第17話 黒い栞
楓は黒い栞をじっと見つめながら、幼稚園の頃にやったお絵かきを思い出した。色を塗った紙に黒いクレヨンで塗りつぶして、コインで削ると、模様が浮かび上がる遊びだ。
「……これ、削れるかも。」
楓は栞に爪を立て、少しずつ削り始める。すると、案の定、削れることに気づく。
「葵くん、コイン持ってる?」
「コイン? 10円玉でいいなら、あるよ。」
「ありがとう!」
コインで黒く塗られた部分を削っていくと、やがて文字が浮かび上がった。
リアカナキケイムラサキが咲く夜
全ての謎を合わせよ。
「全ての謎を……?」
楓は首をかしげて考え込む。葵も少し考え、ぽつりとつぶやいた。
「今までの謎のことかも。」
「なるほど、今までの謎……! じゃあ、調べてみよう!」
その瞬間、アトリエの仕掛け時計が大きな音を立てて鳴った。
「わっ、びっくりした……って、もうこんな時間?」
「そうだね。もう遅いし、謎解きはまた今度にしようか。」
「うん、そうだね。せっかくだから、アトリエを少し見てから帰ろう。」
「いいね。」
二人はアトリエの中をゆっくり歩きながら、展示された作品を見たり、ちょっとしたお土産を選んだりして過ごした。
お土産屋さんには小さなアクセサリーコーナーがあり、そこに並んでいた白鳥のネックレスが、ふと楓の目にとまった。
「……かわいい」
思わずそうつぶやいて、そっと手に取る。
「いいんじゃない。」
隣から聞こえた葵の声に、楓はちょっと驚いて振り返った。
「えっ……そうかな」
照れくさくなって、すぐに戻してしまったけれど………。
心の中には、その白鳥のネックレスがほんのり残っていた。
→第十八話につづく