この章の要点
15世紀初頭、イタリアでは市民階級がいち早く台頭した共和国フィレンツェが興隆し、人間性の回復と都市国家の理念を古代世界に求める動きが高まります。本章では、古代を範としつつも、自然や現実世界をみずからの目で研究し、遠近法や解剖学を究めて芸術革新を遂げていく初期ルネサンス美術の展開に目を向けましょう。
Movie1・・・競合する個性 -フィレンツェ洗礼堂門扉装飾とコンクール-
Movie2・・・ブルネッレスキの造形原理 -数学的秩序と美-
Movie3・・・マザッチョの革新 -遠近法と投影技法の統合-
Movie4・・・フラ・アンジェリコの宗教画 -瞑想のための絵画-
Movie5・・・マンテーニャの「だまし絵」 -マントヴァの宮廷文化-
15世紀前半のフィレンツェでは富裕市民階級の台頭を背景に、人間中心的で写実主義的な初期ルネサンス美術が花開きました。建築では、ブルネッレスキが古代研究に基づき 数的比例と調和を重視する建築理念を確立しました。彫刻では、ドナテッロが古代をも凌駕するダイナミックな彫像を打ち出し、絵画では、マザッチョが遠近法を適用した三次元的空間や彫塑的人体を表現しました。15世紀後半には、イタリア各地の宮廷にルネサンス美術は波及しました。