記念すべきウェザー・リポート1作目がレコーディングされたのは1971年。
マイルスに多大な影響を与えたものの、グループからはいち早く離脱したジョー・ザヴィヌル。
そのザヴィヌルが待ちわびていただろうウェイン・ショーターのマイルスグループ脱退。
そのタイミングで結成されたグループがウェザー・リポートである。
メンバーチェンジと共に次々と音楽性が変わる彼らだが、初期のサウンドが当時のマイルスグループと似ていることは時代背景を考えるとうなずける。
ミロスラフ・ヴィトゥスの貪欲で先鋭的なベースと扇情的なアルフォンス・ムザーンのドラミングがインタープレイの濃度を濃くしていく。
仕上げにアイアート・モレイラがエキゾチックな要素を味付けする。
マイルスの目指していた「集団即興演奏」のミニマルな完成形ではないだろうか?
「Umbrellas」で聴けるロックな音像とファンクなグルーヴ。
ウッドベースを弾かせたら右に出るものがいないヴィトゥスが、敢えてオーバードライブをかけたエレベを弾いている。
「Seventh Arrow」で発揮するグループ全体の強烈なインプロヴィゼーションは特筆もの。
ザヴィヌル作の「Orange Lady」と「Waterfall」は彼の個性が染み出た幻想的な仕上がり。
唯一の4ビート曲である「Eurydice」では屈折したスウィング感に圧倒される。
実は僕が最も好きなのは冒頭の「Milky Way」だ。
もはやジャズではなく完全にアンビエント音楽と化した音空間。
残響が鳴り続けるようなザヴィヌルの作った空間にショーターが1度だけ音を吹くあの緊張感が堪らない。
たったの1音で鳥肌が立つのはそう経験がないでしょう。
非常に実験的なアルバムであることは間違いないが、ザヴィヌルとショーターの"音のコーディネーター"っぷりを存分に味わえる名作。
1971,2-3 (Sme Records)
Wayne Shoter (ss)
Joe Zawinul (ep)
Miroslav Vitous (ba,eb)
Alphonze Mouzon (ds,vo)
Airto Moreira (per)
1.Milky Way
2.Umbrellas
3.Seventh Arrow
4.Orange Lady
5.Morning Lake
6.Waterfall
7.Tears
8.Eurydice