸術教養学科に編入学しました。このブログが日々の学習内容の記録として活用しています。

 

テキスト巻末にある図版リストから2つの作品を選び、それら2作品の造形的な特徴をそれぞれ説明・比較分析した上で、その違いが生じた原因や背景について論じてください。なお、2つの作品は必ず異なる章から1つずつ選んでください。レポートの字数は1200字程度です。  造形的な特徴の相違や変遷を分析することによって、古代から初期ルネサンスまでのヨーロッパ美術の特徴が、もっとも明らかになるような作品を選択してください。  レポート試験の冒頭には必ず以下のようにタイトルを付けて、その後に必ず2作品の名称と記載されている章の番号も明示してください。

 

初期ルネッサンス美術とローマ盛期ルネッサンス美術の特徴の違いについて 第14章14-7「マザッチョ(聖三位一体)」第15章15-6「レオナルド・ダ・ヴィンチ(最後の晩餐)」

  初期ルネッサンス美術は15世紀前半にフィレンツェで花開いた。この時期の美術は、中世の宗教的な象徴主義から脱却し、人間中心の視点(人文主義)を取り入れ始めたことや、理想主義から現実主義への移行、そしてブルネレスキによる線形遠近法の発展が特徴である。「聖三位一体」は、初期ルネッサンス美術の特徴を象徴する作品であり、この絵画の最大の特徴は、一点透視法による奥行きのある空間表現である。マザッチョは、画面の中心に消失点を置くことで、見る者に対して深い空間感を与え、聖霊を象徴する鳩が描かれた小さな円窓は、実際の建築における円窓を模しており、絵画と現実世界との一体感を演出していいる。この作品では、光と影の効果を駆使した立体感のある人物描写も見られる。人物の衣服のしわや肌の質感が細かく描かれており、人物が実際に空間の中に存在しているかのような錯覚を生み出しており、初期ルネッサンス美術の特徴である、観察に基づく自然主義的な描写がここに現れている。

  一方、ローマ盛期ルネッサンス美術は15世紀後半から16世紀初頭にかけて、ローマを中心に展開した。この時期の美術は、より洗練された表現技術と、人間中心の主題が特徴であり、初期ルネッサンスにおける発見や技術をさらに発展させ、より洗練された表現や、複雑な構成、深い精神性を追求している。「最後の晩餐」は、この時期の特徴をよく示している作品である。バランスの取れた構図で、キリストを中心に、左右に弟子たちが2グループの3人ずつ分かれて配置おり、この対称的で調和の取れた配置は画面に安定感をもたらし、視覚的な焦点をキリストに集中させる。一点透視法はさらに洗練され、イエスの頭部を中心点として設定することで、深みのある空間を創出し、観る者の視線を自然とイエスに導いている。また光と影を巧みに使うことで、人物の立体感を表現し、感情の豊かさを際立たせている。特にイエスの顔や手、衣服の質感における光と影の扱い方は、作品にリアリズムとドラマチックな効果をもたらしている。さらにスフマート技法は、境界線をぼかすことで、よりリアルな質感を作りだしている。

 初期ルネッサンス美術と盛期ルネッサンス美術は、共に人間中心の視点と自然への深い理解に基づいているが、それぞれの時期によって異なる特徴がある。初期ルネッサンスの「聖三位一体」は、一点透視法と自然主義的な人物描写によって、新たな空間表現を実現した。一方、盛期ルネッサンスの「最後の晩餐」は、空間と人物の関係の洗練、人物の内面表現の深化、そして光と影を用いたリアルな描写によって、ルネッサンス美術の新たな頂点を極めた。

参考文献


 

ルネサンス 歴史と芸術の物語 池上 英洋 (著) 光文社新書 2012

https://irohani.art/study/4896/ 

https://arttayousei.online/early-renaissance/ 

https://dessin.art-map.net/art/early-renaissance.html 

https://arttayousei.online/high-renaissance/ 

https://zeroart.jp/archives/236